先々の学費を見越すのは、不況に強いと言われる理工系学部も同じだ。

「理工系学部の学生は、大学院で修士号を得てから就職することが多い。総費用平均の590万5753円だけではなく、追加で2年分の学費も準備しておく必要があります」(安田氏)

 将来性があり、安定した収入の得られる職業に就くには、学費の負担は避けられない。だからこそ、“コスパのいい大学選び”には確度の高い情報が欠かせない。リクルート進学総研の小林浩所長は言う。

「政府は来年度から返済の必要がない『給付型奨学金』を導入しますが、大学には様々な奨学金の制度があります。例えば早稲田大の『めざせ!都の西北奨学金』や青山学院大の『地の塩、世の光奨学金』は、合格発表前に交付を約束する『予約型』で、安心して進学できます」

 学費が安い理系大学と言えば豊田工業大。初年度納付金が93万2千円と、私大の文系学部より“お得”だ。これは、大学の収入の半分近くがトヨタ自動車による寄付で賄われているからだ。

 根強い人気の公務員就職対策も、大学によって費用に差が出る。『大学ランキング2017』(朝日新聞出版)によると、国家公務員一般職の合格者数は、早稲田大(318人)に次いで中央大(213人)が2位につける。好成績の理由を教育ジャーナリストの小林哲夫氏はこう分析する。

「中央大は文系学部が多摩キャンパス(東京都八王子市)にあり、生活費が安い。公務員試験講座も学内で安く受講でき、資格取得のために別の学校に通う『ダブルスクール』も必要がない。そのため、地方出身者から人気があります」

 学費以外の出費がコスパに響く場合もある。ここ数年の人気の高まりで新設が相次いだ国際系学部は、海外留学を義務付けることが多い。そのため、入学前に計画を立てないと、思わぬ出費に困ることになる。

「米国に1年間留学すれば、住居費や生活費、往復の飛行機代だけで数十万円かかりますし、就職活動でも、英語が堪能という理由だけで採用されるわけでもありません。むしろ、ベトナムやミャンマーなど経済成長が期待されるアジア圏の言語に対し、企業側のニーズは高い。英語以外のプラスアルファを身につけることを考える必要があります」(安田氏)

 大学選びで気になる指標の一つが就職率だろう。左の表は、学部系統別の実就職率(就職決定者数÷<卒業生数−大学院進学者数>×100)のランキングだ。トップは看護系学部で、他学部に比べて実就職率の高さが際立っている。

 16年2月に公表されたリクルート進学総研の調査でも、看護師の人気は高い。女子高生が就きたい職業と、女子高生の保護者が就いてほしいと思う職業は、共に看護師が1位だ。

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