緑茶4杯で?!(※イメージ)
緑茶4杯で?!(※イメージ)

 最近、うつ病治療で注目される分野がある。「精神栄養学」。食事とうつの関係や、生活習慣病との相関関係にも着目、従来の治療に「食の改善」や「生活習慣病対策」を加え、症状が改善するケースもあるようだ。

 うつと食事、栄養素の関係をみる研究は最近になって増えている。その結果、いくつかのことがわかってきた。具体的にみていこう。

 国立精神・神経医療研究センター病院の功刀(くぬぎ)浩医師(神経研究所疾病研究第三部部長)が、うつ病リスクを下げる食品としてまず挙げるのは、日本人になじみ深い「緑茶」だ。東北地方の70歳以上を対象にした調査では、緑茶を1日4杯以上飲む群は、1杯以下の群に比べて、うつリスクが半分程度だった。また、功刀医師らのアンケート調査でも、健康な人に比べて、うつ病患者は緑茶摂取量が少なかった。

 緑茶がなぜうつのリスクを下げるのか。功刀医師は「うまみ成分“テアニン”や、渋み成分の“カテキン”の薬効によるものではないか」と推測する。

「テアニンはグルタミン酸からできるアミノ酸で、リラックス効果のある成分です。大脳皮質にある神経細胞の約7割が、グルタミン酸を神経伝達物質の材料にしているので、テアニンをとることで神経細胞の伝達が調整されるのではないかと考えられています」(同)

 カテキンには、抗酸化作用で脳の神経細胞を守るほか、うつ病との関連が示唆されている脂質異常や血糖値の上昇を防ぐ作用もあるため、直接的、間接的に抗うつ作用を示すという。

 なお、テアニンは玉露や抹茶など高級品に多く、低温で抽出するとよい。一方、カテキンは安価な緑茶に多く含まれていて、高温で入れるのが抽出のポイントだ。

 次は栄養素の「葉酸」。

「葉酸は、脳内の神経物質、ノルアドレナリンやセロトニンなどの合成に必要な栄養素の一つ。抗うつ薬+葉酸の摂取群と、抗うつ薬+偽薬の摂取群とを比較した海外の研究では、葉酸摂取群のほうで治療効果が高いと報告されています」(同)

 葉酸の抑うつ予防効果については、国立国際医療研究センター疫学・予防研究科の南里明子さんらも研究している。21~67歳の男女約530人の血液中の葉酸の濃度と、抑うつとの関連を調べると、男性の葉酸濃度が高い群は、低い群に比べて、抑うつ症状のある人が少ないことがわかった。さらに、3年後に同じ対象者を調べたところ、ベースライン時の葉酸の血中濃度が高い群で、うつ症状が起こりにくかった。

次のページ