「我々の研究は健康な人を対象に、うつとの関連をみています。うつ病患者さんにどれくらい効果があるのかまではわかりませんが、再発予防につながる可能性はあると期待しています」(南里さん)

 葉酸は緑の野菜やレバーなどに多く含まれている。

 三つ目は、ヨーグルトなどに含まれる善玉菌。前出・功刀医師らが、うつ病患者と健康な人の便の菌の量や種類を測定したところ、うつ病患者は健康な人に比べて善玉菌が少なかった。

「腸には口から入った有害物質を体内に吸収させないバリア機能があります。ところが、善玉菌が少なくなると、バリア機能が弱まり、有害物質が入り込みやすくなる。その結果、小さな炎症があちこちで起こるようになり、その影響が脳に及んで、神経細胞を傷めてしまう。それがうつの発症にも関係すると言われています。善玉菌を増やすことでバリア機能を高め、結果的にうつのリスクを減らすのだと思われます」(功刀医師)

 今回取り上げたのは三つの食品と栄養素だが、前出・南里さんによると、ビタミンB6やビタミンD、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルも、抑うつ症状の低下に関連しているという研究結果が出ているそうだ。

 大事なのは、これらをサプリメントなどで摂取するよりも、日々の食事で体内にとり入れることだという。

「野菜、果物、大豆製品などをバランス良くとっている群では、抑うつ症状のある人が少ないという調査結果も出ています。また、ビタミンDは食事での摂取のほか、日光を浴びることで作られるので、ときには日焼け止めや日傘をやめて、短時間でも日光を浴びてほしいですね」(南里さん)

 功刀医師にうつに効く“理想的な食事”を監修してもらった。その内容は、「緑茶」「納豆」(納豆以外にも、肉、魚、卵などタンパク質のおかずでOK)、果物やシリアル、ハチミツなどを入れた「ヨーグルト」、野菜・きのこ・海藻たっぷりの具だくさん「味噌汁」、ビタミン・ミネラル豊富な「玄米ご飯」(量は少なめ)。こうした食事を朝食で十分にとることは、一日の活動のスイッチを入れ、うつ病治療でも大切な生活のリズムを整えることにもつながる。

 もう一つ、うつと食で忘れてならないのは、「とらないほうがいい」ものだろう。それは「エネルギー」。食べすぎなどによるエネルギー過多は、生活習慣病の原因になるだけでなく、うつ病の発症にも関係するということがわかってきたのだ。

 実際、海外の多数の研究結果から、肥満や糖尿病はうつ病のリスクを1.5倍上げ、うつ病も肥満や糖尿病のリスクを1.5倍にするという相関関係がわかっている。

「うつ病治療の原則が『休息』とされるので、どうしても活動量が減ってしまう。うつ病になると食欲が落ちるという印象がありますが、薬の影響などで食欲は比較的早く戻る一方、活動意欲の回復には時間がかかるので、エネルギーの過剰摂取が起こりやすい。生活習慣病を発症して、病状を長引かせてしまう場合もあります」(功刀医師)

週刊朝日  2016年7月29日号より抜粋