東尾修が田中将大に助言「スライダーに固執しなければいい」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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東尾修が田中将大に助言「スライダーに固執しなければいい」

連載「ときどきビーンボール」

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 今シーズンからヤンキースに入団した田中将大投手。元西武ライオンズのエース・東尾修氏が田中投手の未来を分析する。

*  *  *
 本音と建前は、今も昔もあるけど、建前のほうが勝っている時代。野球界も体調管理とか、技術とか、比較にならない進歩がある。でも、選手がもっと人間くさくてもいいと感じる部分はあるね。このコラムでは、私が感じたこと、そしてときには内角スレスレの球も投げていきたい。顔を狙って投げなければ、危険球にはならないよね。

 日米でシーズンが開幕して1カ月がたった。ヤンキースに移籍した田中将大投手も、結果を出している。ただ、まだ試合全体を自らの手でコントロールしていた日本時代の形ではないな。特に見てほしいのは、スライダーの回転数。メジャーの打者がスライダーに対し、ボールの下を空振りするケースがある。打者の想定よりも曲がってこない何よりの証拠だ。

 昨年3月のワールド•ベースボール・クラシック(WBC)で、私は日本代表の投手総合コーチを務めた。そのときの田中もスライダーに苦しんでいた。あれだけ実績を積んだ投手だから、本番が来るまで、何も言わなかった。1次ラウンド開幕のブラジル戦では2回で降板させた。マウンドに行ったとき、「もっとカーブを投げていこう」と初めて言ったんだ。その後も中継ぎに回ってもらう一方で、ブルペン投球では、体の左サイド、肩、膝、腰を開かず、最後に体の回転で投げることを意識してやってもらった。曲げようと思っても曲がらないから。だけど、最後まで手元で鋭く曲がる形は出なかった。球が滑ることへの指先の不安があったんだろうね。

 そのときと比べれば、制球自体は格段にいい。内外角に投げ分けられている。ただ、スライダーは試合によって、もっといえば1球ごとに違いは顕著だ。滑る大リーグ球だけではない。気候も湿度も球場によってまったく違う。もう少し時間が必要だな。

 スライダーに固執しなければいい。抑える引き出しが多い投手。一つ球種を消しても抑えられる球はたくさんある。まだ捕手も田中のスライダーを決め球に要求しているが、組み立てを変えれば、もっと安定した戦いができる。

 昔の話で恐縮だが、西武現役時代の1986年、広島との日本シリーズ第1戦に私は先発したが、フォークボールを使わなかった。まったく落ちなかったのだ。だけど、第5戦で逆にフォークボールを使うと、相手打者がおもしろいように振った。

 特に大リーグは30球団あって、同じ投手との対戦は少ない。打者はデータ重視だ。前の試合で封印した球が次の試合で有効になることもある。使える球種だけで勝負することは、投球の幅を狭めるものではない。

 松坂大輔もレッドソックス1年目にスライダーに苦しんだ。彼は、あまり手先は器用なほうではないが、すべての球種を操ろうとしていた。試合の中で突如崩れるときは、調子の悪い球種を多投し、修正しようとするあまり、全体のバランスが崩れたこともあった。

 田中が四球が少ないかわりに本塁打を打たれるのは仕方がない。それで正解だ。今後は、中4日の疲労や球の違いで、日本時代にない箇所に張りも出る。硬いマウンドのダメージも計り知れない。ただ、真っ向勝負の中にこそ、質の高い発見がある。レンジャーズのダルビッシュ有とともに世界を牽引する投手になってほしい。

週刊朝日  2014年5月9・16日号


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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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