グローバル化の遅れは、大学の国際的な評価にも直結する。イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」が昨年10月に発表した世界の大学ランキングでは、東大は30位。前年に抜かれた香港大を抜き返しアジア1位の座は取り返したが、それでも07年の17位から、凋落の一途をたどっている。

 こうした事情もあって、「国際標準である秋入学の実現は、浜田総長の夢でした。検討機関を設けたことは聞いていましたが、まさか本当に形になるとは思わなかった。学内での根回しはほとんどありませんでしたから、これからが大変ですが……」(東大教授)

 というのである。

 それでも今回の東大の提案を経団連は歓迎。政府も藤村修官房長官が、「グローバルな人材を育てるという観点から、一つの突破口ができたという受け止めで歓迎している」

 と明言した。

 高等教育の専門誌「カレッジマネジメント」の小林浩編集長も秋入学の本格導入に期待する。「日本企業のグローバル化はすさまじいスピードで進んでおり、日本が国際社会で競争力を発揮するためにも、東大の試みは成功してほしい」

◆留学生に負ける偏差値エリート◆

 近年、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやパナソニックなど多くの大手企業が外国人や外国人留学生の採用を増やしている。楽天にいたっては、社内公用語を英語で統一するようにルール化した。「企業は、市場だけではなく、人材も海外に求めており、こうした流れは今後さらに加速します。将来は市役所やスーパーでも、グローバルな人材が必要とされる時代になるでしょう」(小林氏)

 前出の尾木氏も、こう力説する。「現実をしっかり見ないといけません。就職面接では、外国人留学生のほうがはるかにプレゼンなどの能力が高く、偏差値偏重の教育の中で育ってきた日本の大学生は、多くの企業で『使えない』という評価になっている。東大生にも就職留年がたくさんいます。日本がバカな国になってしまう瀬戸際でしたが、これでやっと、いい意味での競争をする土台ができると期待しています」

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