「11月9日の会談以後、清武さんは、読売幹部から『スポーツ報知の編集局長はどうか』『中央公論新社、系列テレビ局もあるぞ』などと言われたようです。もっとも、誰がどこまで本気だったのかわかりませんが」(読売関係者)

 清武氏は25日の会見で、名誉毀損(きそん)などを視野に提訴に踏み切る方針を明らかにした。「清武の乱」は今後、どう展開するのか。

 吉峯弁護士は本誌の取材にこう答えた。

「12月半ばには提訴の手続きに入るつもりです。解任の不当性や渡邉氏の発言による名誉毀損などを争うことになるのでしょうが、具体的な内容については、いま検討している最中です」

◇ ◇ ◇

 本誌の直撃を受けた清武氏は、茶色のジャケットを脱ぎ、言葉を選びながら話した。

「私は、今でも巨人軍と巨人軍の選手を愛しています。でも、今回の私の解任は不当なので、必ず法廷闘争をします。少なくとも、違法で不当な解任を行った渡邉さんは退いてもらいたい。不当な圧力をかける渡邉さんには、一刻も早く巨人軍から去ることを願っています。社会部記者には社会部記者としての戦いがあります。地道に戦っていきます」

(本誌・藤田知也、村岡正浩)

 ■清武氏vs.巨人軍 互いの主張内容(ともに11月25日に発表。記述は編集部が作成した)

【清武氏】

 ●今回の問題は、適正手続きに従って決まっていた人事を、渡邉氏が鶴の一声で覆そうとしたことに端を発する。このとき桃井氏も「もうやってられない。辞表を出す」と言った。渡邉氏の行動はコンプライアンス違反と判断し、記者会見を行った。

 ●渡邉氏は、江川氏を「監督にはしない」などと述べ、集客の道具にしか見ていない。巨人ファンを愚弄している。

 ●渡邉氏は、原監督を今回の問題に巻き込んだ。監督を権限外の問題に巻き込むことは許されない。

 ●巨人のコーチ人事はGM兼編成本部長の私に権限がある。渡邉氏の行為は、コンプライアンス違反、株式会社の内部統制・企業統治に違反するものだ。

 ●私に対する解任は、コンプライアンス違反を隠蔽するための、報復措置。違法・不当なもので、遠くない時期に訴訟を提起する。

【巨人軍】

 ●会見を聞き、清武君の解任理由はすべて正当で、変更すべきところがないと改めて確信した。

 ●清武君の会見内容には、事実と異なるところ、牽強付会というべき個所が少なからずある。

 ●巨人軍のコーチ数は年々増えている。新たに加えてだれかが職を失うというのは誤りだ。

 ●来季の優勝に向けて最良の体制を追求するのが本来。コーチ人事を発表した後に、新たにコーチを加えたことは過去にあった。

 ●コーチ人選の権限はチームによって異なるが、巨人軍の場合、近年はフロントが最終決定していた。クライマックスシリーズ敗退という事態を受けて、一部修正の検討をするのは当然だ。

 ●巨人軍の規定に、GMに関する条文はまったくない。コーチの人事権がだれにあるか明確に定めた条文もない。

週刊朝日