彼はドン・キホーテで終わるのか。それとも権力者を追い落とした英雄となるのか。11月26日昼、本誌は彼を直撃した。それは、まさにドンへの「決別宣言」だった。

 11月26日付のスポーツ紙は「清武不発」「清武自己満会見」などと、前日に開かれた記者会見の模様を冷ややかに報じていた。26日の朝、清武英利・前巨人軍代表(61)は、東京都国分寺市の東京経済大学で「マスメディアの現場から」と題した特別講義をしていた。

 冷ややかな報道ぶりにいらいらしていたのだろうか。壇上の清武氏は、

「私は読売新聞の社会部記者時代、後輩をこき使って気絶させたこともある。そんなもんですよ」

 と、学生と報道陣を“挑発”するかのような発言をしてみせた。

 講義が終わった同日、本誌は清武氏を直撃した。

◇ ◇ ◇

 11月25日、清武氏の会見が終わって3時間半後、桃井恒和球団社長(64)はコメントを発表した。

「本日の会見を聞き、先日公表した清武君の解任理由はすべて正当であり、変更すべきところはないと改めて確信した」

 と自身満々だった。

 双方の主張の詳細は、24ページの表を参照いただくとして、桃井氏のコメントを見た清武氏は、かなりがっかりした様子だったという。

 読売新聞OBはこう話す。

「清武さんは『僕が会見で話したことが何も伝わっていないなあ』と寂しげな表情でした」

 清武氏の代理人である吉峯啓晴(よしみねひろはる)弁護士もこう言った。

「(桃井氏のコメントは)わざわざ代理人としてコメントする必要性のない内容だとは思いますが、桃井氏は気の毒な立場だとは感じます。清武の会見内容に対して、堂々と反論できないところがあるのでしょう。両者のコメントを読み比べていただければ、どちらが理にかなっているかはわかることです」

 すでに本誌も報じているが、もともと清武氏と桃井氏の2人は、読売新聞時代の先輩後輩の間柄で、球団に来てからは、「お互い渡邉(恒雄)球団会長(85)の言動に戸惑いながらも、傷をなめあってきた仲」(読売関係者)と、信頼しあう関係のはずだった。

 しかし、今回の桃井コメントに対し、清武氏は親しい人に、

「人間がなぜ突然豹変するのか。もう反論の記者会見は開かない」

 と話しているという。

 清武氏の怒りの焦点はどこにあるのか。

 先の読売OBはこう解説する。

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