「清武さんは、桃井さんが出したコメントには重要な部分が抜け落ちていることに憤っているようです。桃井さんが初めに『もうやっていられない。俺、辞表出すよ』と言った点です。それについては一切触れず、反論もしていない。清武さんと桃井さんは、昔からの付き合いで、その2人が裁判で争うことになるなんておかしな話です」

 しかし、その一方で、清武氏は桃井氏個人を恨んではいないと、話しているようだ。

 「清武さんは、桃井さんに恨みつらみはありませんよ。もうここまで来れば、桃井さんはそういう人だと思っているようです。というのも、一部関係者の間では、桃井さんのことを陰で『ミルクのみ人形』と呼んでいたぐらいですから。なんでも言われたことをその通りにやる、という意味です」(同前)

 ◆会長の狙いは菅野獲得?

 大きな会社組織であれば、「あいつは保身ばかり考えている」「彼は正義感が強い」など、人の評価は立場によって様々なのが常だ。一部の立場からは、桃井氏をそう見ていた球団関係者もいたのかもしれない。

 清武氏をよく知る人物はこう語る。

「彼が、記者会見で言いたかったことは一つです。それは、巨人軍を愚弄する渡邉さんに退いてもらうこと。彼が相手にしているのは、桃井さんではなく、渡邉さんですから」

 今回、一躍注目を集めることになった渡邉会長の「鶴の一声」は、新聞編集の現場でもあるのだろうか。

 長年、社会部で仕事をした記者は、こう話した。

「1面トップや社会面のトップ記事が突然、小さな扱いになることはありました。そんなときも清武さんは、何とか紙面に載せようと、折衝していました」

 しかし、今回の騒動では、清武氏は折衝ではなく、ガチンコ勝負を選んだ。

 読売関係者は言う。

「みんな、渡邉会長は怖い。しかも、その恐怖はポストが上に上がれば上がるほど増してくる。ヒラ記者には、この怖さはわからない。ミスをすれば、『お前は地方に飛ばす』と恫喝(どうかつ)めいた口調で言われる」

 さらにこう続けた。

「清武さんも今回の会見で『お前は破滅する。読売と全面戦争になる』と恫喝されたと言っている。彼は、娘さんが読売の記者をしているから、正直、今回のように記者会見することには迷ったと思う。会長に恫喝めいたことを言われた人に話を聞いたことがあるが、酔っ払っているわけでもないしらふの状態なのに、すごい勢いだっていうから」

 清武氏は記者時代のことを振り返りながら、こんな話を周辺にしたことがあるという。

 記者時代、暴力団の組長が乗り込んできたこともあるが、怖気(おじけ)づくことはなかった。だが、組長に脅されるのと渡邉さんに脅されるのとではわけが違う。組長に脅されても会社が守ってくれるが、今は誰も守ってくれない--と。

 本誌先週号は、原辰徳監督(53)の契約期間が2年に延びたことについては、やはり「鶴の一声があった」という見方があることを報じた。

 だが、渡邉会長にも迷いがあったとの見方もある。

 ある球団関係者は言う。

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