
「出産と子育て」に関する記事一覧






ひとりごと絵本
著者は及川賢治と竹内繭子によるユニットで、これまで多くのイラストや絵本を手がけている。彼らの最新作は、及川がTwitterに投稿した言葉に、可愛いけれど、どこかへんてこなイラストが添えられたものだ。絵本とはいえ、240ページもあり、ところどころに小さなメモ用紙のようなページが綴じ込まれるなど、造本に遊び心があってめくるのがとにかく楽しい。 及川のつぶやきは、シンプルだが独特である。「薬の説明書は開封したとたんに顔を出してくる。目立ちたがり」「猫って影までかわいいなぁ」「販売機でジュースを買うと隅っこにばかり出てくる。あんなに広いのに」……なんだろう、このじわじわくる感じは。まるで現代の尾崎放哉か種田山頭火かといった趣があるではないか。子どもと大人の感性を自由に行き来する振れ幅がこの世界観を作り上げている。生活の中にあるちょっとした気づきと考察は、浅いようで案外深い。その意味で本書は、肩肘はらずに読める大人のための哲学絵本と言えそうだ。
特集special feature






子どもたちの一〇〇の言葉
「子どもには100の言葉がある(中略)けれど99は奪われる。学校や文化が頭と体をバラバラにする」 これは、子どもたちの創造性を育む幼児教育法として世界的に評価されている「レッジョ・エミリア保育」の創設者の1人、マラグッツィの詩の一部だ。その詩から表題を取った本書は、写真や絵をふんだんに使い、その幼児教育の実際の現場を詳しく紹介した1冊である。レッジョ・エミリアは北イタリアの小さな町。第二次大戦直後に、町の人々が力を合わせ、幼児教育の場を作ろうとしたことから、その実践が始まり、いまやこの町の幼児教育は世界一の水準に至ったという。 子どもたちの想像力を尊重し、子ども同士の対話を重視し、体を動かし、木の実や貝殻、金属片や針金などを用いて、手を使って表現することで、創造性を育むその手法は、実に楽しく、加えて、もはや一つのアートにもなっている。原書の出版は16年前だが、この日本版の造本は非常に美しく、その内容は今、まさに読まれるべきものであろう。