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“溺愛系コンテンツ”はなぜ女子の心をつかむのか?
“溺愛系コンテンツ”はなぜ女子の心をつかむのか?
“溺愛系コンテンツ”が支持されている背景とは?(*写真はイメージ/Getty Images) 『妻が綺麗過ぎる。 好き以外何で結婚する?』(著者:妻が綺麗過ぎる。/発行:KADOKAWA) 『妻が綺麗過ぎる。 好き以外何で結婚する?』という本が人気だ。著者はTikTokやYouTube、Twitter上で美人の妻とノロけたり視聴者からの人生相談に答える人気のアカウント「妻が綺麗過ぎる。」。SNS上の累計フォロワー数は100万人以上。  本の内容は、元宝塚歌劇団の女優である“綺麗過ぎる”妻の写真と、本業はコンサルティング会社の役員だというアカウント運営者の夫が書いた結婚観――タイトルどおり「お金や見た目、価値観、やさしさや他人の評価といった『相手が好き』以外の理由では結婚するな!」というもの――や、馴れ初めから結婚、そして現在に至るまでの数々のトラブルとそれを乗り越えたふたりの絆を綴ったエッセイとで構成されている。 「妻が綺麗過ぎる。」のファン層はTikTokやYouTubeの視聴者ということからわかるように若い人たち、それもとくに10代女子が多い。そしてこのように、男性が彼女や妻を「溺愛」するコンテンツは、近年、小説やマンガのようなフィクションからSNSまで広く支持されている。たとえば社会人や主婦層の女性に人気のマンガサイト「めちゃコミック」は「溺愛男子」特集を組んでいる。  ここでは主に10代向けの“溺愛系コンテンツ”を紹介し、その中身、そして支持される背景について迫ってみたい。 ■月間ユーザー数50万人以上のケータイ小説サイト「野いちご」の「溺愛」人気  スターツ出版が運営するケータイ小説サイト(と言っても今はほとんどがスマホからのアクセス)「野いちご」は小学校高学年から中学生を中心に今も月間ユーザー数が数十万人おり、書籍化作品でも沖田円『僕は何度でも、きみに初めての恋をする。』が25万部、櫻井千姫『天国までの49日間』が18万部、櫻いいよ『交換ウソ日記』17万部、いぬじゅん『いつか、眠りにつく日』14万部と近年もヒット作が登場している。  この「野いちご」のアプリを開くと、トップページに表示される作品のカテゴリーは「切ない・ピュア」「溺愛・日々」「涙・感動」「学園ホラー」「暴走族・元姫」の5つ。これが人気作品のカテゴリーとなっている。  2000年代のケータイ小説は性的・暴力的にわかりやすい“過激さ”が求められたが、2010年代以降はそういう方向の出来事の過激さは読者に求められていない。  1974年から約6年おきに実施されている日本性教育協会「青少年の性行動全国調査」を見ても、第1回調査以来、中学生~大学生まで性別を問わずデート、キス、性交経験率は総じて上昇傾向にあったが、2011年調査ではついに反転し、最新2017年調査でもおおむね下落傾向にある。  経験率だけでなく性的行動への関心自体が減退しているのだ。そしてそれに合わせるようにして10代向け恋愛小説や少女マンガでは性描写のソフト化・忌避が進んだ。  ただその代わり、「号泣」や「溺愛」などの“感情の高ぶり”が読む前からわかりやすく伝わることがかつて以上に求められるようになった。  こうして近年のケータイ小説ではハッピーエンドの「溺愛」ものが一大ジャンルを築いている。 ■溺愛系SNSアカウントの先駆「楠本Family」 「妻が綺麗過ぎる。」に先行する溺愛系SNSアカウントといえば「楠本Family」の存在が外せない。  楠本Familyは動画配信・共有サービスMixChannel上で「りほだいカップル」として有名になり、こちらは夫側ではなく妻側からの記述だが、ふたりの馴れ初めから結婚までを綴った『ずっと一緒にいられますように。』という本(KADOKAWA、2017年刊)がやはりスマッシュヒットとなり、小説化、マンガ化もされた。  SNS上には生まれては消えていくカレカノ共有アカウントがあるが、その最大の成功例だろう。  同書は、母子家庭で育った里歩が17歳で彼(大悟)と出会い、18歳で妊娠、そして入籍。19歳で出産、20歳で結婚式、さらには311を体験という、時系列だけ見るとジェットコースターストーリーに思えることが、ノロケと「パズドラで13コンボできた!」と言って喜んだりする(今では時代を感じる)ほっこりエピソードによってあたたかい気持ちになる一冊になっている。  昔だったらヤンキーマンガやTVドラマの題材になりそうなエピソードが頻出するが、ドキドキさせるというより、全体を「完全に大悟から愛されている」という安心感が貫いているのが2010年代的だった。  地元で生まれて地元で育って地元で恋愛、結婚、出産という地元志向が強まる時代の空気とマッチした溺愛ものとして、全国的に人気になったのも頷ける。 ■溺愛系Twitterポエム/格言を紡ぐ「0号室」 「0号室」は7歳上の妻とののろけをTwitterやInstagramで書いていたところ書籍化のオファーがかかり、2016年に妻との馴れ初めを物語形式で書いた『勇気は一瞬 後悔は一生』(ワニブックス)でデビューした書き手だ。  ここ数年、TwitterやInstagramでの主に恋愛に関するポエム的なつぶやきを書籍化したり、人気投稿者に小説を書かせたりする流れがある。  0号室もそういう流れからエッセイ『がんばる理由が、君ならいい』(ワニブックス)や私小説『愛、という文字の書き順は教わっても愛し方までは教わってこなかった』(KKベストセラーズ)を書くに至った。  0号室はこのジャンルの先駆である蒼井ブルー同様、女性のことを褒めまくり、気持ちよくさせるつぶやきを投稿して女性の支持を得ている。エッセイ集でも小説でも、恋愛や家族に関する持論を展開するのが特徴だ。  彼の発するメッセージは、 「大事な話は、目を見て伝えること/文字だけじゃ心は伝わらない」 「とにかく今があるのは支えてくれる誰かのおかげなんです」 「いくら願っても届かないなら、いっそ想いとともに消えてしまいたくなる」  といったもので、自己啓発書の大家・中谷彰宏や、叙情的な写真+詩で一時代を築いた銀色夏生を思わせる。  おそらく0号室の読者である女子中高生たちは中谷も銀色夏生も知らないのだろうが、時代は変われどこうした表現に需要はある、ということなのだろう。 ■慌ただしく不安を煽られる時代だからこその“溺愛系”人気  ひとくちに“溺愛系”といってもいろいろなコンテンツ/アカウントがあることを見てきたが、共通するのは、出会ってから付き合うまでのドキドキではなく、付き合ったり結婚しても続くラブラブで幸せな状態を見たいということ。  ドーパミンやアドレナリンが出るような興奮する出来事ではなく、オキシトシンが分泌されるようなほっこりした触れ合いがほしいということだ。  なぜこんなにも“溺愛系”は求められるのだろうか?  理由はさまざまだろうが、ひとつ言えるのは、現代はかつてであれば考えられないくらい無数の情報が溢れている。ただでさえ敏感で不安になりがちな若い女性たちは、日々SNS上に流れてくる情報や感情によって疲れている。だから安心感を味わえ、不安を忘れさせてくれる“溺愛系”に惹かれるのだろう。(文/飯田一史)
dot. 2020/01/24 17:00
アフタースキーを楽しもう!温泉も楽しめるスキー場4選<関東・甲信編>
アフタースキーを楽しもう!温泉も楽しめるスキー場4選<関東・甲信編>
冬の人気レジャーと言えば、やっぱりスキー。スキー好きの方の中には、スキーの後の温泉など、アフタースキーを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。たくさん体を動かした後の温泉は格別!スキー後の疲れだけではなく、日ごろの疲れも一緒に癒してくれます。スキーに行く際は、周辺の温泉情報も調べておきたいですよね。 今回は、温泉と一緒に楽しめる関東・甲信地方のスキー場を4つご紹介します。 お出かけには、tenki.jp 『スキー場・天気積雪情報』も、ぜひあわせてご活用ください♪ ※雪不足などのため、ゲレンデがオープン待ちや一部滑走中止となっている場合があります。お出かけ前には必ず公式サイトなどで施設の状況をご確認ください。 イベント盛り沢山!/草津温泉スキー場(群馬県吾妻郡) 湯畑をシンボルとする温泉街がある、草津温泉。温泉街の近くにある「草津温泉スキー場」には、スキー初心者から上級者まで楽しめる様々な難易度のコースが用意されています。また、宝探しイベントやお菓子のつかみ取り、スノーフラッグなど、子どもも楽しめるイベントがたくさん準備されており、家族連れの方におすすめです♪ スキー場でスキーやイベントを楽しんだ後は、湯畑のまわりを散策しながら、日本三名泉のひとつである草津温泉を堪能してみてはいかがでしょうか。温泉街で名物のお蕎麦や温泉饅頭などのグルメを楽しむのもいいかもしれませんね。 草津温泉スキー場 ■リフト1日券(通常料金):大人/4,000円、ジュニア(4歳以上小学生以下)/3,000円、シニア(60歳以上)/3,600円 ■住所:群馬県吾妻郡草津町大字草津字白根国有林158林班 ■公式サイト:https://www.932-onsen.com/winter/index 群馬県のお出かけスポット天気※画像はイメージです 首都圏最大級規模のスキー場/ハンターマウンテン塩原(栃木県那須塩原市) 首都圏から車で約150分の場所にある「ハンターマウンテン塩原」は、毎年首都圏からのスキー客で賑わっています。首都圏最大級規模と謳われているこちらでは、全12コースで3000メートルのダウンヒルを楽しむことができ、上級者の方も満足のスキー場です。場内には、レギュラーパイプやキッカーなど豊富なアトラクションが設置されています。普通に滑るだけじゃ物足りない!という方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。 ハンターマウンテン塩原の後に旅館に泊まるなら、「スキー&スノボパック」がおすすめです。提携している宿泊施設では塩原温泉を堪能できるなど、リフト券とのセットプランなどが用意されているので、とてもお得です♪(詳細は、各宿泊施設のページで確認してください) ハンターマウンテン塩原 ■リフト1日券(通常料金):大人/4,900円、シニア(55歳 以上)/4,400円、子供(小学生)/3,900円 ■住所:栃木県那須塩原市湯本塩原字前黒 ■公式サイト:https://www.hunter.co.jp/winter/ 栃木県のお出かけスポット天気※画像はイメージです 富士山を望む抜群のロケーション!/ふじてんスノーリゾート(山梨県南都留郡) 「ふじてんスノーリゾート」は、山梨県にあるスキー場です。このスキー場の特徴と言えば、目の前に富士山が見えること!壮大な景色の中で滑れば、爽快感を味わえること間違いなしです。また、お得な割引がたくさんあるのも、このスキー場の特徴のひとつ。公式LINEアカウントと友だちになれば、お得な情報を受け取ることができるので、お出かけの際は要チェックです! 周辺にある温泉施設「富士眺望の湯 ゆらり」では、富士山を眺めながらゆったりと温泉に浸かることができます。雄大な富士山が見える景色の中で一日を過ごせば、パワーがもらえそうな気がしますね♪ ふじてんスノーリゾート ■リフト1日券(通常料金):大人/4,000円、ジュニア(4歳~小学生)・シニア(60歳以上)・障がい者/3,000円 ■住所:山梨県南都留郡鳴沢村字富士山8545-1 ■公式サイト:https://www.fujiten.net/pc/ 山梨県のお出かけスポット天気※画像はイメージです 女子会に最適!/シャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳(長野県南佐久郡) お菓子メーカーのシャトレーゼが経営する、「シャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳」。5つのコースのうち2つが初級者向けのコースとなっており、初めての方や子どもが安心して楽しめるスキー場です。施設内では、シャトレーゼのケーキやパンが販売されています。スキーの後の疲れを、あま~いスイーツで癒すのもいいかもしれませんね。 スキー場から車で10分程の場所にある「アクアリゾート清里」の温泉は通称「天女の湯」と呼ばれ、美人の湯として有名です。スキー、スイーツ、美人の湯…。女子会にぴったりのコースかもしれませんね。 シャトレーゼスキーリゾート八ヶ岳 ■リフト1日券(通常料金):大人(高校生〜49歳)/3,500円、子供(小・中学生)・マスター(50〜59歳)/2,500円、キッズ(小学生未満)・シニア(60歳以上)/1,500円、障害者/1,500円 ■住所:長野県南佐久郡川上村御所平1841 ■公式サイト:http://www.chateraiseresort.co.jp/SKI/index.html 長野県のお出かけスポット天気 <注意事項> ■写真はイメージです ■ゲレンデの状況や、施設の営業日時・料金・イベント等の詳細は、お出かけ前に公式サイトなどで最新の情報を必ずご確認ください※画像はイメージです
tenki.jp 2020/01/15 00:00
渋野と鈴木の五輪出場は? 「プラチナ世代」が本格参戦!今年も女子ゴルフが面白い
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渋野と鈴木の五輪出場は? 「プラチナ世代」が本格参戦!今年も女子ゴルフが面白い
昨年、日本の女子ゴルフ界を盛り上げた渋野日向子の活躍は続く? (c)朝日新聞社  オリンピックイヤーの国内女子ツアーは、例年通り3月のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントで開幕する。昨年は、渋野日向子というヒロインが誕生。「シブコフィーバー」を巻き起こし、ゴルフファンの枠を越えて、日本中が女子ゴルフに注目した。今年は渋野や2度目の賞金女王に輝いた鈴木愛、黄金世代だけでなく、プラチナ世代もツアーに本格参戦。これまで以上の盛り上がりとなりそうだ。  メジャー覇者となった渋野は、今年もツアーの顔としての活躍が求められる。年末までのオフは、NHK紅白歌合戦の審査員などTVやイベント出演が相次ぎ売れっ子タレントのような忙しさだったが、お正月は地元・岡山に戻り家族とゆっくり過ごした。とはいえ、3日には「暇だった」とのことで青木翔コーチを電話で呼び出しいきなり1,200球の新年初打ち。休息もままならない多忙なオフを心配したくなったが、どうやら今年もマイペースな「シブコ」は健在なようだ。  そんな渋野は、1月27日からタイ合宿に突入し本格的に始動するが、これは国内ツアーだけでなく、米ツアー出場や東京五輪出場を睨んでのものだ。  五輪の出場権は原則各国2人までとなっているが、6月29日時点の世界ランクで15位以内に入れば最大4人まで出場権が与えられる。1月11日現在の同ランクの日本勢は、畑岡奈紗が6位につけ、そのあとを同11位の渋野、同14位の鈴木が追っており、このままの順位なら3人が日の丸を背負うことになる。  そして、世界ランクで15位以内をキープするためには世界のツアーで上位につけポイントを稼ぐことが必要。特にメジャーや米ツアーは国内に比べて配点が大きく、ここで好成績を挙げれば五輪出場がより確かになる。  渋野もそれを見据えており、自身のシーズン開幕はホンダLPGAタイランド(サイアムCC パタヤ・オールドC)で迎える。翌週にはシンガポールに飛びHSBC女子チャンピオンズ(セントーサGC)にも出場予定。帰国後はツアー開幕戦のダイキンでプレーし、しばらく国内で過ごすと4月には全英女子オープン以来となる海外メジャーのANAインスピレーション(カリフォルニア州、ミッション・ヒルズCC)にチャレンジすることが濃厚だ。  さらに渋野は、全英女子制覇による海外メジャー出場権は全て活用する予定で、全米女子オープン(テキサス州、チャンピオンGC)、そして五輪への最終順位が決まるKPMG女子PGA選手権(ペンシルベニア州、アロニミンクGC)も参戦するなど、とにかく国内外の大会でプレーし結果を出すという腹積りだ。  女王として新年を迎えた鈴木は、渋野に比べると五輪への想いを語ることは少ないが、今年の東京オリンピックは、一生に一度あるかないかの地元開催。アスリートとしてまたとない大舞台でのプレーを目指すことは当然なわけで、渋野同様、いつも以上にシーズン前半戦からエンジン全開でツアーに臨んでくるだろう。  特に昨季は3連勝を含め7勝を挙げ2年ぶりの賞金女王に返り咲いたにも関わらず、ツアーの主役と話題は渋野が独占した感は否めない。今季は女王のプライドにかけて開幕から飛ばしてくるはずで、2020年のツアーは開幕から熾烈なデッドヒートが見られそうだ。  そんな五輪出場を視野に入れて戦う2人の間に割って入りそうなのが、今のツアーを席巻する「黄金世代」に続く2000年生まれの「プラチナ世代」だ。  富士通レディースで女子ゴルフ史上7人目となるアマチュア優勝しプロ転向した古江彩佳を筆頭に、安田祐香、西村優菜、吉田優利らが今季からツアーに本格参戦。アマチュアとして実績がありツアーでのプレー経験がある後者3人はそれぞれ昨年のプロテストを順調に合格しており、この中から新たなヒロインが生まれても全く不思議ではない。  特に安田は、16歳で日本女子アマを制すと昨年新設されたオーガスタナショナル女子アマでは3位タイとなり、同年のニトリレディスでは単独4位となるなどスーパールーキーとして注目度はピカイチ。西村はアマチュア時代の実績も十分だが、昨年は大東建託・いい部屋ネットレディスで単独8位となった他、古江が制した富士通レディースで10位タイとトップ10入りを果たした。そして吉田は2018年に日本女子アマと日本ジュニアで優勝しアマ2冠を達成した逸材だ。  昨年は黄金世代がハイレベルなプレーを見せつけ、30歳前後の実績あるプレーヤー数名がツアーからの撤退を表明するなど一層の世代交代を印象付けたが、ここに彼女たちプラチナ世代が加わることで、ツアーの新陳代謝により拍車がかかりそうだ。  昨年の1月時点で渋野を知るゴルフファンは多くなかったはず。ということは、来年の今頃、この中からツアーを牽引するようなスターが誕生する可能性は十分だ。渋野や鈴木の五輪に向けた争いも楽しみだが、今季は次世代の躍進からも目が離せないだろう。
dot. 2020/01/14 17:00
現代人は「便利さに甘やかされて生きている」“きくち体操”創始者の自覚
現代人は「便利さに甘やかされて生きている」“きくち体操”創始者の自覚
菊池和子さん(きくち・かずこ)/きくち体操創始者。1934年生まれ。日本女子体育短期大学卒業。体育教師を経て、「きくち体操」を創始。現在も川崎本部のほか、東京・神奈川などの教室、カルチャースクールなどで指導を行っている。http://kikuchi-taisou.com/ (撮影/写真部・小山幸佑) 「『もう年だから』とあきらめないで。自分のからだに気持ちをかけて丁寧に動かすと、からだはよくなろうと応えてくれます」(菊池さん) (撮影/写真部・小山幸佑)  体力の限界、気力の限界など完全に突破して第一線を走り続ける80代女性。“いまを生きるひとたち”に何を伝え、何を残していきたいのか。ライフジャーナリスト・赤根千鶴子氏が「きくち体操」創始者の菊池和子さん(85)を直撃。人生の先輩の言葉は、深く心に突き刺さる。 *  *  * 「こんにちは。よろしくお願いいたします」 「きくち体操」創始者の菊池和子さんが、トレードマークの赤と黒のウェアで現れた。わっ、艶っぽい。そして、なんてきれいな肌! さらに目を引くのは、その姿勢の美しさだ。 「姿勢を褒めていただけるのは、嬉しいですね。“いくつになってもしっかりと立つ”ということは、私自身、若い頃から常に意識し努力してきたことなので」  近年のきくち体操ブームは凄まじい。テレビに出れば大反響。2019年に書籍の売り上げは累計200万部を突破。書店に行けばきくち体操コーナーがあり、新刊も続々と発売された。 「きくち体操は“自分を育てるための体操”と、私はお伝えしています。脳には、からだの各部から刺激を受ける場所が点在しています。意識を向けてからだを動かせば、脳は刺激を受けて活性化するのです。人間の筋肉は、動かさないとどんどん萎縮して動かなくなっていきます。関節も拘縮(こうしゅく)といって、どんどん固まっていきます。自分から動かそうと意識して動かさなければ、からだも脳も弱って錆びついていく一方です」  だからこそ、からだは“意識的に”動かしていかなければならない。といっても、激しい動きをするわけではない。床にすわり、手のひらと足裏を合わせて“手指と足指の握手”をしたり、足首を丁寧に回したり。ゆるやかな動きを丁寧に行うことで筋肉を育て、からだを生き返らせていくのだ。 「文明の進化によって、世の中は本当に便利になりました。いまやスイッチひとつで、機械が多くのことを代行してくれる時代です。でもテクノロジーがどんなに発達しても、人間が自分の足で立って歩くということに変わりはありませんから。便利さに甘やかされて生きているという自覚を持つことが必要なのです」  菊池さんの原点は、実はモダンダンスにある。 「戦後、江口隆哉(たかや)・宮操子(みやみさこ)夫妻のモダンダンスの公演を見たときに、私は大きな衝撃を受けました。ご夫妻は戦前にドイツに留学し、日本にモダンダンスを普及させた方々として有名ですが、私もおふたりの内面の深さを表現する肉体のすごさに言葉をなくしたことをよく覚えています。ああ、人間の肉体はこんなに美しく愛や喜びや悲しみを表現できるものなのか、と」  そして入学した東京の大学で菊池さんは江口隆哉さんのダンスの授業を必死で受けた。大学卒業後は東京都内の中学校の体育の教師になり、30歳で退職。第2子を授かったタイミングだ。 「その頃はまだ子どものいる女性が外で働き続けられる時代ではなかったのです。でもあるとき、同じ団地の女性たちに、体操を教えてほしいと声をかけられて」  昭和40年代初頭のことだ。 「主婦が集まって何かしている、などということも“不良”と揶揄されるような時代でした。でも『いつまでも素敵で美しくありたい』という女性たちの気持ちは痛いほどわかったので、私は団地の奥さんたち向けに体操教室を始めたのです」  場所は団地の集会所。“不良”の集まりと目立ってはいけないので、窓のカーテンを全部閉め、薄暗い室内でひっそりと。菊池さんは独学で、学生時代に学んだ解剖学の勉強も再開。そして女性たちにこう呼びかけるようになった。 「筋肉を動かすことは、骨をつくることにもつながっているの。骨の骨髄の中では血液がつくられているの。からだは単に動かせばいいんじゃない。からだを動かすということは、あなたがあなたの『いのち』を育むことになるのよ」  きくち体操はそのコンセプトと共に口コミで全国に広がり50年以上の月日がたった。が、菊池さんの元にはいまも、教えを請う生徒が後を絶たない。そんな菊池さんの今後の目標とは? 「目標なんて、ないです」  えっ? ないのですか? 「私は遠い目標よりも、日々を大切に何事もなく生きることのほうが大事なんです。いのちは今日突然終わることもありますもの。その覚悟はいつも持っていなくては。死ぬときもできるだけ、ひとに迷惑かけて死にたくないの。だから家はできればきれいにして外出したいと思っています。ささいなことかもしれませんけれど、年をとってみたら無意識のうちに常にこういったことを心がけているようになりました」  菊池さんの人生は、どこまでもそのイズム(主義)に貫かれているのである。 ※週刊朝日  2020年1月17日号
週刊朝日 2020/01/14 08:00
84歳の超熟女AV女優 80歳超で初撮り、息子は「好きにやってくれ」
84歳の超熟女AV女優 80歳超で初撮り、息子は「好きにやってくれ」
小笠原祐子さん (撮影/写真部・小山幸佑) 昭和34年に明治記念館で結婚式を挙げた。小笠原さん23歳、夫が24歳の時のこと(本人提供)  アダルトビデオ(AV)業界には、何千人ものAV女優がいると言われている。そんな中、81歳でデビューし、84歳の今も現役の“超熟女AV女優”がいる。彼女はなぜこの世界に飛び込んだのか? *  *  * 「小笠原さんのデビュー作品発売前にインターネットで告知したら、その当日に、『とうとう80代が出ましたね! 絶対買います!!』という熱心なお客さんの電話がかかってきました」  そう話すのは、当時81歳だった小笠原祐子さん(84)のデビュー作を手掛けた老舗熟女AVメーカー「ルビー」制作部の川邊琢磨さん。年1~2作のペースで小笠原さん主演の新作を制作し、昨年11月にも「お婆ちゃん逆ナンパ」が発売された。  同社は50~80代の女性が出演する熟女ものに特化しており、購入者も60~90代の男性が中心。感想を熱く綴った手紙が届いたり、電話がかかってきたりするという。 「若いAV女優の作品は発売直後に一気に売れてそれまで。でもお婆ちゃんものは何年も売れ続けます。ようやく熟女ものにたどり着いたお客さんが、昔の作品を買ってくれるんです。もちろん小笠原さんの作品は人気があるから、出演をお願いしています」(川邊さん)  熟女ものを多く手掛ける同社でも、80歳を超えてデビューするのは初めて。なぜ小笠原さんは81歳でAVの世界に飛び込んだのか?  昭和10年生まれの小笠原さんは、大手保険会社勤務の父と、しつけに厳しい専業主婦の母のもとに生まれ、箱入り娘として育てられた。有名女子短大を卒業し男性との交際経験がないまま、父と同じ会社で働いている時に夫となる人と出会う。 「京都大学でアメフトをやっていたイケメン! 初めて関係を持ったのも結婚してから。子どもを3人産んだけど、出産時以外は毎日“おつとめ”があったの。朝とか一日に何回も、という時もありました。他の夫婦がどうなのかなんて知りようがないから、私はそれが当たり前だと思ってたの」  そんな夫婦生活も、夫が59歳の時に病気で亡くなり、終止符を打つことに。数カ月間は放心状態だったが、「家にいてもしょうがないじゃない」と母と妹に励まされ、旅行したり、外で飲み歩いたりと遊び回るようになった。夫に従い、子育てに専念した反動だったのかもしれない。  そんな中、61歳の時に知り合いに「店をやってくれない?」と頼まれ、スナックのママになることに。約7年間店を切り盛りした。 「店の近くに大学の運動部の寮があって、大学生たちが毎日飲みに来てね。夜中まで大学生と飲みまくってた。彼らは今、30~40歳になったけど、今でも交流があるのよ」  大学生の彼氏ができ、一緒に旅行に行ったりもしたが、肉体関係はなかったという。一方、60~70代の客からは熱心に口説かれたが、小笠原さんは見向きもしなかった。 「だって、おじさんなんか魅力的に思えない。ましてやそんな人とのセックスなんて絶対にイヤ! 男盛りのパパが最高だったし、それが記憶にしっかり残ってるからね。おっさんなんて全然お呼びじゃなかった」  そんな中、店の常連客で以前から友達だった女性から、「ママ、AV出演に興味ない?」と誘われる。 「そんなこといきなり言われたら、誰だって『は?』って思うでしょう?」  必死になって断り続けていたものの、その女性に「ランチに行こう」と誘われた先で「ルビー」の川邊さんを紹介される。その後、「今度は撮影現場に遊びに来てみない?」と言われ、好奇心から行ってみることに。 「介護ものの撮影で、若い女優さんとお年寄りの男優が出演してたの。そんなおじいさんのセックスなんて見たくないからほとんど見なかった。それに、カメラマンや音声さんなど5人くらいに囲まれてセックスするなんてありえない!」  そう言いつつも、小笠原さんが漏らした一言を、川邊さんは聞き逃さなかった。 「私ならあんなじいさんじゃなくて、若くてイケメンじゃなきゃ嫌だ」  川邊さんはすかさず、「じゃあそんな人を用意します!」と返し、あっという間に出演が決まってしまう。 「現場を見て何かが変わったのかも。80歳になったし、いい経験と度胸を決めた」  81歳にして24年ぶりのセックス。夫以外の男性を受け入れるのは初めてだった。 「それがちゃんと濡れたのよ! 夫に35年間教育されていたからかしら(笑)。体が覚えていたのかもね」  小笠原さんには娘2人と、息子1人がいるが、出演は「関係ない」と言い切る。 「娘は嫁いで別の家に入っているから言う必要がない。息子は知っているけど、『俺は興味ない。若くて元気でいられるなら十分だから、好きにやってくれ』って」  出演していることは周囲にも広まったが、小笠原さんは意に介していない。 「AV出演と、普段の私は全く別の世界の話。何かを言われても、私は一切受け付けないと言い返しているから、誰も何も言わない」  訳がわからないままに飛び込んだAVの世界だったが、息子や孫世代である監督やスタッフなどの制作陣と一緒に作品を作るのが面白いと感じるようになった。 「自分が出た作品なんて見たくない!と思ってたけど、何本か出るうちに勉強しようと思ってデビュー作を見てみたの。そしたら相手役の男優さんとお風呂に入るシーンで、いきなりアソコを握っていて、『もっと丁寧に全身を触ってあげればよかった』って反省したわ」  それからは男優への触れ方や自分の感じ方など、人に見られることを意識するようになったという。演技についても、役になり切って演じる面白さに目覚めた。 「小笠原さんは頭の回転が速くてよくしゃべるので、監督の信頼も厚く、ほぼアドリブ。それでもちゃんとこなせるんだからすごい。逸材です!」(川邊さん)  作品で着ている洋服は全て自前。作品の内容に合わせて自らスタイリングし、メイクも変えている。撮影当日は愛車に衣装とスタッフのために作った唐揚げやカレーなどをのせ、現場へと向かう。 「みんな喜んで食べてくれるの。車の運転ができる限りは出演し続けたいわね」  背中が丸くて姿勢が悪いと、作品でも見栄えがしないことに気づき、常に姿勢をよくすることを意識。ストレッチも毎日必ず行う。 「洗面台に手をついて後ろに反り返ったり、前屈運動をしたりしています。開脚だってできるのよ」  小笠原さんは、84歳という年齢がにわかに信じがたいほど滑舌がよく、とにかくテンポよくしゃべる。お酒とたばこが大好きで、年に1回、「ルビー」の忘年会で朝まで飲み明かすことが楽しみという。 「元気の秘訣をよく聞かれるけど、若い人との交流があり、彼らといっぱい話をしているからだと思う。年寄り同士で『ここが痛い』とか『こんな薬を飲んでる』なんて言ってちゃだめ」  夫と過ごした結婚生活が第一の人生、スナックのママ時代が第二の人生、そしてAV女優になってからが第三の人生だという小笠原さん。生涯現役で走り抜ける姿は潔く、格好いい。(ライター・吉川明子) ※週刊朝日  2020年1月17日号
シニア
週刊朝日 2020/01/10 17:00
女優・小芝風花、22歳の挑戦「猟奇的で二面性のある役に」
女優・小芝風花、22歳の挑戦「猟奇的で二面性のある役に」
小芝風花(こしば・ふうか)/大阪府出身。2012年、ドラマ「息もできない夏」で女優デビュー。14年の「魔女の宅急便」で映画初出演にして主演を務めた。昨年のドラマ「トクサツガガガ」主演で一躍注目を浴び、年末のNHKスペシャル「パラレル東京」のキャスター役も評判に (撮影/写真部・東川哲也 ヘアメイク/大坂ひとみ スタイリング/成田佳代) 2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月17号より) 2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月17号より)  ちょうど1年前に放送開始されたドラマ「トクサツガガガ」(NHK)に主演し、脚光を浴びた。女子力高めの商社勤めのOLだが、実は特撮オタクでヒーローが見えてしまう……というコミカルな役。 「放送が始まってからは、『ガガガで好きになりました』という方が多くて嬉しかったです。業界の方からも、取材してくださる方からも、『ガガガ、見てましたよ』と言っていただくことが多くて。私にとってとても大きな作品です。去年はほかにもいろんなドラマのお話をいただき、役の上で振り幅が大きい一年で、とても充実していました」  昨夏は「ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ」でラッパー、「べしゃり暮らし」で漫才師を演じたが、その後は一転、社会派ドラマに出演。「歪んだ波紋」で、保険金目当てに夫を殺したと疑われる妊婦役。NHKスペシャル「パラレル東京」では主役のキャスターに抜擢された。  まだ22歳だが、オファーされる役は、実年齢よりも高いことがほとんど。 「幼く見られることが多いのに、どうしてなんでしょう。19歳のとき、小学校の先生の役をいただいたこともあります。この見た目でこの役はおかしいだろうと思われないように、お芝居で頑張らないと」  好きな女優を尋ねると、満島ひかり、安藤サクラ、寺島しのぶ、蒼井優の名をスラスラと挙げた。 「あの方たちの演技は、本当に素晴らしいじゃないですか。泣いてるシーンを見ると、こっちまで苦しくなって涙が出てきます。あどけない子どもっぽい表情をされたり、めちゃくちゃ艶っぽい表情もされたり。私も先輩方のように、見てる人をどんどん引きずり込むようにお芝居を究めていきたい。『小芝が出ているから見たい』と思われる女優さんになりたいです」  今年は、その域に近づくための大事な年になる。 「猟奇的で二面性のある役に挑戦してみたいです。すごくいい子だと思われていたのに、実は陰ではこんなことをやっていた、とか。人間のドロッとした汚い部分が出てくるような作品に興味があります」 ※週刊朝日  2020年1月17日号
週刊朝日 2020/01/10 11:30
「ムカつく子ども」に寺田心くんを起用したスポンサーの「してやったり」
宝泉薫 宝泉薫
「ムカつく子ども」に寺田心くんを起用したスポンサーの「してやったり」
可愛いけどザワつく、寺田心くん (C)朝日新聞社  年末から年始にかけて、やたらと見かけたテレビCMのなかに、子役タレント・寺田心のものが何本もある。ブックオフの「心くんの指導~タピオカ~」編「同~大盤振る舞い~」編などの数本と、ドコモの「栄光のスマホ道」編だ。  ブックオフのほうでは、気弱そうな女性店員に向かって「あえてチャラくしてみよっか」と持ちかけ、 「ブックオフのウルトラセール ちょーヤバイんですけどぉー 本が全品20パーオフって 浮いた分でタピオカ飲めんじゃーん」  と、実演してみせたりしていた。一方、ドコモのほうは、 「どうしてスマホに変えなかったんだ! スマホはいろいろ調べられるし 家族とすぐにやりとりができる スマホの輪にも入っていける スマホはとっても楽しいんだ! 機種代金も割引中!!」  と、アジる内容だ。どちらも同じテイストなので、ツイッターなどでの反応も似ており、頻発されるのは「面白い」「ムカつく」といったワード。CM名が書かれていないと、どちらの感想なのか、わからないくらいである。  それは取りも直さず、彼を起用したCMのスタイルがひとつ完璧に確立している証拠だ。そして「面白い」はもとより「ムカつく」という声でも、スポンサーとしてはしてやったりだろう。  なかには、CMがむかつくのでテレビを消して、本やDVDを探しに近所のブックオフに行ったら、そこでも店内放送でCMが流れていた、と怒っている人もいた。宣伝効果は絶大で、無意識部分にまで刷り込まれているのかもしれない。 ■中身としゃべり方のギャップ  そんな「心くんCM」のツボが、あの独特のしゃべり方にあるのはいうまでもない。子供でもなかなかいないような、舌足らずな甘えた口調は、小学校低学年時にTOTOのウォシュレット一体型便器・ネオレストのCMで演じたリトルベン(菌の親子の子供のほう)役などで大いに活かされた。その口調は小5(11歳)になった今もそれほど大人びておらず、子役としての大きな武器だ。  それでいて、人間としての中身は大人っぽいし、話す内容もしっかりとしている。これが四半世紀前の人気子役・えなりかずきあたりだと、中身としゃべり方がある程度シンクロしていたのだが、彼の場合はそのギャップが激しいのだ。  それゆえ、子役によくある年齢不詳っぽさに加え、生身の人間ですらないような不思議な存在感がある。たとえば、漫画やアニメに出てきそうな、顔も声も可愛いのに、やたらと大人びたキャラクター。まず思い浮かぶのが「名探偵コナン」の主人公だが、それ以上に連想してしまうのがアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の地球外生命体・キュゥべえだ。  ご存知の人もいるだろうが、キュゥべえは小動物のぬいぐるみのような可愛い見た目や声とはうらはらに、自分の星の利益のため、少女たちが最終的に邪悪な魔女になるよう巧みに誘導していく。その弁舌はさながら立て板に水で、哲学的ですらある。そんなキャラにも通じるような、ギャップあふれる存在感(すなわち、違和感)が「心くん」には備わっているのである。  それゆえ「心くんCM」は視聴者の心をザワザワさせる。そして、その有効性をそれまでにないかたちで世に示したのが、昨春放送された「ブックオフなのに本ねぇじゃーん」だ。可愛いのに毒舌、という新キャラをやらせてみたら、世間がうすうす感じていたギャップとも見事にハマり、大ヒットCMに。当時、ブックオフは本の売り上げが落ち込み、他の商品に力を入れていくという新展開をアピールしたかったようだが、見事に当たって業績回復につながった。  と同時に、彼のイメージチェンジにもひと役買ったのである。というのも、それまでの彼に対する世間の反応は「可愛い」「ムカつく」の2パターンだった。あの独特のしゃべり方が好悪を真っ二つに分けていたわけだ。  それがあのCMを機に「面白い」が加わり始めた。子役はいずれ「可愛い」だけでは勝負できなくなるので、これは大きなプラスだ。しかも、それだけではない。「ムカつくけど面白い」という声も目立つようになってきた。  具体的にいえば「寺田心って嫌いだったけど、あのCMを見てるうちになんだか好きになってきた」という人がちらほら出てきたのだ。これはかつて、ぶりっこキャラでアンチも多かった松田聖子が髪型をショートにし、ユーミンの曲を歌うようになったりして、同性ファンを増やしていったケースに少し似ている。彼もまた「ぶりっこ」だけが売りではないことを証明して、自分への風向きを変えたのである。  これはけっして容易なことではない。実際、土屋太鳳などはあの声やしゃべり方を武器にしきれず、風向きを変えられずにいる。彼の場合、よかったのはまず、あの声としゃべり方が「可愛い」だけでなく「面白い」にも使えると気づいたCMの作り手がいたこと。そして、その期待に子供ならではの柔軟性で応えられたということだ。  実際、ブックオフのCMでもパターンによって、最近のシャウト型から従来のぶりっこ型まで声色などを使い分けており、そのスキルはなかなかのものだ。 ■人気子役がぶつかる壁を乗り越えた  ただ「ブックオフなのに本ねぇじゃーん」よりひと足早く、彼の面白さを知った人たちがいる。ドラマ「トクサツガガガ」の視聴者だ。ブックオフCMは昨年の春休み期間だったが、こちらはその1月から3月の放送。小芝風花がオタクの腐女子に扮し、それゆえの泣き笑いを描いたこの作品で、彼は「ダミアン」というあだ名の小学3年生を演じた。  その由来はもちろん、映画「オーメン」に出て来る悪魔の子だ。もちろん、そこまでおどろおどろしい存在ではないが、マセガキっぽいというか、こしゃまくれたところがあり、大人のヒロインにもズバズバ鋭いことを言って、感心させたりする。たとえば、こんな発言だ。 「クラスメイトでも ともだちかは わからないでしょ」  これもあの声としゃべり方だからこそ、より活きる。とまあ、可愛いけど毒舌というキャラをすでにここで披露していたわけだ。  そのハマりっぷりを見ていたおかげで、ブックオフのCMにはさほど驚かなかった。むしろ、ドラマとCMを連動させ、一気にイメチェンを狙っているのだろうかと感じたくらいだ。いずれにせよ、彼はこの時期、人気子役がぶつかる最初の壁を乗り越えたといえる。 ■菅田将暉のような役者になるか?  では今後「心くん」はどうなっていくのだろうか。  このところ、人気子役が成長とともに挫折するパターンは減り、たとえば神木隆之介のように、ルックスと実力を併せ持つような青年俳優になることも増えてきた。これは現役の子役たちにとって、ひとつのモデルケースだろう。  そこで思い出すのが、3年前の大河ドラマ「おんな城主 直虎」だ。彼は菅田将暉が演じた井伊直政の子供時代の役だった。当初、人気者同士を豪華に組み合わせただけのリレーに思えたのだが、このふたり、顔立ちも意外と似ていることに気づかされた。ということはつまり、菅田のような俳優になって今とは違うかたちで活躍することになるかも、と推測することもできる。  ただ、今とは違うかたちで、というのはあくまで「声変わり」を想定してのものだ。ところが、弱ったことに、あの声としゃべり方ではない彼をまったく想像できないのである。そこが「心くん」の天才子役たるゆえんでもあるが、はたして、どんなイメチェンが待っているのか、心をザワザワさせながら楽しみにするとしよう。 ●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。
dot. 2020/01/10 11:30
契約書か漱石の『こころ』か、どちらかしか学べない? 高校国語の新学習指導要領に困惑の声
契約書か漱石の『こころ』か、どちらかしか学べない? 高校国語の新学習指導要領に困惑の声
教えるべきは「契約書」か、漱石の『こころ』か。二択を迫るような新学習指導要領の高校国語の科目設定に、学校現場からは困惑の声があがる/2019年12月、神奈川県内の高校で(撮影/写真部・小山幸佑) 新学習指導要領で高校国語はこう変わる(AERA 2020年1月13日号より) 国語の役割とは?(AERA 2020年1月13日号より)  高校国語の新学習指導要領で「文学」が激減し、2、3年生で文学に触れずに卒業する生徒が出る可能性もあるという。選択科目を「論理国語」と「文学国語」に分ける必要があったのか。文学界も巻き込んだ論争が起きている。AERA 2020年1月13日号では新学習指導要領に揺れる高校国語の最前線を取材した。 *  *  * 「ゴリゴリの理系で、国語は嫌いでした。点数は取れないし、役に立たないと思っていたんです。ところが大学に入って、周囲の友人たちと小中高で習った国語の話題で盛り上がる。もったいないことをしたと思います。夏目漱石の『こころ』の『精神的に向上心のないものは、馬鹿だ』の一文は心に刺さりました」  医学部に通う大学2年生の男性はそう記す。  中学生の子を持つ47歳の女性は、新学期に国語の教科書が配られると真っ先に読んだ。 「いまも心に残っているのは、梶井基次郎の『檸檬』です。レモンの黄色が鮮やかに目に浮かぶようでした」  国語が、戦後最大といわれる変化を前に大きく揺れている。2022年度から実施される高校国語の新学習指導要領で、「実用文」を扱う比重が増え「文学」の扱いが大幅に減少する。  AERA本誌では昨年11月、インターネットを通じて、国語教育のこうした変化や役割についてアンケートを実施。254人から回答を得た。教科書で出合った「心に残る作品」の質問には、冒頭にあるように思いあふれる回答が数多く寄せられた。  今回、とりわけ問題視されているのは、主に高校2、3年生が受ける選択科目だ。説明文や論説文など論理的、実用的な文章を扱う「論理国語」と、明治時代以降の小説、詩歌などを扱う「文学国語」が設けられた。大学入試の出題傾向に合わせると、多くの学校では「論理国語」と「古典探究」を選ぶと見られ、「文学国語」がはじかれる。そうすると、教科書の定番だった中島敦の『山月記』や漱石の『こころ』などを読まずに生徒たちは卒業することになる。アンケートでも上位を占め、10代から60代まで幅広い年齢層に支持された作品だ。  こうした事態に日本文藝家協会は声明を発表し、文芸誌も次々と特集を組んだ。昨年8月、東京都港区の日本学術会議講堂で開かれたシンポジウム「国語教育の将来──新学習指導要領を問う」では、東京大学の安藤宏教授(近現代日本文学)が声を荒らげた。 「『論理国語』と『文学国語』という分け方は大問題だ。文学に論理はないというのか」  新指導要領では、AIやグローバル化による、予測困難で変化の激しい時代に子どもたちが対応していくため、「実社会で必要とされる国語の力」により重きがおかれた。OECDの学習到達度調査(PISA)や、新井紀子さんの『AI vs.教科書が読めない子どもたち』で問題提起された、読解力の低さへの危機感もある。安藤教授は言う。 「即戦力を求める、社会の要請もあるのでしょう。しかし実用的なわかりやすさばかりを優先し、わからないものに向き合うことを軽視するのは危険です。一番わからないのは『人の心』。それにアプローチするのが文学や哲学などの人文知です。グローバルで多様な価値観のなか生きていく時代であればこそより重要になる」  沖縄県の公立高校2年の女子生徒(17)は、化学の研究者になるのが夢だ。高校1年から塾に通い、各種模試も受けている。受験年となる、20年度から開始予定の大学入学共通テストは新学習指導要領と連動しているため、模試には実用文が出題されている。 「例えば、集合住宅のスロープ設置で住人が費用負担をめぐって議論したり、小学校の学校選択制を家族で話し合ったり。会話形式の問題文に関連するデータや資料がついてきて最適解を探ります。要はもめごとの話なんです。こういうのも必要なんだろうと思いますが、新指導要領でこんなのばかりになってしまったら、国語で『生きる力』が本当につくのかなって思ってしまいます」(女子生徒)  女子生徒が読解力や論理的思考が鍛えられたと実感するのは、一昨年、1カ月間かけて『羅生門』を読み込んだ学校の授業だ。 「登場人物の行動や心理を考えるとき、必ず『根拠』を探しました。同じ場面でも、人によって見方が変わるのがとても勉強になりました。大学に入ったら、色々な論文を読まないといけなくなるので、多様な視点や発想を知ることはすごく大事だと思っています」  一方、「論理国語」の新設を支持する声もある。日本語教育を専門とする、東海大学の村上治美教授は言う。 「いわゆる国語と、外国語のように言語スキルを学ぶ『日本語』と、別建ての発想が必要だと思います」  村上教授は、大学に入学する学生たちがリポートをきちんと書けないことに、多くの大学が頭を抱えていると指摘する。 「頭に浮かんだことを段落分けすることなく書き連ねてしまう。文章を構成する力が身についていないのです」(村上教授)  対策として、東海大学では1年生の必修科目で、新聞記事の要約をさせ、文章の構成の仕方を教えている。 「大学4年で卒論を書くことから逆算すると、高校卒業時までにリポートを書く基礎になる段落構成力は身につけてきてほしい」(同) 『論理トレーニング』などの著書のある、立正大学の野矢茂樹教授(哲学)は大学入学共通テストのモデル問題に「駐車場の契約書」をはじめとする実用文が出されたことを評価する。 「ただし、契約書という新規性にばかり注目が集まり、出題の意図が正しく理解されていないのが残念。ポイントは、規則を具体的な場面でどう適用するか。論理的能力を問う問題で、契約書を読む問題ではないんです」  野矢教授は「1回読めばわかる文章」を書けて、読める「日本語の基礎力」の育成が大事だという。そのためには名人芸的なレトリックを含む文学より、レシピから論文まで、さまざまな説明文の「普段使いの文章」で、情報把握や論理展開の力を鍛える方が効率的だと考える。 「要約することが意味を持つ文章を使うのがおすすめです。文学でできないことはないですが、詩は要約すると魅力を失いますよね? 小説も同様で、文学は細部の表現に作家が命をかけています。それだけに、あらすじを抜き出し論理のトレーニングに使うのはもったいない。普段使いの言葉を用いた『論理国語』で日本語の基礎を、その上に『文学国語』で表現や多様な視点を学習するといった棲(す)み分けが必要です」(野矢教授)  本誌アンケートでは「新指導要領の実用文重視への転換をどう思うか」も尋ねた。これに対し、「良い」が15%、「悪い」が55%、「どちらともいえない」が30%だった。「良い」と答えた大学院1年の男性は、 「足し算ができない生徒に微分積分を教えても意味がないように、読解力のない生徒に文学を教えてもどうかと思う。文学に触れない生徒が出るのは好ましくないが、優先すべきは読めない人を減らすこと」  と主張。これに対し「悪い」と答えた26歳の会社員の女性はこう指摘する。 「SNSなどで意味を正しくとらえられない人たちは、言葉の背景を汲(く)みとれていない。それには想像力が必要で、実用的な文章だけで鍛えるのは難しい」  古代ギリシャの、有名な論理矛盾を伝える文に、 「『クレタ人は嘘つきだ』とクレタ人が言った」  がある。クレタ人が嘘つきだとしても正直だとしても意味に矛盾が起きる。ところが、前出の安藤教授は「クレタ人は正直に話したのだ」と解釈する。 「クレタ人は、自虐、自嘲をこめて『クレタ人は嘘つきだ』と言ったのです」(安藤教授)  そう読めば、確かに成立する。言葉は文脈や感情とともにあるからだ。安藤教授は言う。 「論理と文学は切り離せるものでなく、車の両輪。どちらも必要なんです」  アンケートでも、優先度や配分の考えの違いはあれど、同様の回答が少なくなかった。問題は、新指導要領が“どちらか”しか選べない設定になっていることだ。名古屋大学教育学部附属中・高等学校国語科の加藤直志さん(43)は言う。 「新指導要領は『実用的な文章』と『文学』をむりやり切り分けたうえで、個々の単位数が4と大きいためどちらか一方の選択を強いる設定になっている。それが最大の問題。いずれも必要で、その扱い方や比率は各学校の教員の判断に委ねるべき」  こうした声を受けてか、標準単位より減らす「減単」に文部科学省が言及するようになった。大滝一登・視学官はこう説明する。 「学習指導要領では標準単位数を示していますが、生徒の実態などを踏まえ、当該科目の目標の実現が可能であると判断できる場合には、少ない単位を配当することが認められています。判断するのは各自治体の教育委員会ですが、減単の検討をしているところもあるようです」  加えて、高校の現場からは教育環境の整備も欠かせないとの声が上がる。北海道の国語教員の女性(51)は言う。 「高校卒業までにリポートを書けるようにとか、論理国語の必要性もわかる。しかし添削作業は非常に手間がかかる。実現するには少人数クラスにし、いまの倍近くの国語教員が必要です」  昨年12月上旬、PISAの結果が発表され、日本の生徒たちの読解力の低下があらためて話題となった。『国語教育の危機』の著書がある日本大学の紅野謙介教授(近現代日本文学)は次のように語る。 「今回の国語改革は、AIやグローバルなどの言葉を使い不安や恐怖心をあおってくるのが特徴。PISAの調査についても、受験したのは15歳。高校1年の1学期で、小中学校の教育結果が反映されました。高校国語の改訂は『改革が進んでいる、小中学校の指導要領にならえ』というもので、むしろ読解力の低下を招く危険性がある。PISAの指標そのものを疑問視する声もあり、いずれにしろ落ち着いた議論が必要です」  国語力の現状認識について、確かなデータや根拠に基づく共有から始めることも不可欠だ。(編集部・石田かおる) ※AERA 2020年1月13日号より抜粋
AERA 2020/01/08 17:00
悪夢で目覚めて睡眠に悪影響も!ママ医師が教える「子どもの悪夢」の対処法
森田麻里子 森田麻里子
悪夢で目覚めて睡眠に悪影響も!ママ医師が教える「子どもの悪夢」の対処法
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表 ※写真はイメージ(Getty Images)  日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「子どもの見る悪夢の対処法」について「医見」します。 *  *  *  今年のお正月には、皆さんどんな夢を見ましたか?一富士二鷹三茄子、などと言いますが、私は残念ながらそんな縁起の良い夢をまだ見たことがありません。夢は本来、不安や恐怖を感じるようなネガティブな内容のものが多いと言われています。  2歳後半になる息子も、最近は夢についての絵本を好んで読んだり、「おばけ」の話をしたりしています。どうやら時々怖い夢を見ているようです。私も大人になってからはだいぶ減りましたが、子どもの頃はよく、追いかけられる夢を見ていた覚えがあります。  鮮明な夢は朝方のレム睡眠の間に見ることが多く、悪夢を見て起きてしまうと、なかなか寝つけなくて睡眠に影響が出ることもあります。悪夢は幼児期や学童期に多いイメージですが、実はそれ以降もよく起こります。  2010年に発表された約9万人の日本の中高生の調査では、「先月、悪い夢を見て起きてしまったことがありましたか?」という質問に対し、平均で35.2%の生徒が「はい」と答えています(※1)。  この調査によると、悪夢を見やすい要因としては、女性である、アルコールを摂取している、精神的に不健康である、寝つきが悪い、眠りの質が悪い、日中の眠気がひどい、などがありました。男子生徒では悪夢を見るのは平均30.3%でしたが、女子生徒では39.9%にも上り、はっきりとした性差が見られます。  他の研究でも、思春期から青年期にかけては、女性の方が悪夢を見る割合が高いことがわかっています。ホルモンバランスが影響しているという説や、女性の方が夢への関心が高いので夢をよく覚えているという説があるようですが、理由ははっきりしていません。学年別にみると、中学1年生より3年生、高校1年生より3年生の方が悪夢を見る割合が高くなっており、これは受験等のストレスが関係している可能性もあるのではと感じました。    不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、またその他の睡眠に関わる病気が関連していることもありますが、一般的には、やはりストレスを減らし、生活リズムを整えることが大切です。まずは週末も平日も毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝て、睡眠時間を十分に確保しましょう。目安としては、未就学の子どもなら10時間、小学生なら9時間、中高生でも8時間以上の睡眠が必要です。  それ以外の対処法としては、夢の内容を話させてあげたり、絵を描かせてあげるというものもあります。よくわからない怖いものを、具体的な形にすることで、怖さが軽減するのかもしれません。そして怖い夢の続きを一緒に考えてハッピーエンドで終わらせてあげましょう。特に小さい子どもなら、夢について描かれた絵本を一緒に読んで、夢は現実とは違うことを教えてあげるのも大切です。  また、子どもは当然ですが、大人の場合は、アルコールの摂取にも注意したいところです。先の調査では、アルコールを摂取していない人と、前の月に1回以上摂取した人では、悪夢を見た割合はそれぞれ33.1%と42.9%でした。特に就寝前にお酒を飲むと寝つきは良くなるかもしれませんが、睡眠の質は低下してしまいます。  今年も良い夢を見て健康に過ごせるように、お子さんやママ・パパ自身の毎日の睡眠も、どうぞ大切にしてください。 ※1. Munezawa T, Kaneita Y, Osaki Y, Kanda H, Ohtsu T, Suzuki H, et al. Nightmare and sleep paralysis among Japanese adolescents: a nationwide representative survey. Sleep Med. 2011;12(1):56-64.
病気病院
dot. 2020/01/08 07:00
<現代の肖像>門脇麦 映画という場所を求めていた
中村千晶 中村千晶
<現代の肖像>門脇麦 映画という場所を求めていた
会うたびに「こんな顔、してたっけ」とハッとさせられる。「自分でも最近、大人の顔になってきたなあと思います」/品田裕美撮影 読書も好きだが実はアウトドア派。山や釣りによく出かける。でも写真は撮らない。「目で見るほうがいい。スマホの中身はほぼ乗換案内と台本の写メです」(門脇)/品田裕美撮影  俳優の門脇麦さんは、1月19日からスタートするNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインを演じる。映画「愛の渦」で脚光を浴び、必要ならヌードも辞さず、自分を追い込み、役を作り上げていく門脇さんを、今、監督たちはこぞって起用したがる。「キメ顔」を持たない門脇さんの惹きつける力を追った。AERA 2020年1月13日号に掲載された「現代の肖像」から一部紹介する。  12月のNHKスタジオ。門脇麦(かどわき・むぎ)(27)は大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の収録現場にいた。15歳という設定ゆえか、前髪をちょんまげにしたおさげ姿。くっきりとした眉に、蜜柑(みかん)色の着物が愛らしい。  セットの準備が進むあいだ、廊下のソファに「普通に」座っている。大河のヒロインなのに、まるで俳優然としたところがない。自然に、淡々と、一人でいる。そんな様子をスタッフや周囲の人々が、気持ちよく見守っているのがわかる。  が、本番。「よーい、スタート!」の声がかかると、門脇はすん、と役に入っていく。演技の前にとった間(ま)と重要なセリフは、絞り出されるような切なさを内包し、あきらかに場をさらった。  門脇は2014年の映画「愛の渦」で一躍、表舞台に躍り出た。劇団「ポツドール」主宰の三浦大輔(44)が自らの舞台を映像化した作品。乱交パーティーに集まった男女の会話劇で、地味だが実は性欲が強い女子大生という難役だ。全編123分中着衣シーンが18分30秒という衝撃もさることながら、内向的なヒロインが自らを解放していくさまを繊細な芝居と透明感をもって演じ、人々を驚嘆させた。  15年にはNHK連続テレビ小説「まれ」でヒロインの友人役を演じ、強い印象を残す。16年には映画「二重生活」で単独初主演を果たし、「止められるか、俺たちを」「チワワちゃん」「さよならくちびる」など話題作に続々と主演。そして20年、大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインに抜擢(ばってき)された。  門脇演じる駒は、主人公・明智光秀とひょんなことから関わる戦災孤児だ。チーフ・プロデューサーの落合将(51)は最初から門脇を想定していたと話す。17年にドラマ「悦ちゃん」で仕事をして以来、動向が気になって仕方がなかった。 「彼女は役柄によって、全然違う見え方をする。なぜか門脇麦が出ていると、普段はあまり観ない日本映画を観に行っちゃうんです」  今回取材したクリエーターたちが異口同音に言う言葉だ。「気になって仕方がない」「また一緒に仕事したくなる」、そして「いつも、顔が違う」。  たしかに門脇には「キメ顔」がない。初めてスクリーンで見たときからずっとそう感じていた。黒目がちの瞳も、予想外に透き通った可愛らしい声も、個性的で強い印象を残すのに、作品によって角度によって顔が違う。実際、左右で顔の骨格が違うのだ、と門脇は笑う。 「自分がこう映りたい、とかがないんです。あんまり鏡も見ない。もちろんコンプレックスはたくさんありますよ。もっと可愛くなんないかなあって。でもバレエをやっていたとき、足の甲が出ていなかったので、出すためにめちゃくちゃ練習したら『足の甲がキレイだね』と褒められるようになった。その経験からも、それはそれ、と思って努力すれば、何かしらカバーされるのは実証済みなんです」  受け答えは快活で的確。一介の取材記者にも胸襟を開いてくれるような錯覚に陥る。でも人に触れさせない“絶対領域”の強度も人一倍堅そうだ。 「止められるか、俺たちを」の監督・白石和彌(45)は「二重生活」の監督・岸善幸と一晩中「門脇麦のどこがいいのか」を語り合った、と笑う。そんな俳優は、そういるものではない。なぜ、こんなにも彼女に惹(ひ)きつけられるのか。  門脇は1992年、ニューヨークで生まれた。株関係の仕事をしていた父(56)の転勤のためだ。アウトドア好きの両親は「まっすぐに育つように」との意味を込めて「麦」と名付けた。4年後に弟が生まれるまで、ニューヨークで暮らした。「自分だけ違う色」ということを子どもながらに感じていたという。そしていつも何かに我慢していた。  強烈に残っている記憶がある。4歳のときだ。弟の出産で母が入院し、門脇は友人の家に預けられた。初めて親と離れて、不安でいっぱいだった。 「生まれたよと父が迎えに来てくれて、病室に行ったんです。母は『麦、さみしくさせてごめんね。おいで』と言ってくれた。でも私はヘンに強がっちゃって『行かない』って。入り口で微動だにしないので、父が仕方なく連れて帰ろうとエレベーターに乗せた。扉が閉まったとたんに、号泣したらしいです。そういう感じは、いまも変わっていない気がします」  帰国後に始めたバレエも門脇の素地を作った。我慢強く、負けず嫌い。努力でできなかったことができるようになる快感を知るいっぽうで「生まれ持った素質が人よりマイナスだ」ということには薄々気づいていた。 「私、猿手で腕が外側に曲がっているんです。膝もまっすぐではない。きれいに見せるために人よりも余計な力を入れる必要があった」  それでも小学生時代、バレエ漬けの日々は充実していた。先生から注意されるたび、それをノートに書き出し、方法を探った。同じことを注意されるのは非効率的。文章にすることで、どう改善すればいいかがわかりやすくなる。いまでも「効率重視」で「思考型」だと自分を分析する。  だが中学に上がると、どんなに努力をしても、残酷なくらいに差は歴然としてくる。  14歳のとき、バレエの道を諦めた。熱中するものを失い、混迷の青春時代が始まる。学校でもどこか満たされず、人と深い関係になることができない。恋愛もまったくしてこなかった。(文/中村千晶) ※記事の続きは「AERA 2020年1月13日号」でご覧いただけます。
現代の肖像
AERA 2020/01/06 16:00
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矢部万紀子 矢部万紀子
「愛子帝と芦田愛菜首相がタッグ」 SNSで話題のファンタジー小説が持つ「切実さ」とは
芦田愛菜さんは「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で若い世代を代表し、しっかりとした言葉で祝辞を述べた/11月9日、東京都千代田区で(写真:宮内庁提供)  令和に入り「愛子天皇待望論」が盛り上がっている。愛子さまへの期待は、どこから来るのか。SNSを中心に話題になったファンタジー小説や、日本のジェンダーギャップ指数から読み解く。AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号に掲載された記事を紹介する。 *  *  *  12月7日の「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)は、芦田愛菜さん(15)のニュース映像から始まった。1カ月前、天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」でお祝いを述べる振り袖姿の映像だった。  芦田さんは、「私も大好きな読書を通じ、知識を得ること(略)が大切であるのではないかと考えるようになりました」と述べていた。サンドウィッチマンの伊達みきおさん(45)が、スタジオで芦田さんにこう言った。 「すごいすごいって知ってたけど、やっぱりすごいんだなー」  そう、芦田さんはすごい。そこから、愛子さま(18)について書いていく。  まずは、芦田さんの未来を「日本初の女性首相」と予測した小説を紹介する。タイトルは「AAゴールデンエイジ」、KADOKAWAとはてなが運営する小説投稿サイト「カクヨム」で読める。2019年3月に公開され、SNSを中心に話題になった。冒頭を引用する。 <結局、日本初の女性首相の座を射止めたのは芦田愛菜だった。初の女性であるばかりでなく、憲政史上最年少での就任だった。  平成が終わり、さらに愛機(ラブマシーン)がわずか12年で終わり、愛子帝の請振(ギミギミシェイク)が始まった。ギミギミシェイク13年、西暦2043年に芦田愛菜は39歳で首相に就任し、現在は3期目の7年目、46歳である(ギミギミシェイク20年、西暦2050年)>  おわかりいただけると思うが、タイトルの<AA>は<Aiko&Ashida>だ。即位した愛子さまは「帝」と表現される。愛子帝と芦田首相をいただく30年後の日本を描いた、カクヨムの分類によれば「現代ファンタジー」。  作者は「OjohmbonX」とあり、SNSでたどると「ふつうの会社員(34)」だという。興味のある方はご一読いただきたい。どのように代替わりし、当事者がどう感じたか。手続き面も心情も、制度やその問題点と照らし合わせて、実に説得力がある。冷静に皇室制度を見つめている。  同時にこの小説の説得力を増しているのが、日本と世界を見る目も冷静だということ。この国の行方を、限りなく悲観的にとらえている。  2050年、世界は「資本と国家と民族の軋轢(あつれき)が限界に」達している。日本は「国際情勢の綱渡りをかろうじてやりきったとしても国内の経済的な豊かさには結び付かない。せいぜい『ひどい悪化を回避する』ことにはなっても、『良くなる』ことにはならない」状況だ。  その中で唯一、否、唯二、輝きを放っているのが愛子帝と芦田首相だ。その輝きを私なりに表現すると、「度外れて優秀」&「解を持っている」だと思う。2人はクールでありながら、動じず、ことを進めていく。  そこでの芦田さんは慶應大学からカリフォルニア大学バークリー校に進み、中東専門の政治研究者から政治家になる。3歳上の愛子帝とは、カジュアルな言葉で本質を語り合う仲だ。一方の愛子帝は都市工学、中でも都市計画史を専門とし、博士号をとっている。英仏独伊西語に加え、中国語、韓国語、タイ語に精通している。  現実の「AA」を知っているから、リアルな設定に思える。言うまでもなく愛子さまの母である皇后雅子さま(56)は、ハーバード大学→東大→外務省という華麗な経歴の持ち主だ。その娘が優秀でないはずがないと、誰もが思う。芦田さんは、これも言うまでもないが天才子役で、読書家としても有名な慶應中等部3年生。四谷大塚によると女子の場合、「偏差値70」で慶應中等部の合格率80%だという。  週刊誌「女性セブン」は愛子さまの偏差値を「72」としている。7月11日号「愛子さま『東大かオックスフォード大か』偏差値72の選択肢」が報じている。学習院女子高等科の文系クラスで、成績は常にトップクラス。同科からは毎年、東大に進む生徒もいる(18年度は学年で3人)。そこから「偏差値は70から72ほど」と進学塾関係者が類推している。(コラムニスト・矢部万紀子) ※AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号より抜粋
皇室
AERA 2020/01/06 11:30
「一緒に笑えば共犯者になる」 上野千鶴子が語る、東大に残る性差別とは
「一緒に笑えば共犯者になる」 上野千鶴子が語る、東大に残る性差別とは
上野千鶴子(うえの・ちづこ)名誉教授=1977年京都大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程修了。博士(社会学)。95年から11年まで東京大学人文社会系研究科教授。11年から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長(撮影/東京大学新聞社・原田怜於) いずれの年度でも、職階が上がるにつれ、女性比率が下がっていることが分かる(東京大学新聞社提供) 「大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです」。そう喝破し、東大に未だ残存するジェンダーの問題をえぐり出した本年度の学部入学式の祝辞は、学内外で大きな議論を呼んだ。来たる2020年、東大が取るべき行動とは。祝辞を述べた上野千鶴子名誉教授に話を聞いた。※東大新聞オンラインより転載 * * * ●入試改革とクオータ制で女性比率向上へ ――東大のジェンダーを巡る問題の根底には、学生や教員のいびつな男女比率があります。しかし、男女比の是正が必要とされる根拠が、学内で共有されていません  男女平等の達成に合意がないなんて、開いた口がふさがりません。  第一に、偏った比率は日本の女性差別を反映しており、それ自体が不公正だからです。統計的に見ると、日本全体の女性の大学進学率は著しく伸びており、経済協力開発機構(OECD)諸国においても18歳以上の高等教育進学率は女性が優位です。そうした状況が東大生の男女比に当てはまらないということは、統計的に見てそこに間接差別があることを意味しています。  第二に、女性が増えると異質な視点が生まれ、あらゆる学問分野が活性化します。人文社会科学や生命科学は確実に変わります。工学系の女性研究者も、アジェンダ設定と方法が変わると言っていました。 ――女子学生増加に向けた施策も効果が見られません  クオータ制よりも選抜方法を変更すれば効果が生まれるでしょう。思い切って定員の3割をAO入試で選抜すれば良い。選抜方法を変えると結果として女子比率が上がることは、他大学の例が示しています。もしくは、過渡的に定員の3割を女子枠にしても良いでしょう。女子枠を設けることで入学してくる女子の成績が下がるとは思えません。  執行部は、一般入試の合格者がAO入試で入学した学生をバカにするのではないかと懸念しているようですね。実際、90年代後半に工学部で女子枠の創設が提案された際、真っ先に反対したのは工学部女子でした。入学から死ぬまで、東大男子に「キミ、女子枠で入ったんだって」と言われるからと。  単一の競争原理で勝ち組になった学生は、その原理を変化させたくないと思うのでしょう。こういう同質性の高い集団を選抜し続ければ東大の活力が下がる一方。彼らに迎合して施策をためらう必要はありません。多元的な選抜原理があることは良いことです。  米国の場合、私学ですら、人種、性別、出身地のバランスに相当配慮して選抜している。日本国内でも、生き残りのかかる地方大は積極的で、例えば島根大では、AO入試や推薦入試など、一般入試以外が定員の約4分の1を占め、将来的には4割を目指すそうです。 ――教員の採用はどのように変えるべきでしょうか  こちらもクオータ制が一案ですが、それだけでなく選考過程を変えれば効果が生まれるでしょう。人事の透明性と公開性を高めれば女性が増えることは、経験的に知られています。  現状、東大の人事のほとんどは密室人事。ホモソーシャルな集団で師弟関係による縮小再生産が行われているのでしょう。公募なら、海外で学位を取った女性が多数応募してくるため、学位のない東大出身者の競争力はおのずと落ち、より多くの他大学出身者が採用されるでしょう。アイビーリーグ(米国東部の名門大学グループ)では、自校出身者を教員に採用しないという慣行によって研究者の流動性が高まり、多様な人材が取り込まれるようになっています。  その過程で、期間限定でクオータ制を採用すべきだと思います。導入により研究水準が低下するという批判には根拠がありません。むしろ、一度東大の理工系で女性限定の公募をした際、こんな人がどこにいたのかというくらい優秀な人が応募してきたと聞きました。男性と競合せずにすむ分、応募の際に遠慮や萎縮の必要がなくなるのでしょう。  女性教員が、クオータ制で採用されたことを理由に男性から嫌がらせを受ける場合もあるそうですが、男性のつまらないプライドにいちいちひるんでいては非常に近視眼的。人事で評価するのは、それまでの業績よりもその先の伸びしろ。採用された後に、准教授、教授と一つ一つ昇進基準を満たし、長い目で業績を判断してもらえば良いでしょう。事実同一ポストにある女性研究者は、同じ条件の男性研究者より業績が多いというデータもあります。 ●既得権益からの脱却に向けて ――学生の間で意識を高めるには何が必要でしょう  データを見れば、バイアスははっきりしていますが、学生は事実を知りません。半径3mの狭い空間で過ごしていては、問題意識が生じないのも当然でしょう。  東大女子を排除したサークルに在学中所属した男子卒業生に会いました。自分のサークルに疑問を持たなかったかと聞いたら、4年間エンジョイして楽しいことだらけだったと言っていました。東大女子もまた、その希少価値ゆえにモテやすかったり、男女の枠があるときに男子より有利だったりします。男子が長年上げ底を経験してきたのだから、女子だってたまには希少価値を味わっても良いでしょう。ですが周囲に女性が少ないのはどこかで意欲を冷却されてきた女子たちがいるからだという想像力を欠いてはなりません。  こうした既得権益を享受している学生は、それが不正だと認識しない限り意識を変えないでしょう。今春、男女共同参画室長の松木則夫理事・副学長が東大女子を排除するテニスサークルに関する声明を出しましたが、その後何か変化がありましたか。私的な団体が何をしようと自由ですが、大学は公共空間である以上、大学のテニスコートの利用や部室の使用など、社会的に容認できない差別を行っている集団への便益の提供をやめるべきでしょう。 ――被害に遭っても告発しづらい空気があります  被害者が声を上げにくい雰囲気があるだけでなく、傍観者もその場で沈黙すれば、ジェンダーの再生産に加担することになります。沈黙を破る責任は、その場に居合わせた全ての人が負っています。工学部の男性教員が院生の集まりで「女は子どもを産むとバカになる」と発言した際、男子院生が「先生、それはないでしょう」とその場で言ったと聞きました。そのような発言で雰囲気は変わります。ジェンダーはその時その場で再生産される抑圧的な構造です。一緒に笑えば、共犯者になります。親しい間柄でも、その時その場で言うことが大切です。  こうした場で波風を立てたくないという心理が働くのは、東大が同調性のすこぶる高い人材を選抜してきた結果でしょう。長年、東大を含む国立大は、問いに対して唯一の正解を出す指示に忠実な人材を選抜し、入試では学力という一元尺度における公平性だけを重視してきました。現在の日本の高等教育では、残念ながら、祝辞で述べた「メタ知識(新たな知を生み出す知)」を身に付けた人材を育成することは難しいでしょう。 (文/東京大学新聞社・山口岳大)
東大新聞オンライン 2020/01/06 08:00
東京五輪で新たに採用されたスケートボード 「パーク」と「ストリート」の違いは?
東京五輪で新たに採用されたスケートボード 「パーク」と「ストリート」の違いは?
東京五輪で輝け! 岡本碧優選手/2006年、愛知県生まれ。兄の影響で小2から競技を始め、18年に小6(12歳)で世界選手権女子パークの5位に入賞。その後、親元を離れて岐阜市のコーチの家に下宿しながら指導を受け、19年の世界選手権では優勝を果たした(写真/gettyimages) 東京五輪で輝け! 堀米雄斗選手/1999年、東京都生まれ。父の影響で6歳から競技を始め、2014、15年と日本で年間グランドチャンピオンに。高校卒業後、本場アメリカに渡り、18年、世界最高峰のリーグ戦で史上2人目となる3戦全勝を達成(写真/gettyimages)  話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』では、毎号、一つのスポーツを取り上げて、やっても見ても楽しくなるうんちく(深~い知識)を紹介するよ。1月号では、スケートボードを取り上げました。 *  *  * 【競技の内容】  前後に車輪がついたボードに乗り、トリック(技)の難易度やスピード、演技構成などを競う採点競技。2020年の東京五輪で新たに採用され、「パーク」と「ストリート」の2種目を男女別に実施する。 【スケートボードのうんちく5連発】 (1)アメリカの街中で生まれた  スケートボードは、1940年代にアメリカ西海岸で、木の板に鉄の車輪をつけて滑った遊びが始まりといわれ、80~90年代に若者たちの間に広まった。競技スポーツとして発展した一方で、音楽やファッションと結びついた文化としても愛されている。 (2)斜面を複雑に組み合わせたコースを滑る「パーク」 「パーク」は、お椀やお皿をいくつも組み合わせたようなコースで行われる。斜面を一気に駆け上がり、空中で繰り出されるトリックが見どころ。ボードを手でつかむ「グラブ」のほか、ボードを回転させたり、選手自身が回ったりと、美しくてスリリングなトリックを競う。 (3)手すりや階段を滑る「ストリート」 「ストリート」は、階段(ステア)、手すり(ハンドレール)、ベンチや坂道などを模した構造物(セクション)が置かれた、街中を滑るようなコースで行われる。ボードの腹の部分を直接構造物にあてて滑らせる「スライド」や、ボードが足に吸いつくトリックなど、さまざまなテクニックが見どころ。 (4)日本の若手が世界上位に!  パークもストリートも、日本の選手たちが世界の舞台で大活躍。特に女子パークは、中1の岡本碧優(おかもとみすぐ)選手のほか、さらに若い小5の開心那(ひらきここな)選手ら日本の10代の選手4人が、上位10位以内に名を連ねている。 (5)スノボの強豪選手も参戦予定!  冬季五輪のスノーボード男子ハーフパイプで2大会連続銀メダルの平野歩夢選手が、スケートボードの男子パークでも五輪出場を目指しているという。2019年5月の日本選手権に初出場で優勝した。冬季五輪同種目の金メダリスト、ショーン・ホワイト選手(アメリカ)も同じく“二刀流”で同種目に挑戦しており、対決が楽しみだ。 ※月刊ジュニアエラ 2020年1月号より
ジュニアエラ朝日新聞出版の本読書
AERA with Kids+ 2020/01/05 11:30
専門家絶賛の『その女、ジルバ』 有間しのぶが明かすタイトル秘話
専門家絶賛の『その女、ジルバ』 有間しのぶが明かすタイトル秘話
手塚治虫文化賞の贈呈式会場に展示された有間しのぶさんのイラスト。右端の一枚は作中に登場する“ジルバママ” 「月刊コミックビーム」で始まる有間しのぶさんの新連載『伽(とぎ)と遊撃』予告カット 有間しのぶさんのサイン入りパネル。両手に花束を持っているのが主人公”アララ”こと笛吹新 『その女、ジルバ』の第1巻の書影 手塚治虫文化賞のロゴマーク  2019年を振り返ると、いろいろな小説や漫画などが話題になった。今回紹介したいのは19年6月に第23回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞し、専門家も絶賛した傑作『その女、ジルバ』(有間しのぶ、小学館、全5巻)。 「笑えて、泣ける」 「何度も読み返したくなる」  2018年に完結した作品だが、単行本は売れ続けていて、こんな感想がネット上でいまも書き込まれている。  タイトル名からは内容をすぐには想像しにくいが、現在の日本を舞台に戦中戦後の日本やブラジルとも地続きの女性たちの人生を描く。作者の有間さんが本誌に寄せてくれたコメントなどをもとに、魅力を探っていこう。  物語は、電車内で主人公の女性が回想しているシーンから始まる。 「先月で40歳になった――」 「何も持たないままとうとうこんな年齢に」  彼氏なし、閑職の笛吹新(うすいあらた)は、人生に疑問や不安を感じている。仕事帰りにホステス募集の求人広告を偶然見つけ、飛び込んだお店には元ダンサーの高齢女性がそろっていた。新米ホステス「アララ」として働き始めた主人公は、先輩たちが語る店の歴史や、ブラジルの日系移民だった初代ママ「ジルバ」の壮絶な人生に触れる。やがて、自分を見つめ直し、新たな人生を歩み始める――。こんな壮大なストーリーで、2011年から7年間にわたり、「ビッグコミックオリジナル増刊号」に連載された。  手塚治虫文化賞の選考委員は次のように高く評価している。 「ほんわかとした絵柄で老人たちが織りなすコメディーで始まり、壮大な国境を超えた戦争の歴史に差しかかっていく。それでいて5巻という凝縮された内容」(女優の杏さん) 「人と人とのつながりを丁寧に描いている。その丁寧さを生み出しているのは作者の誠実で優しい視線だ。背景に戦争があり、国策があり、戦後の社会の混乱とエネルギーがあり、『今』の大切さを愛(いと)おしむ人々が織りなす絆と命のドラマだ」(漫画家の里中満智子さん)  最も優れた作品に贈られるマンガ大賞に選ばれたことを、有間さんはこう喜ぶ。 「子供の頃から手塚治虫作品がリアルタイムの連載で身近にたくさんある、とても幸せな環境でした。好きな作品は数え切れなくて、その名を冠した賞をいただけて夢のようです。手塚作品は何度読み返しても本当に面白くて、キャラクターは生き生きして色っぽい。生きている間にこんな表現に近づけたらと思います。賞をいただけて、どんな話でも物語になり、読んでもらうことができるのだと、帆に風を受けた気持ちです。描きたい、書きたい話はたくさんあるので、これからも表現し続けていきたい」  壮大なストーリーだが、どの作品でもテーマは設定せずに描き始めるという有間さん。 「最初に描きたい主人公が浮かび、その主人公の言うことやすることを追ううちに、ストーリーができていく流れで作っています。描いていて自然に出てきたものと、読み手が自由に感じたものが合わさって、テーマになっていく気がします。その意味で、中高年にさしかかった主人公が年配の女性たちの体験談を聞きながら、もう一度自分を肯定していくという流れが、この話のテーマになったと、今になって思います」  気になるタイトル名だが、「ジルバ」はもともと軽快な音楽に乗って踊る社交ダンスの一種。それにつながったのは、ちょっと発音が似た「ゾルバ」だったという。 「タイトル自体は10年くらい前に思いついて、寝かせてありました。好きな語句を書き留めたり言葉遊びをしたりするのが好きなのですが、ある日ふとギリシャの小説とその映画『その男ゾルバ』が頭をよぎり、『このタイトルかっこいいな、もじるとしたら、その女……そうだ、ジルバはどうだろう』と、漠然と考えたのがおおもとです」  ちなみに映画「その男ゾルバ」(1964年)はギリシャのクレタ島を舞台にした“人間賛歌”ともいえる作品。何があってもへこたれずに生きる主人公の姿は、『その女、ジルバ』に重なるところも感じられる。  有間さんは女子高生の時にデビューし、4コマ、ギャグ、BLなど幅広いジャンルを手がけてきた。この作品にもギャグなど様々な要素がちりばめられているが、通底しているのは綿密な取材に裏打ちされた骨太のストーリー。出身地の福島を含め各地をまわり、ブラジルの日系移民の関係者からも話を聞いた。 「意識的にではなかったのですが、それまでになく人に取材しては描く話だったので、自然に作風が決まっていきました。ギャグはもっと入れたかったですね。全編ギャグの回も描いてみたかったです」  有間さんは「月刊コミックビーム」(KADOKAWA)の2020年2月号(1月11日発売)から、近未来ファンタジーの新連載『伽(とぎ)と遊撃』を始める。国籍、言語が統一され、コミュニケーション能力が非常に重視される一方で、「物語」「創作」「空想」が粛正された世界が舞台だ。  新作への期待も高まるなか、「笑って、泣かされる」この代表作を読む読者が増えそうだ。(本誌・緒方麦) ※週刊朝日オンライン限定記事
週刊朝日 2020/01/05 08:00
AERA本誌が厳選 正月休み中にどっぷり浸りたい海外ドラマ30作
AERA本誌が厳選 正月休み中にどっぷり浸りたい海外ドラマ30作
AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号より  良作が続々と増える海外ドラマ。2020年の正月休みにじっくり楽しみたい作品を4つのテーマ別に紹介する。【N】=Netflixオリジナルシリーズ独占配信またはNetflix映画独占配信、(N)=Netflixで配信、【A】=Amazon Prime Video独占配信、(A)=Amazon Prime Videoで配信、(H)=Huluで配信、(S)=スターチャンネルEX−DRAMA&CLASSICS−(Amazon Prime Videoチャンネル)で配信。 ※配信情報は2019年12月23日時点のものです。 *  *  * ●明るい未来の予感! 「セックス・エデュケーション」 MeToo時代ならではの、過激だけど「政治的に正しい」学園ドラマ。「X−ファイル」のジリアン・アンダーソンがセックスセラピストにしてぶっとんだ母親役を怪演。【N】 「モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~」 ニューヨーク・タイムズの恋愛コラムから着想された胸キュンドラマ集。1話約30分で現代人の愛の奇跡を描ききる。ほっこりできます。【A】 「アンビリーバブル たった1つの真実」 ていねいな捜査に見事な部下さばき。担当女性刑事の仕事ぶりに勇気づけられる。卑劣なレイプ事件の話なのに後味がさわやかなバディーもの。【N】 「コミンスキー・メソッド」 マイケル・ダグラス演じる老演劇コーチと親友が健康や老いと性愛、親族問題をめぐってぶっちゃけトーク。人生100年時代が怖くなくなるコメディー。【N】シーズン1~2 ~これもオススメ!~ 良質の人間ドラマなら「THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから」(A)や「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」【N】など。「グレイス&フランキー」【N】はシニアコメディーの女性版 ●2019年の話題作 「ゲーム・オブ・スローンズ」 王国の玉座をめぐり、18禁ギリギリの激しい戦いが繰り広げられる。2019年春に最終章を迎え、全世界同時配信という大事件に。(H)シーズン1~8、(A)シーズン1~7、(S)シーズン8 「ザ・クラウン」 「ダウントン・アビー」好きは必見! エリザベス女王の生涯を描く大作ドラマ。バッキンガム宮殿や豪華衣装も忠実に再現。シリーズ継続中。【N】シーズン1~3 「Fleabag フリーバッグ」 皮肉なアラサー・ロンドン女子が主人公の新世代コメディー。制作・主演のP・W=ブリッジはテレビ各賞を総なめにし、19年の「時の人」に。【A】シーズン1~2 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」 「E.T.」「グーニーズ」の1980年代感覚あふれる超常現象ホラー。シーズンを追うごとに謎と陰謀が深まっていく。ウィノナ・ライダーが母親役で出演。【N】シーズン1~3 ~これもオススメ!~ 癒やされ必至の「クィア・アイ in Japan!」【N】。「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」【N】は新感覚女子コメディーのニューヨーク版。原発事故を迫真ドラマ化した「チェルノブイリ」(S)も話題になった ●クライム&サスペンス 「トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン」 CIAアクションものの超定番。主人公のジャックは、テロリスト・マネーを追って中東、ヨーロッパへと飛ぶ。意外と勉強になるうえに、かっこいい。【A】シーズン1~2 「ボディガード─守るべきもの─」 PTSDに悩むアフガン帰還兵が閣僚の警護につくと……。全編に緊張感みなぎる政治スリラー。BBCで放送され、ここ10年での最高視聴率を記録した。【N】 「マインドハンター」 鬼才デヴィッド・フィンチャーが総指揮。70年代にFBI分析官が殺人鬼のプロファイリング法を確立する奮闘を描く。スローに始まる展開は配信系ならでは。【N】シーズン1~2 「クリミナル:イギリス編」 取調室での容疑者と刑事の息詰まる攻防戦はまるで舞台劇さながら。同じ設定で英、仏、独、スペイン編があるのも配信系の醍醐味。1話完結。【N】 ~これもオススメ!~ 傑作の宝庫! 「FARGO/ファーゴ」(N、A、H)、「TRUE DETECTIVE」シリーズ(A、S)、「サバイバー:宿命の大統領」【N】、「アメリカン・クライム・ストーリー」(N)、「ピーキー・ブラインダーズ」【N】など ●新感覚ドキュメンタリー 「天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する」 卓越した知性と富を手に、なぜゲイツはポリオ撲滅、安全な原発開発に乗り出したのか。仕事術・読書術も伝授され、思わずひれ伏したくなる全3話。【N】 「グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル」 トランプ大統領を誕生させ、EU離脱を導いたのはコンサル会社のSNS操作だった! SNSの闇にうごめく嘘のような本当の話がスリル満点に暴かれる。【N】 「FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー」 インスタ映え時代の稀代のペテン師か、不運なだけの天才広告師か。豪華音楽フェスの仕掛け人は何者? 史上最高のパーティーが大炎上していく様を関係者証言でたどる97分。【N】 「HOMECOMING:ビヨンセ・ライブ作品」 黒人女性として初めて音楽フェス「コーチェラ」のヘッドライナーを務めたビヨンセ。音楽だけでなく、その政治性、仕事人・家庭人としての姿をも追う。【N】 ~これもオススメ!~ 多ジャンルでお宝あり。「オール・オア・ナッシング」シリーズ【A】、「サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ」(H)、グルメ哲学「シェフのテーブル」【N】など ※AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号
ドラマ
AERA 2020/01/01 11:30
ヒートアップする「愛子天皇待望論」 なぜ今たくましい女性リーダーが求められるのか?
矢部万紀子 矢部万紀子
ヒートアップする「愛子天皇待望論」 なぜ今たくましい女性リーダーが求められるのか?
18歳を迎えた愛子さまは、即位に伴う一連の儀式に深い関心を寄せていたという/11月25日、赤坂御所で(写真:宮内庁提供)  芦田愛菜さんを日本初の女性首相、愛子さまを女性初の天皇として描いた現代ファンタジー小説「AAゴールデンエイジ」。KADOKAWAとはてなが運営する小説投稿サイト「カクヨム」で公開され、SNSを中心に話題になった。日本国民が今、「たくましい女性リーダー」を求める背景を読み解く。 *  *  *  令和に入り「愛子天皇待望論」が盛り上がっている。朝日新聞社が19年4月に発表した全国世論調査では76%が「女性も天皇になれるようにした方がよい」と答えていたが、10月に共同通信社が発表した世論調査では「女性天皇を認めることに賛成」が81.9%。前述の女性セブンの記事には、「皇室ジャーナリスト」のこんな発言も紹介されている。 <女性天皇容認の機運が高まる背景には、愛子さまの自然な笑顔や気品のある立ち居振る舞いが影響していることは間違いない>  確かに19年の夏、栃木・那須での静養前に報道陣の前に現れた愛子さまは落ち着いていて愛らしく、今どきの女子高生とはまるで違った。その様子は、令和になってからの雅子さまと大いに重なった。初の国賓・トランプ大統領夫妻を前にした雅子さまは、落ち着きはらい優しさがあふれていた。  だからだろうか、「愛子天皇待望論」はヒートアップする一方だ。そこでの愛子さまは、「人望があり、英語が得意で運動神経抜群で、チェロの腕前は音大進学を狙えるレベル」。少しはしゃぎ過ぎとも思えるほどだ。  慶應中等部に通う芦田さんが国民祭典で堂々とお祝いを述べるのを見れば、将来首相になってもおかしくないと思う。愛子さまへの期待もそれと同じで、楽しい夢想というところだろう。そう思う一方で、それだけでは済まない切実さがあるようにも感じ、それはどこから来るのだろうと思っていた。  12月17日、日本のジェンダーギャップが明らかになった。世界経済フォーラムの19年の報告書で、世界121位だった。主要7カ国で最下位は定位置だが、過去最低順位を更新したそうだ。またIMF統計によると、日本の18年の1人当たり名目GDPは前年より一つ下げて26位。「もはや先進国ではない」という議論をしばしば目にする。二つの数字を重ねると、「男に任せているうちに、どんどんダメになった日本」となる。 「AAゴールデンエイジ」を読み、これらの数字を見る。だから愛子さまに期待が集まるのだな、と思う。男性はあてにならない。女性なら救ってくれるかもしれない。行き詰まった日本にあって、そう考える人が増えても不思議ではない。若い世代に目をやれば、日本には愛子さまがいるではないか。そんな気持ちが「愛子天皇待望論」を切実なものにしているのではないだろうか。 「AAゴールデンエイジ」の芦田首相は英語、アラブ語、ペルシャ語、トルコ語を駆使する。「混沌(こんとん)」を明快な言葉で解きほぐし、落とし所を探り当て、キーパーソンへ働きかける。そして愛子帝は徹頭徹尾「肝の据わった人」だ。内親王時代、皇室会議で首相から「あなたが皇位を継承する可能性について、どう思われるか」と聞かれ、「そのようになれば、そういたします」とサラリと答える。 「AAゴールデンエイジ」と「愛子天皇待望論」は、今の日本に足りないものを示している。それは「解」を持つ「肝の据わった人」。愛子さまは優秀な母を持ち、生まれた時から父である陛下(59)のもとで帝王学を学んでいる。愛子さまへの視線の熱さは、不足の深刻さの裏返しだ。  現実を見れば、楽観はとてもできない。主たる支持者ばかりを意識し、安定的な皇位継承という問題に一向に手をつけない安倍政権。「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の付帯決議で指摘された「女性宮家」の検討さえ先延ばしにしている。そして現実の皇室には、皇嗣である秋篠宮家で皇位継承順位2位の悠仁さま(13)が育っている複雑さ。「愛子天皇待望論」だけでは、「解」にならない。  令和になり愛子さまは、ご両親が臨んだ代替わりの儀式を熱心に見たという。18歳の少女に「解」を求める日本の重苦しさ。愛子さまが「愛子帝」のようにたくましい人であるといいのだけれど。僭越(せんえつ)ながら、そんなことを思っている。(コラムニスト・矢部万紀子) ※AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号より抜粋
皇室
AERA 2020/01/01 08:00
紀子さま友人が明かす 秋篠宮家“大批判”の真相【2019年ベスト20 5月24日】
永井貴子 永井貴子
紀子さま友人が明かす 秋篠宮家“大批判”の真相【2019年ベスト20 5月24日】
秋篠宮ご夫妻 (c)朝日新聞社 秋篠宮ご一家 (c)朝日新聞社  2019年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で読まれた記事ベスト20を振り返る。  2位に輝いたのは「紀子さま友人が明かす 秋篠宮家“大批判”の真相」。長女、眞子様のご結婚問題や、悠仁様の学校生活などで何かと噂の絶えない秋篠宮家。週刊朝日の皇室記者が、その“噂の真相”をばっさり切った。 *  *  *  週刊誌やネットで秋篠宮家バッシングがエスカレートしている。「早く天皇をやりたいという『秋篠宮の乱』」「紀子妃がのんきに旅行」「悠仁さまには友人がいない」……。一体、どこからそんな情報が流れているのか。紀子さまの長年の友人が真相を語った。 *  *  *  秋篠宮妃紀子さまの長年の友人である女性は、今月中旬に発売された女性週刊誌の記事を見て驚いた。 <紀子さま「悠仁さま刃物事件」から長野スキーへ直行!の慄然> <紀子さま 母子スキー旅行を初日で切り上げ 急きょ帰京の戦慄>  お茶の水女子大学付属中学校で、秋篠宮家の長男、悠仁さまの机に刃物2本が置かれる事件が起きた4月26日に、紀子さまと悠仁さまが長野県にスキー旅行に出かけたという記事だった。 「この代替わりの大切な時期に泊まりがけで東京を離れることが軽率であり、事件が発生して犯人も逮捕されていない危険な状態であるのにいかがなものか」と「紀子さま批判」を展開した記事もあった。  しかし、実際の話は違う。  事件当時、悠仁さまの学級は体育の授業で教室は無人だった。戻ってきた生徒らは、誰かのいたずらではないかと考え、学校側も犯罪とは認識していなかった。そのため、大きな騒ぎとはならず、この日の夕方、悠仁さまは長野県への「ひとり旅」に出かけた。宮内庁が事態を把握したのは翌27日朝。連絡を受けた悠仁さまは旅行を中止して、この日帰京した。  これが事件発生後からの大まかな流れだ。女性週刊誌の記事は、誤った情報をもとに作られたとみられる。  冒頭の友人女性は当惑の表情を浮かべ、「そもそも、当初から悠仁さま単独の旅行と決まっていたのです。4月末から5月初めは代替わりに伴う儀式や行事が控えており、紀子さまは、『この大切な時期ですから、私は一緒に行くことはできない』と言っていたのに……」と話す。  もちろん「ひとり旅」には護衛も、付き添った大人もいる。友人女性が続ける。 「旅行の目的もスキーではなかった。ご両親は、自分たちは公務で忙しいが、12歳の悠仁さまには、自然と触れ合い、土地の風土を肌で感じ、情緒を育む経験を積んでほしい、というお気持ちでした」  刃物事件での秋篠宮家批判は、さらに続いた。女性誌以外の一部の週刊誌では、上皇后となった美智子さまが、公人としてクラスメートや保護者、学校などに迷惑をかけたのだから秋篠宮夫妻がお詫びすべきだと考え、上皇さまも同意見だったが、「秋篠宮さまは『大騒ぎする話ではない』『悠仁が悪いことをしたのでもないのに』と、(謝罪の)コメント発表は見送られた」と書かれている。  この点について上皇ご夫妻に仕える宮内庁幹部は、「ご家族間でそのようなやりとりがあったのか、真実はご本人方にしかわからない。しかし、上皇、上皇后両陛下が秋篠宮家の問題に口を挟まれるかどうか……」と首をかしげる。先の友人女性も話す。 「紀子さまとこの件を話題にしていないので、真実はわかりません。しかし、個人的には、ありえない話と感じます。紀子さまは、事件直後から学校の生徒や保護者が不安に陥っていないか、自分たちの言動で事件に関して学校関係者などが責められたり、傷ついたりすることはないか、と気にかけてきました。秋篠宮さまも、一つひとつにお考えがあって、言動をなさる方です」  秋篠宮家に対する批判は、宮内庁職員やスタッフの紀子さまへの不満という形で数年前から、少しずつ報じられてきた。本誌でも、「秋篠宮邸で働くのはきつい」と、職員が口にしているのを聞いており、他にもそうした声が宮内庁内で出ているのは確かだ。  だが、ここ数カ月は、秋篠宮家への批判が目に見えて過激になり、さらにエスカレートしている。  秋篠宮さまが、昨年11月の誕生日の会見で、天皇の代替わりに伴う大嘗祭は宗教色が強いことから、皇室の「私費」にあたる「内廷会計」で賄うべきだと発言した際も、「(宮内庁長官らが)聞く耳を持たなかった」と強い表現を使ったことから、批判を受けた。 「兄が80歳のとき、私は70代半ば。それからはできないです」  今年4月に朝日新聞が、高齢で即位する難しさを指摘した秋篠宮さまの言葉を掲載した。すると、新天皇に対する「早期退位勧告」と一部の週刊誌で曲解され、ネット上でも同様の分析が拡散された。  秋篠宮さまは、意に沿わない形で解釈されたことに、戸惑っていたという。  秋篠宮さまと親しい、国立科学博物館館長の林良博氏は、エスカレートする秋篠宮家への批判にいら立ちを隠さない。 「秋篠宮さまは、ご自身の立場をわきまえる、節度のある方です。お兄さまの新天皇陛下とも非常に仲の良いご兄弟で、陛下を支える役目に徹しておられるのは間違いありません。ご兄弟で争う、などとうがった報道は、非常に腹立たしい」  元宮内庁職員の山下晋司氏は、「眞子内親王殿下と小室圭さんのご結婚問題が、秋篠宮家への批判の口火となったのは明らかです」と話す。  重ねて、勤務先の奥野総合法律事務所が生活費を支援しての米フォーダム大学への留学や、大学が小室さんの入学を「プリンセス・マコの婚約者」とホームページで紹介し、学費の全額免除という奨学金を支給したことなど、小室さんが眞子さまとの関係から特別扱いされたのではという待遇の不透明さなどに世間の不信感が募った。  秋篠宮さまは、昨年の誕生日の会見の場で「このままでは、婚約にあたる納采の儀を行うことはできません」と発言し、小室家の金銭問題に対し、明確な説明を求めたが、次女の佳子さまは「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」と文書で発言したことに、「親子断絶」などと報じられもした。  現在のところ、二人に進展はなく、小室圭さんの代理人弁護士は、メディアの取材に、「二人は頻繁に連絡を取っている」などと答えており、小室さんと眞子さまの結婚の行方に着地点は見えない。  悠仁さまをめぐっても、「学校で友達がいない」「周囲から浮いている」といったネガティブな報道が目立つ。  だが、こうした記事について先の友人女性は、一笑に付す。 「悠仁さまは、お茶の水女子大付属小の頃から、放課後にお友達と遊ぶのを、それは楽しみにしていました。大勢の友達に恵まれて下校時間ギリギリまで遊ぶのが楽しくて仕方がないという生活です。学校では、放課後に校内に残って遊ぶためには、保護者が書類にサインをする必要があるのです。悠仁さまは宮邸に帰ってお母さまの顔を見ると、真っ先に明日遊ぶための書類にサインをせがむそうです。サインをもらい忘れたときは、相当にしょげていらしたそうですよ」  こんな報道もあった。  4月8日、お茶の水女子大付属中の入学式で、今年から始まった新入生代表宣誓を、114人いる中で悠仁さまが行ったことに対し、「悠仁さまが選ばれたことに違和感がある」「特別待遇」などと選出過程に懐疑的な見方を示す内容だった。  学校側は本誌に、宣誓を始めた理由について、「国からの予算が毎年削減され、学校の経営が苦しい状況で生徒の母校愛を育むため」と説明。代表となる生徒の選出基準については、「学業を申し分なく修め、豊かな人格的成長が認められる生徒を総合的に判断して選出した」と答えた。  悠仁さまの成績は、学年でもトップクラス。代表の候補に選ばれて、やる意思があるか聞かれた悠仁さまは「やる」と答えたという。 「雅子さまと愛子さまへのライバル心から、悠仁さまの東大進学を目指している。特に、農学部が候補となっている」といった報道もあった。  小学生の頃は、昆虫が大好きで図鑑を熱心に読んでいたという悠仁さま。知識欲は旺盛で、いまは不思議や驚きを体験できる、化学の実験に興味を示しているという。  先の林氏が言う。 「私が東大農学部の学部長を務めていた時期は、たしかにご家族で、東大の演習林に滞在され山登りをなさったこともあります。しかし、それは悠仁さまが生まれる前の話で、秋篠宮家は、悠仁さまのご興味と意思を第一に尊重なさるご家庭です。対抗意識で、ご長男の進学先を決めるなどということは、まず考えられません」  本誌でも、宮務主管として秋篠宮家を支えていた故・日野西光忠氏からこんな話を聞いた。  秋篠宮さまとの食事の席で、悠仁さまの教育話で盛り上がった。東大出身の日野西氏は、「目指せ東大」と冗談交じりに伝えたのだという。悠仁さまが小学校に入ったばかりの頃の話だ。  次第に、悠仁さまの東大進学が秋篠宮ご夫妻の希望である、といった趣旨の報道が目につくようになったが、日野西氏はこう話していた。 「あくまで、悠仁さまの進学への意思と学力がどこまで伸びるかが全て。両殿下の希望で進学先を決めるご家庭ではない」  一方、山下氏は、1993(平成5)年に起きた、週刊誌と月刊誌による「皇后バッシング」をほうふつさせる状態だ、と振り返る。山下氏は当時、宮内庁で広報を務めていた。こう語気を強める。 「あのときは、皇后陛下(当時)が10月20日のお誕生日当日に倒れ、声を失った。それでようやくバッシングが収束した。最近の秋篠宮殿下のご様子を拝見すると疲労の色が強いのが気になります。あのときと同じようにならないよう、宮内庁は早めに手を打つべきだ」  代替わり後の5月から秋篠宮ご夫妻を支える皇嗣職大夫(こうししょくだいぶ)が定例会見を行うことになり、発信の場はできた。(本誌・永井貴子) ※週刊朝日  2019年5月31日号
皇室
週刊朝日 2019/12/31 11:30
“メダル請負人”平井伯昌「コーチも楽しくなきゃ、やってらんない(笑)」
平井伯昌 平井伯昌
“メダル請負人”平井伯昌「コーチも楽しくなきゃ、やってらんない(笑)」
競泳日本代表を引っ張る平井伯昌ヘッドコーチ=東京都板橋区の東洋大総合スポーツセンタープール (撮影/写真部・小山幸佑) 五輪の日本競泳メダルと金メダリスト (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)  東京五輪が開かれる2020年、平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチの連載「金メダルへのコーチング」が『週刊朝日』で始まります。指導した北島康介選手、萩野公介選手が計五つの五輪金メダルを獲得しています。第1回は特別版。これまでの五輪を振り返り、五輪イヤーにかける思いをお伝えします。 *  *  *  いよいよ東京オリンピックの年が始まります。連載の第1回は新しい年の抱負を述べたいと思います。  前回の1964年東京大会のときは1歳だったので、五輪を直接肌で感じることはありませんでした。  五輪をきっかけに全国各地にスイミングクラブができて、その一つである東京スイミングセンター(東京都豊島区)に就職して、コーチを始めました。高度成長期の五輪が契機となった健康増進の政策や経済力のアップに後押しされて、今の自分があるという思いがあります。  コーチの集大成という時期に地元に五輪が来ます。日本水泳連盟競泳委員長、競泳日本代表ヘッドコーチという要職も任せられています。万全を期して迎えなければいけない、と気持ちを引き締めています。  コーチの仕事を始めて34年になります。大学卒業はバブル経済期の86年。親の反対を押し切って水泳コーチになって、教えた選手が初めて五輪に出たのは00年シドニー大会。のちに男子平泳ぎで2大会連続2冠を取る北島康介です。  04年アテネ大会以降、北島のほかに個人種目だけでも女子背泳ぎの中村礼子、寺川綾、女子バタフライの星奈津美、男子個人メドレーの萩野公介と、16年リオデジャネイロ大会まで4大会連続で五輪メダリストを育ててきました。  08年北京大会までは自分が教えている選手にメダルを取らせることに集中しました。アテネまでとは練習のやり方を変えて、選手に刺激を与えて成長を促しました。北島は100メートル平泳ぎで史上初めて59秒を破る58秒91の世界新で2連覇を果たし、「なんも言えねえ」という名言を残しました。  北京大会を終えて日本代表ヘッドコーチになり、日本代表のレベルアップへと視野を広げていきます。12年ロンドン大会に向けては、ほかの所属の選手たちにもメダルを取らせたい、という思いが強かった。金メダルこそなかったものの銀3個、銅8個、日本競泳で戦後最多の計11個のメダルを取ることができました。  チームの結束力が個人の力を引き出した結果です。「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」と男子400メートルメドレーリレーで銀メダルを取ったこともチーム力の表れでしょう。私が東京スイミングセンターで教えてきた寺川、バタフライの加藤ゆか、自由形の上田春佳も力を伸ばして、女子400メートルメドレーリレーで銅メダルを取りました。  リオデジャネイロ大会までの次の4年間は東洋大学にコーチングの場を移して、北京の前までと同じように、自分の教える選手を伸ばすことで代表チーム全体を引っ張っていく、という意識でやってきました。  リオ五輪では、教えてきた選手たちは、萩野が400メートルと200メートルの個人メドレーで金と銀のメダル、女子200メートルバタフライで星が2大会連続の銅メダルを獲得し、小堀勇気も男子800メートルリレーの銅メダルに貢献しました。  4年ごとの大会を振り返ると、指導者としてステップを一段ずつ上がってきたように思います。地元の東京五輪は、ロンドン大会のように多くの選手にメダルを取ってほしい。私が直接教えている選手以外にも、19年世界選手権の男子200メートル、400メートル個人メドレーで優勝して東京五輪代表に内定した瀬戸大也、200メートル平泳ぎで17年に世界記録を出した渡辺一平ら金を狙える選手がいます。  ヘッドコーチとしては全体の強化を考えて、長期的な計画、組織作りなど競泳全体を強くするためのマネジメント力が必要です。もちろんここに一番力を注いでいるわけですが、自分のところの選手強化もおろそかにできません。両立は本当に大変で、頭の切り替えをよほど早くしないといけない。競泳委員会や東洋大のコーチを始め、多くの人の協力も必要で、大きなチャレンジの年になります。  東洋大を拠点に指導を続けていますが、五輪のメダルを狙う主力はそれぞれ課題を抱えています。  400メートル個人メドレーで五輪連覇を狙う萩野は調子を崩して19年4月の日本選手権を欠場。夏には試合に復帰して調子を戻しつつありますが、連覇するには死にものぐるい以上の練習が必要です。19年世界選手権女子400メートル個人メドレー銅メダルの大橋悠依、100メートル平泳ぎ4位の青木玲緒樹はともに五輪に出たことがないので、メンタルも含めたサポートが不可欠です。  どの五輪も結果を出すのは大変でしたが、今回が一番大変かもしれません。それでもここでギブアップしてしまえば、私自身の負けという気がしています。  北島の指導も日本代表ヘッドコーチの役割も、人のため選手のために力を尽くすわけですが、大切なのは自分のためにやる、というスタンスを持つことです。自分の思うようにやる。それが人のため公のためになるのが一番いい。  困難な仕事に立ち向かう原動力というのは、足が震えるようなプレッシャーだったり、簡単に答えが出ない課題の克服だったりをいかに楽しめるか、ということだと思います。  萩野が金を取ったリオ五輪のときに改めて強く思いました。こうじゃなきゃ、おもしろくない、と。よく選手たちが試合前に「楽しみたい」と言いますが、コーチだって一緒なんです。コーチも楽しくなきゃ、やってらんない(笑)。  経験を重ねて、指導のやり方の引き出しは増えています。海外のコーチや選手との交流を通して、新しいトレーニングを学んでいます。金メダルという解答につながる式は必ずある。その式が導き出せれば、答えは見えてくるはずです。少しでもいいトレーニングを、いい経験を選手にさせたいし、自分もしたい。そんな意欲を強く持って、五輪イヤーに挑みます。 (構成/本誌・堀井正明) ※週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号
2020東京五輪平井伯昌
週刊朝日 2019/12/26 08:00
愛子さまの進学先は? 秋篠宮さまはおふたりの結婚を認める?
永井貴子 永井貴子
愛子さまの進学先は? 秋篠宮さまはおふたりの結婚を認める?
天皇、皇后両陛下と秋篠宮さま、紀子さま、眞子さま、佳子さま (c)朝日新聞社  天皇ご一家の空気は明るい。天皇陛下は、一連の即位行事をつつがなく終え、2020年2月23日には60歳の誕生日を迎える。  体調が心配された皇后雅子さま(56)も、無事に皇后としての務めを果たし、祝賀パレードや「国民祭典」で見せた涙に、国民は共感を寄せた。誕生日の12月9日に公表された文書では、 「思いがけないほど本当に温かいお祝いを頂きましたことに、心から感謝しております」  と、国民への感謝の気持ちをつづった。  医師団は、体調に波があることを伝えたが、令和に入ってからは、集まった人たちが遠くからでも雅子さまの姿を見つけられるような明るい色の服装が増え、フリルを採り入れたデザインなど雅子さまの個性も見えてきた。12月18日には映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の上映会に元気な姿を見せ、周囲は楽観的に見ている。  3月には学習院女子高等科を卒業する長女の愛子さま(18)の進学先も注目を集めている。所属する文系クラスでの成績は、トップクラスと評判。海外の大学への進学もささやかれたが、「外部受験の説明会で姿が確認できず、大きな動きも聞こえてきません。学習院大学への内部進学で落ち着くのではと見られています」(学習院関係者)。  20年が節目の年となるのは秋篠宮家だ。  4月19日には、秋篠宮さま(54)が皇位継承順位1位の「皇嗣」になったことを示す「立皇嗣の礼」がある。紀子さま(53)も公務に家庭にと多忙ななか、長男の悠仁さま(13)の教育に力を注いでいる。悠仁さまは、12月8日に姉の佳子さま(25)と、「少年の主張全国大会」に出席し、将来の天皇としての「学び」を積み重ねている。次女の佳子さまは、就職はせず、公務にいそしみながらもダンスをライフワークとして活動している。 「英国留学に行った際も、数日前までダンス仲間と練習に励んでいたほど。いまも、ヘソ出しのセクシー動画がマスコミに掲載されても、どこ吹く風でダンスに打ち込んでいます」(皇室記者)  そして最大の問題は、長女の眞子さま(28)と小室圭さんの行く末だ。秋篠宮さまは先の会見で、ふたりの婚約延期を発表してから2年が経つ20年2月に、「何らかのことを発表する必要があるという風に私は思っております」と述べている。  小室家の金銭トラブルについて、母親の元婚約者の男性との話し合いなどはいまだなされていない。また、秋篠宮ご夫妻が眞子さまや小室さんと話し合っている気配もなく、「根負けした秋篠宮さまが、ついにふたりの結婚を認めるのでは」との見方も出始めた。  心配なのは上皇后美智子さま(85)だ。12月中旬に宮内庁は、体調不良が続いていると発表した。週刊誌やネットなどで中傷記事が出たことによる精神的なストレスが原因、との見方だ。  高輪皇族邸への引っ越しは、20年3月末までに行うと発表された。上皇さま(86)とのお元気な姿を、みんな心待ちにしている。(本誌・永井貴子) ※週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号
皇室
週刊朝日 2019/12/25 11:30
中2からパパ活で200人と会った25歳OL「まともな恋愛できない」 就職してもやめられない深刻な理由【2019年ベスト20 10月30日】
中2からパパ活で200人と会った25歳OL「まともな恋愛できない」 就職してもやめられない深刻な理由【2019年ベスト20 10月30日】
※写真はイメージです(写真/Getty Images)  2019年も年の瀬に迫った。そこで、AERA dot.上で読まれた記事ベスト20を振り返り、再掲する。  16位は10月の記事「中2からパパ活で200人と会った25歳OL『まともな恋愛できない』 就職してもやめられない深刻な理由」だった。  清潔感のあるシャツにパンツスタイル、肩まで伸びた茶色の髪。明るく好感が持てる雰囲気の営業女子(25)は、聞けば11年前から200人以上の男性にお小遣いをもらってきたパパ活女子だった。  女子中高生がSNSなどで知り合った大人とデートをして金銭を受け取るパパ活は、児童買春や詐欺、そのほかの犯罪に巻き込まれるケースが相次ぎ、警察や市民グループなどがツイッターをパトロールするなど、犯罪を防ぐための取り組みが始まっている。  身の危険があるパパ活に、彼女はどうして手を出したのか。普通の会社員として働き始めた現在も、なぜパパ活をやめないのか。語られたのは、深刻な家庭の事情と意外と知られていないパパ活後のリスクだった。 *  *  * 「当時の記憶があまりないんですよね……。家がごちゃごちゃで、辛すぎて」  都内に住む会社員のサキさん(仮名、25歳)は、パパ活を始めた中学2年生のころのことを聞くと、軽い口調でそう話し始めた。仕事が続かない父と、アルコール依存症の母。両親の激しい言い争いは離婚後も電話ごしに続き、母の怒りはサキさんにも向けられた。酒を飲んでは暴言を吐く母とこれ以上一緒にいたら頭がおかしくなると思い、家を出た。  所持金2万円。バイトができる年齢でもない。友だちの家に泊まらせてもらうのも限界があり、野宿は嫌だ。追い詰められて手を出したのが、当時から社会問題となり、ニュースでも度々報じられていたパパ活だった。行政や市民団体から支援を受けるほうが、ハードルが高いと感じていたという。  ネット上の掲示板で出会った40代半ばぐらいの小柄な男性と、昼間のカフェでパスタを食べ、2万円を受け取った。それからはいくつかの出会い系サイトに登録し、3日に1回ほど1人の男性と会って1~2万円の「お手当」をもらい、月10万円程度を手にした。カラオケや漫画喫茶で寝泊まりしながら、母がいない時間にたびたび自宅に戻り、着替え数着をかばんに押し込んで家を出る日が1年ほど続いた。下着を使い捨てにしてしまうのは、当時からの癖だ。  高校生になり自宅に帰るようになっても、定期的に会う“太(ふと)パパ”を4~5人つないで収入を維持し、小学生から続けていた子役やモデルの仕事で稼いだお金で、国公立大学の授業料なども賄った。これまでに会った“パパ”たちは、普通のサラリーマンや医師、中小企業の経営者、アニメや音楽関係のプロデユーサー、メディアや芸能事務所の関係者など200人以上。一時はキャバクラやラウンジバー、風俗店などでも働いてみたが、続いたのはパパ活だけだった。交際クラブへ場所を移し、会う人の地位や役職が上がっていくと、食事する場所もホテル最上階のレストランや誰もが知る芸能人らが通う会員制の料亭などへと変わっていった。知らない業界の仕事、ニュースの裏側、政治家の素顔など、パパたちから聞く話は知らないことばかりで新鮮に感じていたという。 「きれいな場所できれいにしていられること、普段は会えない人に会えること、面白いねって認めてもらえることが嬉しかったですね」  自慢話や説教をしてくる人はブロックしたが、あくまでも「女の子は選ばれる側」だという。体の関係を持たないため、相手は自分と過ごす時間にお金を払ってくれる。選ばれるために気をつけていたことはいくつもあった。  いつも身ぎれいにする。会話の中でさりげなく相手を褒める。悩みや愚痴をちゃんと聞く。「ごちそうさま」は食事の後と会計後、帰り際の3度言う。疲れているようなら栄養ドリンク、旅行やディズニーランドなどどこかに行く予定を話したらお土産を持っていく。会話を途切れさせないのは、いい雰囲気になってホテルなどに連れ込まれないための術でもあると話す。そして、大事なのはキャラ設定だという。 「私はウソがつけないので、パパ活女子には少ないサバサバした快活なキャラにしています。誕生日を覚えておいて、日付が変わる瞬間にメールする子もいますが、そんなマメなことはできないので、最初から『誕生日とか覚えられない!』と言っておくんです。そういうキャラならガチ恋(本気で恋)されることもなく、身の危険も少ないと思って。お手当の額を上げると言われたら、断わるようにしてますね。その方が、いい子だな~と思われる。私は薄利多売主義です」  知人には太パパにマンションを買ってもらったり、月70万円ももらうようないわゆる愛人業に移行する子もいるが、相手をつなぎとめるために狂言自殺などあらゆる駆け引きをしているのを見ると、「私にはムリ」と断言する。さらに愛人に求められるのは、連れて歩きたくなるような高身長と美しいビジュアル。年齢の問題も出てくる。だからこそ就職活動をして、今年の春から正社員として働く道を選んだ。 「セレブな生活をアップしている人気のインスタグラマーでも、オジサンの影を感じる人は多いです。でもパパ活をやっている女の子で、楽して稼げてラッキー!って思っている人はいないと思います。時給にすると5千~1万円なので昼職(水商売以外の昼間の仕事)より拘束時間は短いですが、リスクもあるし、お酒とおしゃべりで喉を壊すこともある。お腹いっぱいでも出された物は食べなきゃいけない。はたから見ると、若くて自分には高給をもらう価値があると勘違いしていると思われているかもしれませんが、お手当は努力への対価と迷惑料ですから」  新卒で配属されたのは営業。そこにはパパ活経験者が陥るであろう、意外な落とし穴があったという。 「若手の女性社員は接待要員として得意先との飲み会によく連れて行かれるんですが、お金ももらっていないのにどうしてニコニコしておしゃべりしなきゃいけないんだろうと思ってしまうんです……。もちろん次の仕事につながるという意味はわかりますが、相手に楽しい気分になってもらうためにこちらがすることはタダじゃない。時給1千円ぐらいで愛想良くしなきゃいけないコンビニ店員や飲食店のウエイトレスも、私にはもうできないですね。  それに、パパ活では嫌な人をブロックできるし、こっちにも選ぶ権利があります。でも職場の人たちは1年、2年どころか、下手すると一生の付き合いになるかもしれない。嫌なことがあったとしても、相手が上司なら笑顔で接し続けなきゃいけない。それは理不尽だと思ってしまうんですよね……」  コミュニケーションを売り物にしてきたからこそ生まれる、社会の“普通”とのギャップ。さらに「男の人が嫌いになる」というから、若いころから業界の常識に染まるリスクは想像以上に大きい。 「飲み物に薬を盛られて意識を失ったり、食事代もお手当も払わずに逃げられたり、男の人の汚い面をたくさん見てきたので、もう男の人という存在自体が嫌いになっています。お金をもらわないと喋りたくないぐらい……。好意を向けられるのも気持ちわるいし、このままじゃ、まともな恋愛ができないかも」  それでも、「安定のため」しばらくは4~5人のパパを手放すつもりはないという。中学生からその日暮らしを経験してきた彼女は、毎月の手取り25万円以上という社会人1年目にしては高水準の給料を得ても、最悪の想定から抜け出せないのだ。性犯罪、詐欺被害、あらゆる危険をくぐり抜けてもなお、大きな犠牲がパパ活女子たちを待っている。(AERA dot.編集部・金城珠代)
働く女子女子貧困
dot. 2019/12/25 11:30
学校現場の大問題

学校現場の大問題

クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

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