きれ痔(裂肛)の構造
きれ痔(裂肛)の構造

 実際に、温水洗浄便座の過度な使用や紙で拭きすぎるなどで、肛門周囲に皮膚炎を起こす人は少なくないという。

 もう一つ実践したいのが、肛門周辺を温めて、血行をよくすることだ。温めることで硬くなった裂肛の部分の組織を軟らかくしていく。また、肛門括約筋の緊張がほぐれ、痛みがやわらぐという。

「入浴はいい機会です。できればゆっくり湯船につかって、肛門周辺の血流を促してください。筋肉などの緊張も解けて、痛みに過敏な状態も改善します。入浴だけでなく、温座浴(腰湯)もすすめられます」(岡本医師)

 筋肉の緊張を解くことで痛みを軽減する効果は、実証されている。

「海外では括約筋の緊張を緩める薬物が使用されていますが、日本では現時点で未承認です。今後の承認が期待されています」(松尾医師)

 裂肛は良性の疾患だが、大腸がんや炎症性腸疾患(IBD=潰瘍性大腸炎やクローン病)などの腸の病気との鑑別が必要だ。「いつものきれ痔の出血」と思い込むのではなく、頻回に出血するようなら肛門専門医を受診して、自分のおしりの状態を把握しておこう。

(文/別所 文)

週刊朝日  2021年9月17日号より