※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 便秘がちで、排便の際に強くいきむことが多いと起こりやすくなるきれ痔。赤ちゃんから高齢者まで、広く発生することから、毎日、おしりの負担にならない排便習慣を続けることが、悪化防止・再発防止の要になる。

【データ】きれ痔にかかりやすい年代、性別は?

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 3人に1人は痔があるといわれるほど、痔に悩む人は多い。痔にはいぼ痔(痔核)、あな痔(痔ろう)、きれ痔(裂肛)と、病態によって主に三つの種類がある。最も患者数が多いのはいぼ痔だが、裂肛は、受診するほどではない程度のものなら、だれもが生涯に一度は経験するといわれるくらい、身近な病気だ。

 裂肛は肛門の内側にある上皮が切れたり裂けたりした状態になる。肛門の約2センチ奥には歯状線という、肛門上皮と直腸粘膜の境目があり、そこから肛門までの間に起こる。

 原因として、排便の際のいきみや、硬い便、太い便など、肛門に強い力が加わることが考えられる。また、繰り返す下痢便も誘因となる。乳幼児から高齢者まで、世代を問わず発症する。20~40代の女性に多く発症するのは、便秘になりやすいことがその理由の一つとして考えられている。

 おもな症状は出血と痛みだ。便や紙に血が付く、便器の水が赤くなるなど、出血量はさまざまだ。痛みは排便時の「裂けるような」「焼けるような」痛みだが、排便後、徐々に消えていく。

 年に1、2度起こる程度なら、多くは心配はいらない。しかし、裂肛の傷が治らないうちにまた裂けるなどを何度も繰り返していると、慢性化してしまい、傷が潰瘍化して痛みが続くようになる。また、患部は徐々に硬くなり(線維化)、傷も大きく深くなっていく。肛門上皮だけでなく、その下の内括約筋にまで傷が及ぶこともある。こうなると、硬く線維化した傷が肛門を狭くする「肛門狭窄」が起きてしまう。

■手術が必要になるケースは多くない

 また、「見張りいぼ」ができるのも裂肛の特徴だ。見張りいぼとは、裂肛の傷が治ろうとするときに、引きつれたり硬く固まってしまったりして、その部分がいぼ状になったものだ。直腸側に「肛門ポリープ」としてできることもある。排便時にこのいぼに気づいて、いぼ痔ができたといって受診する人も多いという。

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