物忘れデータ
物忘れデータ

■認知症の抑制には生活改善も不可欠

 認知症については、数多くの研究が世界各国でおこなわれている。

 英国のランセット認知症予防・介入・ケア国際委員会は「予防できる認知症のリスク因子」として12の項目を発表している。そのなかには、中年期の「難聴」「高血圧」「肥満」「過度の飲酒」、高齢期の「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「糖尿病」など、生活習慣と深く関わるものも多い。そして、これらのリスク因子を取り除くことで、認知症の発症を遅らせたり、発症を約40%予防したりする効果が期待できると報告されている。

 フィンランドで2009年から2年間実施された研究(フィンガー試験)では、認知症のリスクがやや高い高齢者に栄養指導、運動療法、認知トレーニング、血圧管理などを実施したところ、しなかったグループと比べて「物事を判断して実行する能力」や「情報を処理する速さ」などが高かったと報告されている。

 国立精神・神経医療研究センター病院認知症センター長の塚本忠医師は次のように話す。

「これらの研究報告から、日本でも生活改善を促進する動きが高まっています。認知症の進行を抑えるためには、薬物療法以上に、生活習慣を整えることがとても大事です」

 三村医師も「認知症の発症や進行を抑えるために日常生活でできることは多くある」と言う。食べすぎに注意してバランスよく食べる、運動習慣、質のよい睡眠などといった、認知症の進行を抑えるためによいとされる生活習慣は、物忘れなどが出始めた「認知症予備軍」が、認知症になるのを防いだり、発症を遅らせたりする対策としても有用と考えられている。

「年齢とともに記憶力が低下するのは仕方ないことですし、物忘れも認知症も、完全に防ぐことは難しいでしょう。でも、記憶を支える『やる気(意欲)』や『注意力』などを保つことは可能であり、そのためにも心身ともに健康でいることが大切です」(三村医師)

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