※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 現状の薬や治療法では、物忘れや認知症を完全に防ぐこと、治すことは難しい。しかし進行をゆるやかにする薬はあり、生活習慣の改善などによって、発症や進行を遅らせたり、防げたりする可能性がある。早期発見、対応が鍵だ。

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「物忘れ」を引き起こす病気には、治療可能なものと、治療が難しいものがある。治療可能な病気には、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミンB1・B12欠乏症、うつ病に加え、薬の副作用によるものなど、さまざまある。

 一方、治療が難しいものの代表格がいわゆる4大認知症だ。神経の変性による「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」、脳の血管障害による「血管性認知症」は残念ながら、根治が期待できる治療法はまだない。現状の薬物療法は、進行をゆるやかにするためのものだ。

 物忘れなどの認知症の中核症状に対して、アルツハイマー型認知症では「塩酸ドネペジル」などの4剤が、レビー小体型認知症では1剤のみ、保険適用が認められている。不安やうつ症状、怒りっぽくなるなどの「行動・心理症状(BPSD)」には、環境調整や心理療法、リハビリテーションなどのケアをしてもコントロールが難しい場合に、向精神薬や漢方薬などを使用することがある。

 新たな認知症治療薬の開発は喫緊の課題で、世界中で進められている。

 アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」と呼ばれる異常なタンパク質が脳内に蓄積されることで神経細胞に障害が起こり、脳が萎縮していく病気だ。これに対して開発が進められている薬は、脳にたまった異常なタンパク質を取り除くことで病気の進行を防ぐ「疾患修飾薬」とよばれるもの。慶応義塾大学病院精神・神経科教授の三村將医師は、新薬の登場をこう期待する。

「疾患修飾薬が使えるようになれば、これまでとは違うメカニズムで認知症の進行を防ぐことが可能になります。アミロイドβの蓄積を早く取り除くためにも、早期診断・早期治療は、より重要になっていくでしょう」

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世界の数多くの研究でわかったことは?