週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

「腰部脊柱管狭窄症の場合、医師から強くすすめるというより、日常生活に支障があって患者さんが希望すれば手術となります。『将来悪くなるから』という判断以上に大事なのは、『今困っているかどうか』なのです。薬を飲み続けるよりも、一度で済む手術のほうがいいと考える人もいます。手術を受けなくても症状が悪化しない人もいますが、神経への圧迫(狭窄)が強いと将来悪くなる可能性は高いと言えます」

 交野病院の寳子丸(ほうしまる)稔医師は、 「『からだに傷がつくといった手術の負の側面を受け入れてでも痛みやしびれを治したい』という人が主に手術を受けています。ただ、早めに手術を受けたほうが術後に症状が改善しやすいのは確かです」と話す。

 手術は、従来法と低侵襲の二つに大別され、このどちらにも、神経への圧迫を取り除く「除圧術」と、除圧に加えて背骨を金属などで固定する「除圧固定術」がある。

「腰に不安定性があれば除圧固定術を選択するのが一般的ですが、不安定性の定義はむずかしく、患者さんの年齢や活動度、筋力、狭窄の部位、患部に隣接する背骨の状態、骨のもろさなどによって医師が判断します。私は細かい術式以上に、除圧術と除圧固定術のどちらを受けるかがまず重要だと考えます」(前田医師)

■手術は若返りの魔法ではない

 医師の判断が分かれやすいのは、腰の骨にずれが生じる腰椎すべり症の患者で、腰に不安定性があまりない場合や、背骨の左右外側にある神経の出口(椎間孔)が狭くなる腰椎椎間孔狭窄症などだという。

 注意点は、術後に残りやすい症状があること。足の痛みや間欠性跛行(はこう)は手術で改善しやすく、多くの場合術後に運動もできるようになるが、しびれなどは残る傾向がある。

「神経はデリケートで、極端に傷んだ神経は元に戻りません。手術では神経への圧迫をとることしかできないのです。若返りの魔法ではありませんから、手術で得られるものと得られないものを理解しておくことが大切です」(同)

 なお、首の手術に関しても腰と考え方は同様で、除圧術と除圧固定術がある。

 ちなみに、頸椎症で脳からの神経(脊髄)が圧迫される場合を頸椎症性脊髄症という。

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年間手術数100例以上の病院が理想