写真はイメージ(GettyImages)
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 貧血は身体能力や競技パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があると指摘されており、アスリートや運動習慣のある人にとって、定期的な血液検査や鉄の補充を行うことは重要です。国際オリンピック委員会(IOC)も「エリートアスリートの定期的な健康評価に関する2009年のコンセンサス・ステートメント」において、アスリートの鉄欠乏症の定期的なスクリーニングを推奨しています。

 スポーツが貧血を引き起こす主な要因として、鉄摂取不足、血管内溶血、消化管での微小な出血、炎症性サイトカインの産生を伴う運動誘発性の急性期反応、血漿量増加による希釈、汗からの喪失などが挙げられます。運動をする人は筋肉量が多いため、十分な鉄の補給を行わないと容易に鉄欠乏の状態に陥ってしまいます。これは、鉄が筋肉に含まれるミオグロビンの構成成分の一つとして、筋肉の機能維持に重要な役割を果たしているからです。

 スポーツ選手の貧血に関する先行研究の多くは、症例報告や小規模研究です。プロのアスリートや、ジュニアオリンピック選手、大学の運動部に所属している今後プロになるようなアスリートを対象としたものが大半を占めています。一方、学校や地域の運動部に所属する一般の青年期アスリートは、上述した貧血を引き起こす背景に加え、成長期における鉄需要の増大や朝夕の日々の練習により、貧血の高リスク群と考えられますが、実態は不明です。

 そこで、貧血外来を受診した運動部に所属する中高生・大学生を対象として行った我々の調査で興味深い知見が得られましたので、ご紹介させていただきます。

 まず、学校の運動部の所属している貧血外来を受診した13歳から22歳の男女485人の血液検査や診療記録のデータを収集しました。そして、初診時に鉄剤をすでに内服していた55人を除外し、初診時に無治療だった430人を対象とし解析したところ、なんと男性の9.0%、女性の23.1%に貧血を認めたのです。また、多変量解析の結果、男女ともに、「鉄欠乏」と「過度な運動」が貧血の原因であることが示唆されました。

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