写真集『奇界遺産』やTV番組「クレイジージャーニー」で知られる写真家・佐藤健寿。ライフワークである「奇界遺産」が「人間の<余計なもの>を作り出す想像力や好奇心が生み出したもの」である一方、これまで世界120カ国でさまざまな「旅」の風景も作品として撮影してきた。そんな「旅」の作品群が、現在【ライカギャラリー東京/京都/GINZA SIX】の三箇所で展開している写真展「世界MICROCOSM」及び、12月15日に刊行される写真集『世界』にまとめられている。『世界』刊行を控えた写真家・佐藤健寿に話を聞いた。
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■「世界」というタイトルに込められた二重性
―─2021年5月には「集大成的」とも言える『奇界遺産3』も発行されています。本作『世界』との違いを教えてください。
結果的には「奇界遺産3」の方が先に出たんですが、実は「世界」の方はもっと前から準備していました。コロナとも関係なく、いつかこういう写真集を出したいとは思っていて。違いとしては奇界遺産で扱っている写真というのはどうしても旅の目的地であって、旅の過程とかはあまり関係ないんですね。でも自分の旅を振り返ると、目的地にいる時間よりも移動していたりする時間の方が遥かに長かったりする。そういう旅の過程で何となく撮影した写真というのは人に見せるために準備して撮るものでもなく、もっと衝動的に撮っている写真が多い。
たとえば車内で移動中の写真とか、自分が泊まった宿の写真とか、荒いカットも多いんですけど、そういう写真が意外と自分の旅の実感とも近かったりして、ひとつこれまでの旅というか、この二十年ほどの集成のような形でまとめました。
ざっくり言えば、過去20年近い旅の中で120カ国くらい巡ってきてるんですが、そうした中で撮影した写真が多いですね。掲載している500枚以上の写真のうち、多分3分の2くらいは未発表なんじゃないかと思います。