大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 日本全国で45万人以上の患者がいるといわれているアトピー性皮膚炎。その治療薬が続々と承認されています。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、新薬の特徴について解説します。

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 2021年はアトピー性皮膚炎(以下、アトピー)の新薬ラッシュとなりそうです。すでに18年にIL-4α受容体を標的とした注射薬デュピルマブ(商品名:デュピクセント)が登場し、症状が重いアトピー患者さんに対する強力な治療選択肢となっています。また、20年にはJAK阻害剤であるデルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏)が登場しました。さらに年末にはJAK阻害剤の内服薬であるバリシチニブ(商品名:オルミエント)がアトピーの治療薬として承認されました。今回はこれら新薬の特徴についてアトピーの病態メカニズムを絡めて解説したいと思います。

 まずアトピーの病態ですが、三つの大きな原因が悪さをしていることが知られています。一つ目が肌の乾燥、二つ目が免疫の異常、三つ目がかゆみです。この三つはそれぞれが悪循環を引き起こしています。例えば、免疫の異常がかゆみを引き起こし、ひっかくことで肌の乾燥はさらに進み、そしてまた免疫の異常を悪化させるという具合です。

 18年に登場したデュピルマブは、免疫の異常の一番の原因であるTh2サイトカインと呼ばれるタンパク質を抑える効果を有しています。デュピルマブはIL-4α受容体をブロックする薬剤(生物学的製剤といいます)であり、Th2サイトカインであるIL-4とIL-13の作用を阻害することができます。

 このIL-4とIL-13は近年、末梢神経に直接作用してかゆみを引き起こすことが知られています。そのため、デュピルマブを使用すると皮膚炎の改善だけでなくかゆみが軽減したと感じる患者さんが多いようです。またIL-4とIL-13は皮膚の乾燥にも影響を与えるサイトカインですので、これらサイトカインの作用を抑えることでアトピー患者さんの乾燥肌改善の効果も期待されます。

 気をつけるべき副作用は結膜炎。目が赤くなったり、かゆくなったりする場合があります。デュピルマブは今までの治療法で十分な効果が得られなかった15歳以上のアトピー患者さんが対象になります。注射の薬で2週間に1回投与が必要です。

 最近では自分でも注射しやすいペン型が登場し、病院で2~3カ月分処方してもらうことが可能です。注射薬は1本約6万6000円と高額ですが、自己注射として高額療養費制度を利用すればだいぶ安くなります。患者さんご自身の保険の種類と年収で自己負担額が決まるため、正確な値段が知りたい人は病院の窓口に問い合わせてみる必要があります。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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