水野美紀さん
水野美紀さん

イラスト:唐橋充
イラスト:唐橋充

 42歳での電撃結婚。そして伝説の高齢出産から2年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は人生の中で増えていく「怖いもの」について。

【チビと唐橋さんの怖いものは…?】

*  *  *

 歳を重ねれば重ねるほど、「怖いもの」は増えるのだろうか。減るのだろうか。

 経験値が増えただけ、対処法の知識は増えるだろうから、例えば、火事を防ぐためにセンサーで火を消してくれるコンロを使う、とか、万が一の病気や怪我に備えて保険に入る、とかすることで怖さを減らしていけるのか。

 それともむしろ知識が増えることによって、「怖いもの」も多種多様に知ることになり、例えば富士山が噴火しそうだ、とか大地震が来そうだ、とかコロナのようなウイルスで、ある日突然生活が一変することもあるんだ、とか対処しようもないことへの怖さは増え続けるばかりなのか。

 ちびが産まれた時、確実に私は怖いものだらけになった。

 陣痛の恐怖、会陰切開の恐怖。産後の体の変化への恐怖。

 生活の変化への恐怖。ちっちゃな赤ちゃんを扱う恐怖。

 誤飲やおむつかぶれ、アレルギーなどの恐怖。

 風でバタン! と閉まるドアに指を挟む恐怖。

 飛び出して車に轢かれる恐怖。

 親になるということは、子供に起こりうるであろう、様々な「怖いこと」との戦いの始まりだと言っても過言ではない。

 だけど怖がってばかりはいられない。

 楽しく過ごせる時間の幸せをしっかり噛み締めて、一瞬一瞬を大事に生きていくしかない。

 イライラしたり焦ったりするのは怖さと戦っているからなのだ。

 親業に限らず、もしかしたらこれはいろんな職種に当てはまるかもしれない。

 現在、舞台の公演中の私の業種は「舞台役者」。

 では、この舞台役者に特化した怖いものとは何だろうか。

 このコロナ禍で急に浮上したのが「公演中止」だ。

 これまではインフルエンザが一番怖いウイルスだったのを、コロナがひとっ飛びで超えた。

 幕が開く。そのことをこんなにありがたく感じたことはなかった。

 しかし幕が開いたら開いたで、我々は日々、怖いものに囲まれ、戦っているのだ。

著者プロフィールを見る
水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

水野美紀の記事一覧はこちら
次のページ
本番中の怖いものその1は…