水野美紀 歳を重ねれば「怖いもの」は増えるのか、減るのか? (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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水野美紀 歳を重ねれば「怖いもの」は増えるのか、減るのか?

連載「子育て女優の繁忙記「続・余力ゼロで生きてます」」

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水野美紀さん

水野美紀さん

イラスト:唐橋充

イラスト:唐橋充

<本番中の怖いものその1「出とちり」>
 読んで字の如く「出」のタイミングを「とちる」。
 誰がどの瞬間にどこからどんな風に出てくるのか。それはもちろん決まっている。
 しかるべきタイミングで登場し、退場しなければならない。退場し忘れることはまずないが、登場は気が抜けない。
 2秒遅れたらもう、お客さんにも気付かれるくらいの事故だ。
 舞台上で、出てくるはずの共演者をフリーズして待つ2秒は永遠に感じる。

<その2「小道具を持ち忘れて出る」>
 怖い……例えば会話の途中で内ポケットから手紙を取り出して相手に渡し、相手がそれを読む。そんな流れなのに手紙を忘れて出る。
 内ポケットに手を入れた瞬間に凍りつく!
 その場合は、もう最悪いったん袖に取りに戻って続けるしかない。
 しかし、続けたとしても本来のニュアンスは失われ、そこまでみんなで積み上げて来た物語が台無しになってしまう。怖い。

<その3「食当たり」>
 これはもう、地獄である。
 舞台上で、たくさんの人の前で、あれをあれしてしまうことなどあってはならない。
 タダでさえ針の穴に糸を通すほどの集中力を要する舞台。
 それを、お腹の痛みとあれをあれする恐怖と戦いながらやるなんてもう、地獄以外の何ものでもない。

<その4「怪我」>
 本番中に怪我。これも恐ろしい。
 血が出るような怪我から、ぎっくり腰。怪我にもいろいろあろうが、「あ、あの人怪我した」とお客さんにバレた時点で、物語の世界は崩れてしまう。
 ストーリーよりも「大丈夫かしら?」と役者としてのその人が気になってしまう。

<その5「へんなところに入るやつ」>
 みなさんもご経験かと思う。唾が気管の方にぽこっと入って思いっきり咳き込むやつだ。
「へんなとこに入っちゃった」と言いながら、静かな、シリアスなシーンで、もし、それが起こってしまったらば、全力で咳を抑え込まなければならない。
 身体は、喉に入った異物を出そうと激しく反応する。
 歯をくいしばり、涙を滲ませてそれを押さえ込む!
 自分との戦い!
 自分の咳ひとつでシーンの緊張感を台無しにする訳にはいかないのだ。


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