その象徴が、リクルートスーツともいえるかもしれません。日本人からするとなじみのある、リクルートスーツに身を包んだ見た目そっくりな集団は、外国人の目から見ると異様に映るようです。慣れた人を選んでしまうだけでなく、日本人好みの均質性もあって、人と違う格好をすることに抵抗があるのでしょう。そんな個性をなかなか出そうとしない就職活動時の人選は、なおのこと難しそうです。

 面接官の側から考えてみましょう。そもそも、短時間の面接で望んでいる人材は見つかるのでしょうか?

 20世紀初頭のアメリカですでに、外見から推測される性格をもとに科学的に雇用を進める方法が提供されていたそうです。それまで多くが家族や親族などで商売を営んでいた社会で、産業が発展して多くの見ず知らずの人を雇用せざるを得ない段階になると、客観的に人を選ぶためにはこうしたマニュアルが必要とされたのでしょう。

 この古いマニュアルを、面接官の側から読み解いてみましょう。それによると、基本的には外見から性格を読み取れないことを前提に、むしろ性格を読み取るための面接する側の基本姿勢が指導されています。

 面接者には、極力礼儀正しく親しげにすること。相手にすきを与え、素をさらさせることが目的です。ただし、ふだんの会話のように相手の言うことを承認してしまうのではなく(何を言えばいいかが知られてしまううえに、肯定的な態度をとり続けるとこちらの感情も変わってしまい、客観的な面接にならないからでしょう)、客観的なスコアを付けることなどがマニュアルのポイントです。面接者といえども、相手を客観的に捉えることの難しさが、改めて浮き彫りにされたマニュアルなのです。

 お互いが初対面でその後の人生を託さなくてはいけないという状況は、見合いや婚活パーティーにも似て、面接でも究極の騙し合いのようなところがあるのではないでしょうか。

 それを人間の面白さとしてあえて冒険を狙うというのもありですが、冒険はせずに安心感のあるほうを選ぼうという心理がそこにあるのも、こうした状況では理解できることでしょう。

 面接でもお見合いでも、その人が見慣れてきた「平均顔」に好感を持つということです。