採用面接では美人やイケメンが得だと言われますが、本当なのでしょうか? 面接官は実は、美醜とは別の基準で「顔採用」を行っているといいます。

 イケメンばかりの家系に生まれ、「イケメンの生き方とは?」という疑問に端を発して顔研究の道に進んだ中央大学教授の山口真美さんが、最新刊『損する顔 得する顔』(朝日新聞出版)でも解説した、面接官が無意識に行っている「顔採用」について紹介します。

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 顔は経験、すなわちどんな顔を見てきたかに重要な意味があります。

 人は慣れた顔を基準として顔を記憶し、さまざまな判断をします。慣れた顔は区別しやすいのです。人の顔認知メカニズムの特徴として、顔を見る基準がその人の経験によって作りだされるのです。

 これまで出会った顔を平均化して基準を作り、基準に基づき顔は記憶され、さらに平均的な顔は美しいと評価されるのです。

 プロトタイプとも呼ばれるこの基準は、出会った顔によって異なって作られ、標準的な日本人ならば、日本人の顔が基準となるのです。

 顔の基準は経験によって作られることから、見慣れていない顔は基準から離れ、区別するのは難しくなります。標準的な日本人なら、見慣れない外国人の顔の区別は難しく、洋画や海外ドラマを観ていて、白人や黒人の登場人物が混乱することはないでしょうか。服やメイクが変わると外国人の顔がわからなくなるのは、見慣れた日本人の顔ほど正確に区別できていない証拠です。

 見慣れた顔で作られた平均顔は美しいと評価されることから、慣れた顔を好きになるという研究もあります。動物を対象とした研究では、いとこくらい似た対象を好きになるという研究もあります。

 そんな人間の性質を考えると、面接で親しい人に似たタイプを選んでしまうことは当然なこと、むしろ、避けるのが難しいのではないでしょうか。「わが社の社風に合う」という日本らしい考え方も、拍車をかけているかもしれません。なんとなく均質な人を選んでおけば、人間関係も丸くなって問題も起きないだろうという安心感が、私たち日本人の中にはあるようです。

 社会心理学の文化比較研究によると、日本人は欧米人と比べると、集団そのものを自己とみなすような性質があるといわれています。そのため、集団内が均質であることをより好むのかもしれません。

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その象徴となっているのが…