もし、今回の地震をきっかけに漠然とした不安が続いているとしたら、あなたの体の原始人的な部分が、この危機にしっかり対処してくれている証拠です。

――ここ数年でも東日本大震災や本地震など大きな被害をもたらした地震や災害が相次ぎ、今回の地震でも23年前の「阪神淡路大震災を思い出した」という声が上がりました。どのように対処すればいいのでしょうか。

 これらの反応は情報によって刺激されるため、メディアやSNSを通していくつもの災害をつぶさに追いかけてきたいまの日本では、遠隔地でも同じような反応が出るのです。そして、今回の地震で震源地近くに住んでいて、実際に被災した人を「近い人」、距離的に離れていてショックを受けていない人を「遠い人」とすると、遠くに住んでいて直接的な被害は受けていないのに「あのときは怖かった」という過去の記憶から不安を抱えている「中間の人」がいまの日本には圧倒的に多いと言えるでしょう。

 では、どうすればいいのか。「近い人」と「中間の人」はまず、それが正しい反応だと知っておいてください。次に来るかもしれない危険から自分の身を守ろうとしているのです。この状態はスッと簡単に消えるわけではありませんが、新たな別の刺激が無ければ1カ月程度でいつもの自分に戻っていくでしょう。1ヶ月半程、自分を観察してみて、症状が落ち着いてくるなら大丈夫です。

 特に注意してほしいのは「中間の人」です。「なぜ遠くに住んでいる自分がこんなにドキドキして落ち込むんだろう」「PTSDなんだろうか? 努力が足りないんだろうか」と繰り返し考えていては、症状を長引かせてしまいます。

――具体的には、どう過ごせばいいでしょうか。

 穏やかに過ごすためには、自分は病気なんじゃないかとか、壊れてしまったんじゃないかとか、自分だけがこんなに落ち込んでいるんだろうとか、この状態がずっと続くかも知れないと考えないことです。これは一過性の反応です。

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「自粛だけではダメ」W杯との付き合い方