ドラフト会議で楽天から5位指名を受けた芦屋大・田中耀飛(中央)。左は芦屋大・比嘉学長、右は兵庫・高下代表
ドラフト会議で楽天から5位指名を受けた芦屋大・田中耀飛(中央)。左は芦屋大・比嘉学長、右は兵庫・高下代表

 野球界の現状に対する“アンチテーゼ”とも言える画期的なアイデアが発表された。それは「甲子園を目指さない高校野球部」。今回は「前編」に引き続き、「中編」をお送りする。

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 ベースボール・ファースト・リーグ(BFL)の兵庫球団と大阪・向陽台高、和歌山球団と鹿児島・神村学園高との教育提携が結ばれる前にも「甲子園を目指さない野球部」のプランが、いったんはスタートを切っていた。

 2013年10月2日、関西独立リーグ(当時)の兵庫球団と芦屋学園が提携し、2014年から芦屋学園高に硬式野球部を新設することが発表された。

 芦屋大が全日本大学野球連盟に加盟しない野球部を創部することを決めた当時、系列の芦屋学園高には硬式野球部がなかった。しかし、軟式野球部は2011年の県大会で優勝するなど、強化への下地はあった。ただ、大学と同様に高校野球部が日本高等学校連盟に入らない選択をすれば、春と夏の甲子園には出られない。それどころか、各都道府県大会への出場も不可能になる。

「高校生には『甲子園』の存在は大きい。これを最初から放棄する野球部に生徒は来ますか? ただそれ以上の夢を与えられるものが作れれば、それも可能かもしれない」

 芦屋学園側は大学と兵庫球団が提携を決めた当時、こうした見解を明かしていた。しかし「神宮を目指さない大学野球部」と「甲子園を目指さない高校野球部」のふたつを連動させたとき、独立リーグという『プロ』を頂点に、大学~高校~中学~小学校~幼稚園と、年齢別のカテゴリーが一本化された育成システムのピラミッド”の形成が可能になる。そして兵庫、和歌山両球団の代表とGMという『4役』を兼任する高下沢(こうげ・たく)と芦屋学園が描いた青写真の中で、最大の魅力になると考えていたのが野球部の海外進出だった。

 育成ピラミッドの頂点となる「プロ」に、高下はMLBメジャーリーグ)球団との提携も想定していた。メジャー球団から指導者が来て、技術指導はもちろん、学校で英語の授業を行う。夏休みに渡米し、ホームステイをしながら現地のサマーリーグに参加する。米メジャーの施設を利用して温暖な地域で海外キャンプを行い、そこでメジャーの現役選手や指導者から直接の指導を受けることもできる。球団経営やスポーツ医学などの分野で最先端を行く米国の知識も得ることができる。

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ジュニア選手たちにメジャー流のエキスを注入