メジャー球団の傘下に、日本の大学、高校、中学、小学校という、年齢別の育成部門がピラミッド型にぶら下がる。日本のジュニア選手たちにメジャー流のエキスを注入して人材を育成する。育て上げた逸材をピックアップして、マイナーやメジャーに送り込む。つまり、メジャーのユースシステムとして稼働することができる。高下は非公式に話し合ったメジャー球団側からも「それなら協力はできる」と前向きな回答ももらえたという。

 プロ・アマの壁が厳然として存在する日本で、NPBの球団がピラミッドの頂点に立つ形でのユースシステムは現時点では実現不可能だ。しかも現在、日本高等学校連盟に所属する高校が単独チームで海外での試合を行う場合、その都度高野連に申請して許可を得る必要がある。しかも「基本的にはダメ」というスタンスだ。その最大の理由は、加盟校間の実力の格差があまりに広がり過ぎないよう「可能な限り平等な条件にしないといけないから」と高野連側は説明する。海外遠征が承認されるケースも「姉妹校、自治体や教育委員会の姉妹都市。そういう大義名分が必要」と定義づけている。

 連盟という全体を統括する立場から見ると、強豪校であろうが、県予選で1回戦で敗退する普通の公立校であろうが、年1万円の加盟料を取り、それぞれを同格の1加盟校として見なし、同じルールのもとに、同じ通達を行う。

高校野球は、あくまで学校教育の一環。部員数がギリギリの公立校から、甲子園に出て優勝するようなトップチームでも、我々から見れば1加盟校には変わりない。だから、その“最大公約数が必要なんです」

 2013年、芦屋学園側が「甲子園を目指さない高校野球部」の構想を発表した際、日本高野連の竹中雅彦事務局長が示した見解がこれだった。あらゆる事柄に対し平等に、一定の線引きが必要になる。そうすると海外遠征のように費用負担が大きく、また、その間の授業や学校行事などはどうなるのかといった懸念など、あらゆる要素を踏まえると海外遠征は基本的に「アウト」という答えが導き出されるのだ。昨今は減少傾向とはいえ、2017年でも約4000の加盟校を傘下に置く巨大組織としては当然の姿勢だろう。

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海外遠征中の授業は?