プノンペン国際空港でいつも気になってしまうこと <下川裕治のどこへと訊かれて> (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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プノンペン国際空港でいつも気になってしまうこと <下川裕治のどこへと訊かれて>

連載「どこへと訊かれて」

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)

日本から全日空が就航したプノンペン国際空港。ロビーに日本語が響くようになった

日本から全日空が就航したプノンペン国際空港。ロビーに日本語が響くようになった

 カンボジアのプノンペン国際空港。この空港にエアコン付きのタクシーで乗りつけた記憶がない。いつもバイクかトゥクトゥクだ。体についた砂ぼこりをぱたぱたとはたいて落とし、ターミナルビルに入る。

 エアコンの冷気に包まれ、急に体が軽くなったような気になる。ロビーに椅子は少ない。チェックインがはじまるまで、フロアーをぶらぶら歩く。振り返ると、歩いた跡に小さな土の塊が残っている。靴に着いていた泥が乾いて落ちたのだ。周囲にいる人たちが妙に清潔に映り、ズボンにこびりついた泥はねを指先でつまんでとってみたりする。

 なぜ、僕はこんなに汚れているのだろう。チェックインの列に並びながら、考えてみたりする。

 カンボジアの人たちにとって、、飛行機に乗ることはまだ特別なことだ。だから普段着では空港にはやってこない。アイロンがかけられた衣類をきちんと着ている。外国人の多くは仕事でやってきた人たちだ。高級ホテルに泊まり、エアコンの効いた車で空港までやってくる。ぬかるんだ道など歩かず、大きな瓶に貯められた雨水で水浴びなどしないのだ。

 村からトゥクトゥクやバイクに乗って、直接、空港までやってくる僕は少数派なのだろう。空港ですっかり浮いてしまう。

 空港という空間に村からやってきてしまった旅人……。

 搭乗待合室に座っていると、足や腕が痒くなってくる。衣類をめくってみると、虫刺されの跡。体が冷えてくると、痒みは増すらしい。

 プノンペン国際空港──。いつも汚れが気になり、乗客を避けるように、待合室の隅に座っている。


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下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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