九大医学部は、1903(明治36)年に開設した京都帝国大学福岡医科大学が始まりだ。九州の全医学部のなかでもっとも偏差値が高く、医学部を目指す九州の生徒の憧れ的存在だ。

 前出の上医師が言う。

「1961年から、福岡市の東に位置する久山町の住民を対象とした生活習慣病の疫学研究を続けています。この『久山町研究』は、世界的に評価されています」

■廃校の危機を乗り越えた 長崎大“不屈”の精神

 その九大より歴史があるのが、長崎大だ。

 1857(安政4)年に海軍伝習所の医官であったオランダ海軍軍医ポンペが、長崎奉行所西役所で日本人に医学の講義を行った医学伝習所が始まりだ。

「わが国の医学部の中で最古の歴史を持っています。1945年の原爆投下によって廃校の危機に陥りましたが、戦後、急速な復興を遂げ、現在では、原爆後障害医療研究所を中心とした放射線災害医療、熱帯医学研究所を中心とした熱帯医療、感染症、地域医療などの研究で、国際的な医学部に発展しました。研究医コースを設置しており、研究医の育成にも力を入れています」(永安武医学部長)

 世界で活躍する人材を育成するため、1~4年次に外国人教員による「医学英語」を実施。3年次と6年次には、選ばれた学生を海外協定校に派遣している。

 17年の入学者120人のうち、県内出身者は43人、長崎を除く九州が47人で、4分の3が九州出身者だ。

 若手医師、医学部生、医学部志望者向けの外科手術手技トレーニングや模擬手術体験セミナーも積極的に行っている。

(文/庄村敦子)

※週刊朝日ムック『医学部に入る 2018』から抜粋