そう考えていくと、期待感のある中村を「強肩強打の捕手」として育成していくには一抹の不安が残る。

 そこでひとつの案として挙がるのが、中村の内野手転向案というものだ。

 甲子園で中村と対戦した秀岳館の鍛治舎巧・前監督は元NHK高校野球解説者らしい言葉で彼を評価していたものだった。

「バッティングは素晴らしいですよね。右方向に大きい打球を打てるのは魅力です。本人は、ジャイアンツのショートを目指しているのではないでしょうかね。坂本(勇人)とか二岡(智宏)とかね、ああいうタイプのような印象を受けます」

 中村は大会通算記録を更新する6本塁打をマークしたことで、ホームランバッターと捉えられがちだが、そのスタイルは中距離が打てるアベレージヒッターと見るべきだ。脚力があり、足もあって肩が強い。彼のそれぞれのツールのクオリティーを考えれば、いま守っているポジションに固執する必要はない。

 甲子園後のU-18ベースボールワールドカップでは木製バットに多少苦労した。

 プロに入って慣れればクリアできそうな程度だが、これからの成長具合を考えると、もっと大きく育てていくことも大切なのではないか。

 どちらの可能性を見いだしていくのかは球団の方針に委ねられるが、本人が捕手にこだわらないというのなら、坂本や二岡のような球界を代表する遊撃手へと育成するというのもひとつの手かもしれない。

 中村は守備型の捕手として君臨できる才能を持っているが、高校時代に打棒でさまざまな甲子園記録を塗り替えた選手がプロに入って守備の選手として落ち着いてしまうのは野球界としては絶対してはいけないことだ。

 スローイング優れた選手をコンバートをしても問題がないことはたくさんの選手が証明している。中村が内野手として成功を収めるという青写真はあり得ない話ではないはずだ。(文・氏原英明)