私立高校の授業料に対する補助の現状を見ると、国の奨学支援金は日本全国の世帯に提供されていますが、それに都道府県が独自の上乗せをしています。その結果、私立高校の授業料が無償化される世帯年収の上限は、都道府県によってかなり異なります。

 たとえば、岩手県、群馬県、山梨県、島根県、山口県、鹿児島県、沖縄県では、県内の私立高校の授業料平均まで全額補助されるのは、年収250万円の世帯までです。大都市を擁する自治体を見ても、大阪府は年収590万円まで、愛知県、福岡県は年収350万円までです。

 こうした数字と比較すると明らかなように、今回の措置で、東京都は頭抜けて高収入の世帯まで私立学校の授業料を無償化したのです。それは裏を返せば、もともと住むところによって世帯の教育費の負担(=子どもの私立学校への通わせやすさ)に差があったのに、その格差をさらに大きくしてしまったことに他なりません。

 もちろん、小池氏は東京都知事なんだから、東京のことだけを考えていればよいのかもしれません。でも、仮にもかつては長く国会議員を勤め、国務大臣の経験もある方が、自分の自治体は税収も潤沢だから、そこの住民だけ良ければそれで良しという都議選目当てのバラマキ政策を行い、結果として国民の教育格差の拡大を助長するような政策を講じてしまうのはいかがなものでしょうか。その視野の狭さと志の低さにはげんなりしてしまいます。

 もう1つは、小泉進次郎氏をはじめとする自民党の若手有志が提言した“こども保険”です。小学校入学前の子どもへの幼児教育・保育を無償化するため、厚生年金・国民年金の保険料に0.5%を上乗せして、児童1人当たり月2万5000円を支給しようという構想です。

 この構想は、自民党で議論されている“教育国債”(高等教育無償化の財源として使途を教育に特化した新たな国債)へのカウンターという要素はあるのでしょうが、そもそもの発想からして間違っています。

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