■無事抗がん剤治療を終え、プロポーズされるが、迷いも…

「7カ月の抗がん剤治療を乗り越え、定期検査でも『異常なし』と言われた日に、また食事に誘われ、プロポーズされました。突然のことでびっくりしたのと、うれしいのと2つ気持ちが交差し、自分の中でじっくり考える時間が必要でしたね」

 それから数日は、今までの彼の言動を思い返す日々。どん底にいるときも励まし、見守ってくれていた彼のやさしさがありありと蘇ってきたが、結婚となると、躊躇してしまう。

「大病を2度もし、両胸は人工乳房、髪はウィッグをつけている自分。そして年齢的に子どもも無理。しかも彼は私よりも6歳年下。『本当にこんな自分でいいのだろうか?』『彼には、もっとふさわしい人がいるのではないだろうか?』とグルグルと同じことを考えました」

 信頼している女性の先輩に相談すると、「あなたの病気のことや年齢のこと、いろんなことを承知している上で結婚しようと言ってくれているんだから、人柄は絶対に間違いない。とてもいいお話じゃない』と背中を押してくれた。

 そして、再度、今までの彼の言動を思い返した。自分の病歴や長所、短所を含めた性格、これからの可能性などを話しても、彼の態度は一切変わらなかった。そのことが結婚への決定打になり、彼の誠実さに応えたいと思った。

「結婚の意思を伝えると彼は、とてもうれしそうでした。『闘病中は彼のこんな笑顔に支えられてきたんだな』としみじみ思い、穏やかで温かい気持ちになりました。2度目の乳がんがわかったときに、これを克服したら結婚も考えてみようと思いましたが、まさか自分が本当にするなんて思わなかったですね。人生はよくも悪くも自分の思うようにならない。だから、大変ですし、そして楽しい。この縁を大切したいと思いました」

 こうして48歳で人生の新たな一歩を踏み出したのだ。(取材・文/須藤桃子)

須藤桃子(すどうももこ)
1965年東京生まれ。フリーライター。女性の生き方、料理、健康、ペット(特に)系を中心に活動