下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
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この明るさ。少しは南国気分が伝わるだろうか
この明るさ。少しは南国気分が伝わるだろうか

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第51回は台湾の高雄国際空港から。

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*  *  *

 台湾の高雄国際空港に降りたのははじめてだった。3月初旬。日本はまだシベリア寒気団にすっぽり覆われていた。

 いい天気だった。空港を出て体をのばす。

「南にきた」

 そんな言葉が自然に出てしまった。気温は27度……。初夏の風を思い出した。

 到着した街の気候は、旅の気分を左右する。冬のモスクワの空港に降りたときなどは気分が落ち込む。しかしモスクワという街の気候をある程度、想像しているから、それほど戸惑うことはない。

 しかし、「えッ」とつい呟いてしまう空港がある。僕の場合、台北の桃園国際空港である。

 台湾は暖かい、いや暑いというイメージがある。しかし桃園国際空港を出ると、冷たい雨と寒風に晒され、思わず襟元を抑えることがよくある。日本が寒い時期に台北を訪ねるときだ。

 台北は意外に寒い。湿度も高い。冬場はコートが必要で、ひとりでホテルの部屋にいると、暖房がほしいと思う。

 雨も多い。それも南国のスコールではなく、日本の梅雨や秋雨を思わせるような雨が降り続く。

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