4ツ星以上のホテルが何軒もそびえていたが、宿泊は断られた。外国人を泊める資格がないというのがその理由である。資格を取得する必要もないのだ。中国人で部屋は埋まってしまう。外国人を受け入れるのは面倒なのだ。好景気に浮かれる中国の街の特徴だった。
しかたなく、外国人も泊まることができるというホテルにタクシーで向かおうとした。しかしタクシーの空車がない。庫車の人がこう教えてくれた。
「この街は最近、相乗りをしないとタクシーに乗れない」
以前の上海、いやウルムチを思い出した。とんでもなく景気がよく、タクシーが足りないのだ。郊外の油田の影響ともいうが、中国政府のシルクロードをなぞる経済政策「一帯一路」の現実が庫車の街を包んでいた。郊外には次々に巨大な工場ができている。膨大な資本が投下されているのだろう。
街はものものしい警備網が敷かれている。ホテル、市場の入り口などそこかしこにX線のセキュリティーとボディーチェックが待っている。ウイグル人の反発を徹底的に抑えるためだ。そしてこの街に次々と漢民族が移住し、「一帯一路」は進んでいく。その象徴となっているのが、庫車駅でもあった。