さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第45回は新疆ウイグル自治区・庫車駅から。
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庫車(クチャ)を訪ねたのは5年ぶりだった。中国の新疆ウイグル自治区。タクラマカン砂漠の北端にある街だ。前回はウルムチから列車に乗って庫車に着いた。今回はトルファンから。やはり列車だった。
トルファンで庫車までの行き方を聞くと、列車のほうがバスより早いといわれた。
タクラマカン砂漠の北端を、ウルムチ・トルファンとカシュガルを結ぶ鉄道が走っている。列車への信頼度が高いのは、それだけ気候が厳しいせいだろう。それでも8時間近くかかった。
到着した庫車の駅ではだいぶホームを歩かされた。やっと出口に立ち、つい駅舎を見あげてしまった。5階ほどの新しい駅舎が建っていたのだ。かつては平屋の駅だった。
5年の間になにかが起きた……。
市街に出て愕然とした。庫車は駅の近くに漢民族の街が広がり、その奥、亀滋古渡 と書かれた橋を渡ると、ウイグル人街という構造になっていた。市街地は当然、漢民族街で、通りに沿って、10階以上あるビルがずらりと並んでいた。以前は2階建てまでの街だった気がするが。