また、実際に構想を実現するためには、事業主や建築設計者、許認可を出す自治体や官庁などにも理解してもらわないといけない。地権者の同意はもちろん、地域住民の理解も必要である。

 立場が異なり、利益が相反する関係者を調整しながら賛同を得るのは大変な労力が必要だ。

 だが、鈴木氏はこう言う。

「いいものをつくりたい、住みやすく魅力的な街にしたいという思いは、みんな共通です。その接点を大切にすること。もう一つは、みんなの意見を否定しないですべてに耳を傾けること。これはすべての意見を反映するということではありません。一部だけでも取り入れたり、参考にするだけでも十分です。新しい街づくりに自分も参画したという意識を持ってもらうことを大事にしました」

 そのためには、はじめから精緻な計画を作成するのではなくて、あえて余白や未完成の部分を残しておき、議論の中で埋めていくような工夫もしたという。

 都市デザインの仕事は、決まった就業時間内だけ仕事をすればできるというものではない。

 そもそも、都市デザインの「実務」など、誰も知らない時代から、鈴木氏は都市デザインを手がけてきた。

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