小平奈緒、高木美帆らのメダル量産が期待されている日本女子スピードスケート。小平は昨年12月に行われたW杯で世界新記録を更新、長野での平昌五輪代表選考会女子500mで優勝を飾るなど、昨季から国内外のレースで24連勝を挙げている。高木も平昌五輪代表選考会の女子3000mで優勝。1500mでは今季W杯で4勝を挙げ、平昌五輪でも有力なメダル候補に名乗りを上げているが、彼女たちの行く手には多くのライバルたちが待ち構えている。
とりわけ、開催国・韓国の鼻息は荒い。韓国の氷上競技と言うと、ショートトラック・スケートの強さを連想しがちだが、実は近年はスピードスケートもメダルを増やしている。男女合わせた五輪通算で金4、銀4、銅1のメダルを獲得しており(男女合わせて)、前回ソチ五輪でも金1、銀1と2つのメダルを獲得した。
そんな韓国スピードスケートのシンボルと言える選手が、小平の前に立ちはだかる。イ・サンファがその人だ。
中学の頃から500mで頭角を現したイ・サンファは、2010年のバンクーバー五輪で韓国女子スピードスケート史上初・アジア女子選手としても初の金メダルを獲得した。さらに、2014年のソチ五輪でも同種目で連覇。五輪連覇は女子スピードスケート史上3人目となる快挙だった。
厳しいトレーニングと徹底的な自己管理を行う上に、メンタルの強さにも定評がある彼女の別名は“氷上の女帝”。その呼び名の通り、カリスマ性あふれるキャラクターで、ソチ五輪直後のとあるトークイベントでは「スランプとは、自分にウソをつく内面的な仮病のようなもの」とキッパリと言い切る勝気なスケーターでもある。
スター選手ともなればCMに出演することも多いはずだが、「撮影をすると1日の練習ができなくなる」との理由で、ほとんど断っているのだからストイックだ。
ただ、昨季は慢性的な膝のケガに加え、ふくらはぎの筋断裂に見舞われた。それでも「韓国で開催される冬季五輪に出場するのは人生に一度あるかないかのチャンス」と意欲を見せてきた。
今季のW杯では小平との対決で全敗するも、シーズン自己ベストの36秒71を記録。小平(36秒50)との差を0.21秒まで縮めている。着実にコンディションを上げてきているだけに、小平も油断できないだろう。韓国のスポーツ紙『スポ―ツ・ソウル』のスケート担当キム・ヒョンギ記者もこう展望している。