そこで私は、そういった類いの本やお話を、息子から一切遠ざけるという実験をしてみました。せっかく産婦人科でもらった絵本も読まずに封印しました。

 そして、3歳になった息子に、満を持して聞いてみたのです。「ママのおなかの中にいたときのこと覚えている?」と。

 すると、返事は「覚えてるよ」。「よし! うちの子は覚えている派だ!」とドキドキしつつ、「どんなだった? ママの声聞こえた?」と質問を続けました。すると、息子からは「ママは、まことくん臭い臭いって言ってた」という驚愕の答えが!! そんなの、おなかの中にいるときも生まれてからも一度も言ったことないのですが。一体息子は何を言っているんだ?と思いつつ、「あったかかった? 冷たかった?」と聞くと、「すごい冷たかった」と。もうママのおなかの中もママ自身も相当嫌な感じです。

 しかし実は、私はもうひとつ仕掛けをしておいたのです。生まれるまでの絵本は遠ざけていましたが、赤ちゃんの一般的な生まれ方、「ママのおなかからせまいトンネルを頑張って一生懸命通り抜けて生まれてくるものだ」という話だけは伝えておいたのです。ようやくこの時がきたと、「ママのおなかのトンネルを通り抜けるとき、どうだった?」と聞くと、案の定「大変だった」という答えが!

「それはないね! まことくんは帝王切開っていって、ママのおなかをチョキチョキ切って生まれてきたから、狭いトンネル通ってません! ひょいっと抱かれてラクチンして出てきましたー!」と得意顔で本当のことをバラすと、「あ、そうなの。じゃあ、それだね」と適当に返されました。私は3年もかけて実験したというのに、息子にはどうでもよさそうすぎて、少々ショックでした。

 実験の被験者が私の息子1人なので絶対にとは言えませんが、やっぱり、子どもって、大人が話していることを胎内記憶という自分の経験として話しているんじゃないか、と思うのです。そもそもカンタくんの話だって、カンタという名前ありきで、北風小僧のカンタロウという発想が出てきたわけです(多分)。息子はもうすぐ4歳になりますが、最近はコウノトリが赤ちゃんを運ぶ映画を見て、「ぼくは重くてトリさんから落ちちゃった」と、いかにも本当のことのように話すようになりました。そして、小さい頃からひと月ずつ作っているフォトブックを取り出してきて、コウノトリが写っていないか探していました。

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4歳近くなった息子に改めて聞いてみると…