私も、息子がおなかの中にいるときから胎内記憶に関しては気になっていました。ただ、ここまで盛り上げて書いておきながら夢がありませんが、実は、私は子どもがもつ胎内記憶に対して懐疑的です。正直、ウソだと思っています。だって、0歳の初期の、親が2時間おきに起きてミルクをあげねばならぬという死ぬほど苦労したときの記憶はきれいさっぱり忘れておきながら、胎内の記憶はあるなんて変じゃないですか。
息子を産んで産婦人科から退院するとき、お祝いとして、息子の手形と写真がのったアルバムと、赤ちゃんが生まれてくるまでを描いた可愛い絵本をもらいました。こうした大人の描いた絵本こそ、曲者だと思っています。
こうした絵本の中には大体、赤ちゃんがママのおなかの中ですくすくと育ち、産道を通って出てくるまでのストーリーが描かれています。おなかの中で水にぷかぷか浮かびながら、一様に「あったかいなあ」「気持ちいいなあ」というようなことを言います。終盤になると、耳が発達してくるので「パパとママの声が聞こえるぞ」とか言い始めます。最後は、狭い産道を頑張ってぎゅうぎゅうと通り、スポーンと出てきて誕生。大多数の子どもは、3歳になるまでにそういった絵本を読み聞かせられるのではないでしょうか。身も蓋もない話ですが、そうした「親が話す子どもが生まれるまでの過程」が頭に残り、自分の胎内記憶として刷り込まれるのではないか、と思います。そもそも、生まれたての赤ちゃんは「眠い」という感覚さえ自分ではわからないそうです。眠る前にぐずるのは、眠気を不快に感じるためだと聞きます。それより小さな子が、「冷たい」「温かい」という言語も知らずに、当時の体の感覚だけを3年間も覚えていられるものでしょうか。