教師からのいじめを受けてきた男子中学生は「学校に問題があるのに、学校を休むと僕が問題にされる」と私に訴えてきました。彼が感じてきた理不尽さは「誰にも共感されなかった」とも話してくれました。

 いずれも2015年に「9月1日は子ども自殺が多い」というニュースが流れた後の話です。「学校よりも命が大事」なんてメッセージは、子どもたちに届いていません。いまだにこの国では学校で苦しむ子どもに冷たいのです。

 多くの方にお願いしたいのは、子どもが弱音を吐いたら気持ちを聞いてほしい、ということです。

 15年間、学校で苦しんだ人への取材を続けていますが「気持ちを聞いてくれる人に出会って状況が変わった」という声をよく聞きます。その相手は友だちや親などさまざまです。「気持ちを聞く」という行為は一見、抜本的な解決策に見えません。しかし、一番大切なのは、まずは本人の気持ちが救われることです。そこから新しいスタートなのです。

 どうしてつらいのか、どうして休みたいのかを尋ね、その気持ちを一人でも聞いてくれる人がいれば状況は変わります。そういう人をたくさん見てきました。

 学校を変える、教育制度を変える、そういうことも必要です。しかし、もっと誰にでもできることの積み重ねのなかに、救われる魂があるのだと私は思っています。(文/石井志昂)

===子どもの相談先一覧===
24時間子供SOSダイヤル 電話0120-078-310
子どもの人権110番 電話0120-007-110
チャイルドライン 電話0120-99-7777

著者プロフィールを見る
石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

石井志昂の記事一覧はこちら