教師からのいじめを受けてきた男子中学生は「学校に問題があるのに、学校を休むと僕が問題にされる」と私に訴えてきました。彼が感じてきた理不尽さは「誰にも共感されなかった」とも話してくれました。
いずれも2015年に「9月1日は子ども自殺が多い」というニュースが流れた後の話です。「学校よりも命が大事」なんてメッセージは、子どもたちに届いていません。いまだにこの国では学校で苦しむ子どもに冷たいのです。
多くの方にお願いしたいのは、子どもが弱音を吐いたら気持ちを聞いてほしい、ということです。
15年間、学校で苦しんだ人への取材を続けていますが「気持ちを聞いてくれる人に出会って状況が変わった」という声をよく聞きます。その相手は友だちや親などさまざまです。「気持ちを聞く」という行為は一見、抜本的な解決策に見えません。しかし、一番大切なのは、まずは本人の気持ちが救われることです。そこから新しいスタートなのです。
どうしてつらいのか、どうして休みたいのかを尋ね、その気持ちを一人でも聞いてくれる人がいれば状況は変わります。そういう人をたくさん見てきました。
学校を変える、教育制度を変える、そういうことも必要です。しかし、もっと誰にでもできることの積み重ねのなかに、救われる魂があるのだと私は思っています。(文/石井志昂)
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