熊本地震の直後、避難所暮らしや車中泊する被災者が多く報じられ、倒壊した一戸建て住宅の映像が何度もテレビに写し出されました。しかし、マンションでの避難生活の実態はあまり報じられませんでした。
東日本大震災と熊本地震の現場に直面した、マンション管理大手・大京アステージの遠藤智樹さんに、マンションで地震に見舞われたら、私たちはどう生活すればいいのか聞きました。
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――熊本地震のあと、車中泊をされている方をテレビで見ました。私はマンションで一人暮らしをしていますが、車もなく、サバイバル生活の経験もない。いま地震が起きたらどう生活していいのか、正直見当がつきません。
確かに不安ですね。震災直後は「このままマンションに住み続けることができますか?」という問い合わせが多かったです。
実際に、外壁のタイルがはがれたり、共用廊下の壁に大きな亀裂が入ったり……。なかには、亀裂の隙間から鉄筋が見えているマンションもあり、不安になって車中泊を選んだ方の気持ちも分かります。
――いま東京のマンションで一人暮らしをしていますが、やっぱり部屋にいるのは危険ですか。ご近所との付き合いもないので、避難所生活も不安です。
一概に「安全」「危険」とは言いがたいです。ただ「亀裂が入ったマンションは危険」とも決めつけられません。建物のどの部分に亀裂や損傷が入ったかが重要で、これを専門家に調査してもらう必要があります。また、建物によっては、地震の揺れに対して、ある程度の損傷を前提としている部分もあります。
――そうなんですか。
実は、柱と耐力壁に被害が無ければ、マンションが崩れる可能性は低いと考えられます。少なくとも当社が管理するマンションで、東日本大震災、熊本地震で倒壊した例はありませんでした。熊本でも、ほとんどの人が自宅での生活を早期に再開し、その後も住み続けています。