慣れない避難生活が長期にわたると精神的にも肉体的にも、かなりの負担がかかります。健康面を良好に保つ上でも良かったのではないでしょうか。

――地震のとき、遠藤さんは熊本の支援に行かれたのですか。

 地震発生後、すぐに東京から福岡経由で支援に向かったのですが、途中に立ち寄った福岡のホームセンターで、ありったけの南京(なんきん)錠とチェーンを買いました。

――南京錠?!

 はい、強い揺れが発生すると、雑壁と呼ばれる非耐力壁にひび割れが入り、それによって玄関ドアの枠が圧迫されて変形してしまうため、玄関ドアが開かなくなるケースがあります。まずはバールなどでこじ開けますが、一度開けると、今度は施錠できなくなってしまいます。そこで、南京錠とチェーンで仮施錠(応急処置)を行います。

 すぐに修理すればよいのでは、と思われるかもしれませんが、震災後は人手も資材も不足し、何より安全確保のための対応が優先されることから、こうした工夫が必要になります。居住者同士でこれらの救出作業を行ったマンションもあったので、管理組合として、工具セットを備えておくことをおすすめします。

――なるほど。皆さん、地震後はどのような生活をされていたのですか。

 熊本地震の場合、電気は比較的早く復旧しましたが、水道とガスの復旧まではかなりの時間がかかりました。ガスは使えなくても何とか我慢できましたが、水道がなかなか復旧しなかったのには困りました。

 水道と言うと、飲み水やお風呂のイメージが強いですが、実は、トイレを1回流すのにもバケツ一杯分の水が必要なのです。水を運搬・保管するための容器や、簡易トイレ(便袋)などの防災グッズを管理組合として備えていたマンションでは、とても助かったとの声を数多く聞きました。

――皆さん、いろんな工夫をされたのですね。

 自助7割、共助2割、公助1割。これは阪神・淡路大震災の経験をもとに、大規模災害における援助の実態として語り継がれているものです。地震の被災エリアが広範囲になればなるほど、行政の支援(公助)は届きづらくなりますし、管理会社の現地スタッフも被災者となっているので、すぐに駆けつけることは難しくなります。つまり、被災後の数日間は、自らの身は自らで守る(自助)ための備えが必要になります。

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