8月18日の長崎新幹線・諌早―長崎間(約21キロ)に続き、北陸新幹線の金沢―敦賀間(約125キロ)や、北海道新幹線の新函館―札幌間(約211キロ)で相次いで起工式が行われた。北海道大学大学院の宮脇淳教授は、これら新規の新幹線事業が人口減社会に本当に必要なのかと疑問を抱き、問題点を指摘する。
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財政再建のために消費増税を推し進めた野田佳彦首相が、一方で合計で3兆円以上の費用がかかる整備新幹線にゴーサインを出すのは明らかに矛盾で、財政のガバナンスの点から見ても疑問が残る。
しかも、開業の時期は着工の10~24年後だ。日本の人口はすでに減少へと転じており、3区間が完成するころには、地方では人口の大幅な減少、都市部では人口の集中と過度な高齢化が進み、国家や自治体の財政はいま以上に疲弊しているだろう。そうしたなかで、旧来と同じような手法で公共事業を続けていてもいいのだろうか。
整備新幹線の建設にはもう一つ大きな問題がある。新幹線の通過駅となる地域住民にとってのメリットが見えにくいことだ。
新幹線が開通すればストロー現象で、ヒトやモノ、カネは中核都市に吸い取られる。乗降客が減った在来線を第三セクター方式で維持することになれば、地元の自治体は多額の費用負担を迫られることになりかねない。それどころか廃線にまで追い込まれ、地元に負債だけを残す危険さえある。
※週刊朝日 2012年9月7日号