子どもが気軽に利用するためには、場が近くにあることも重要です。そう考えると、いまだフリースクールは数が足りていないと言わざるをえません。場が少ないために人が集まらず、設立・維持が難しくなり、場が増えないという悪循環は、特に地方で深刻な問題です。

 2つ目のハードルは「経済的な理由」です。フリースクールは原則、公的な支援がありませんので、親が学費を負担しなければいけません。文科調査によれば月会費の平均は3万3000円。私立中学校の月額平均学費は5万円。私立よりは安いですが、無料の公立中学校にはかないません。

 これら2つのハードルは原因がハッキリしています。公的な支援がないためです。公立小学校であれば一人当たり80万円、公立中学校であれば一人当たり100万円の公的資金が投入されています。私立には私学助成もありますが、フリースクールにはありません。フリースクールに通うための奨学金もありません(全国で唯一、三重県遊技業協同組合は津市内のフリースクールへの給付型奨学金を実施している)。

 公的支援がないため職員に待遇面でガマンしてもらう、寄付金を集めるなど、各団体は工夫していますが、ほとんどのフリースクールが経営に苦しんでいます。

 そして最後の理由が「心理面のハードル」です。

 以前、20歳の女性に会いました。彼女は中学1年生から不登校でしたが、フリースクールにも適応指導教室にも行きませんでした。その間、ほとんどの時間を家で過ごし、「孤独がつらかった」と語ってくれました。なぜフリースクールへ通わなかったのか。彼女はこう答えました。

「フリースクールに行ったら自分が本当の不登校になってしまうから」

 まったく学校へ行けなかったのですから、客観的に見れば彼女はまぎれもなく不登校でした。しかし「不登校になってはいけない」と彼女は思い続けていたそうです。

「不登校なんて許されない」「不登校は弱い人間がなるもの」「立ち直ってがんばらなければいけない」「学校に行かないと未来はない」。彼女は自分が存在していることさえ許せなかったそうです。心理的なハードルは人それぞれだと思いますが、こうした思いを抱えている人は彼女だけではありません。

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