世の中には「縁切り」を望んでいる人がたくさんいる……。この事実に驚かされた。特に、パワースポットのブログを運営する筆者のもとには、そういった声が多く届くのだ。しかも、切りたい縁とやらは、「男女の縁」なのだろうと軽く考えていたが、ストーカーや切るに切れない血縁、人間関係に始まり、病気、悪癖、悪運など、「切りたい」ものは人の縁(えにし)だけではないことに気づいた。自分ではなんともしようがなくなってしまったからこその「縁切り祈願」なのだろう。そんな縁切りスポットを東西でいくつかご紹介してみたいと思う。
●人々の願いは今昔、あまり変わらない
縁切り祈願の歴史は古い。古の神社の縁切りには、源氏物語や平家物語に登場する女性などが由縁となっている。禍々しい言い伝えの残るお社を、パワースポットとしてご紹介していいものなのかはなかなか難しい問題だが、一方で縁切りスポットは縁結び祈願としても有名だったりもする。「悪縁を切って良縁を結ぶ」が、合言葉である。
●西の縁切りは京都に集中
<安井金比羅宮(京都市東山)>
日本で一番有名な縁切り神社といえば、京都の安井金比羅宮だろう。白いお札がびっしりと貼られた碑の下を這ってくぐっているタレントさんが登場する番組を何度見たことか。縁切りのお宮としてはそんなに古くはないが、今では京都の定番スポットとなっている。祭神は日本三大怨霊として知られる「崇徳天皇」、そして「大物主神」「源頼政」の3柱である。四国のこんぴらさんを勧請したお宮であるが、今では「縁切り」祈願が一番となっている。
<菊野大明神(京都市中京区)>
法雲寺の境内にあるお社が菊野大明神と豊川大明神を祀った祠。ご神体は「深草少将腰掛石」で、別名「縁切り石」とよばれている。小野小町に恋した深草少将は「百夜自分のもとへ通ったならば受け入れる」という小町の言葉を信じ、通い続けたあげくあと1晩というところで凍死してしまった。この百夜通いの途中で休んだと言われているのが「深草少将腰掛石」。石に込められた少将の無念や悲しみが、男女を別れさせ、縁を切る力があるのだとか。
<鉄輪の井戸(京都市下京区)>
「鉄輪(かなわ)」とは、やかんや鍋などを乗せる鉄の輪、五徳ともいわれる。これを頭にかぶって三本のロウソクを立て丑の刻詣りに用いられた。世阿弥の能楽「鉄輪」(自分を捨て新しい女のもとへ走った夫に復讐しようと、貴船宮[現・貴船神社]で丑の時参りをした女が鬼となる話)に登場する鬼女が、この井戸の水を使ったなどの怨念話が残る井戸。井戸の水を縁を切りたい相手に飲ませると悪縁が切れると伝わり、今は枯れた井戸でもペットボトルに入れた水をこの場所に供えて祈願し、持ち帰った水で同じような効果を得ようとする人もいるのだとか。似たような話は、宇治橋西詰にある橋姫神社にも残されている。