ドルトムント(ドイツ)とモナコ(フランス)によるチャンピオンズリーグ(以下CL)・準々決勝第1戦。ドルトムントでの爆発事件の翌日に試合は延期され、結局、ドルトムントは2-3で敗れた。
現在、欧州で最も注目されている若手、18歳のキリアン・ムバッペに明らかなオフサイドポジションから先制される不運な立ち上がりとなり、スヴェン・ベンダーのオウンゴールで追加点を献上。後半には香川真司のアシストからウスマン・デンベレが決めて1点を返したものの、79分にはまたしてもムバッペにゴールを許してしまう。その5分後に香川が見事な個人技で再び1点差としたが、反撃もそこまで。3つのアウェイゴールを喫した敗北により、ドルトムントは厳しい立場に立たされている。
前日に事件が起こった後、UEFA(欧州サッカー連盟)は両クラブとの協議の上、試合を翌日に延期することを即座に決めたが、これに対してドイツのメディアは激しい批判を展開。『Bild』紙は「どうして今日(事件翌日)、ドルトムントにサッカーができるというのか」と早すぎるリスケジュールに疑問を投げかけ、『Welt』紙(電子版)は「この試合は24時間後に行われるべきではない。それはあまりにも無責任だ」と同調した。そして試合会場では、「(事件翌日の)午後6時45分にキックオフ。冗談だろ? くたばれ、UEFA」と書かれたバナーを掲げるホームファンの姿があった。
レギュラークラスのDFマルク・バルトラは、爆発による負傷とガラスの破片の除去のために緊急手術を受けた。右手首の骨折が判明し、全治4週間と診断されている。この文字通りの戦力ダウンだけでなく、チーム全体が被った精神的なダメージは推して知るべしだ。まして、このチームは20歳前後の選手が多い若いチームである。2失点目のベンダーのオウンゴールは、不安定なメンタルが引き起こしたものと言えなくもない。
「(選手たちには)少なくとも、あと2、3日の休養が必要だった」と試合後にトーマス・トゥヘル監督は嘆き、UEFAが高圧的に翌日の延期を決めたと主張している。
過密日程が組まれているエリートレベルのサッカーでは、スケジュールを大きく動かすことが難しい。テレビ放映権やスポンサーなど、現場の当事者以外の意向も汲む必要があるからだ。
しかし、プロスポーツは選手やファンがいなければ成り立たないし、CLのようなトップレベルの舞台には、あらゆる意味でそれにふさわしい状態の選手にプレーしてもらうべきではないか。世界がますます不安定な情勢になっていくなか、不測の事態への対処は、サッカー界全体で考えていく必要がある。(文・井川洋一)