えびすさまとは七福神のうちの1柱で、多くの場合、釣りさおと鯛を持つ姿で描かれている。えびす神の話も長くなるので詳しくは割愛するが、多くの別名を持ち、海外に由来を持たない(つまり仏教やヒンズー教、国産みの話などの影響を受けない)珍しい神さまであるのだ。いうなれば、日本人にとってはとても便利で親切な神さまなので、たぶんお留守番の役も担わされたのだと思う。

ちなみに、すでにお気づきの通り「神無月」の逸話が、俗説であるなら、留守神・恵比寿は、俗説の上に立つ俗説となる。

●東京名物はここから誕生した

 その上、この俗説に寄ったお祭りまでできてしまう。「お留守を務めてくれる恵比寿さまにお礼を」ということで、10月あるいは11月に行われる「えびす講」というものが、特に東日本で流行した(ちなみに西日本では1月にえびすさまのお祭りが行われることが多い)。えびすさまといえば商売繁盛の神さまというわけで、特に東京ではだいこくさまとともにとても人気のある神さまとなった。商工人が集まった日本橋界隈ではえびす講は大人気で、徳川家繁栄を祈願されたえびすさまを祭る「寶田恵比寿神社」(東京都中央区日本橋本町)では毎年10月20日に市が立つようになる。これは、一帯の商人たちの家で行われるえびす講で使われるタイや神棚を販売する目的で始まったものだが、次第にいろいろなものが売られるようになった。なかでも江戸名物の浅漬け大根は、売り子が通り過ぎる客に向かってかけていた掛け声「べったら、べったら、買わないで通ると着物にくっ付くよ」が、商品名「べったら漬け」となった。今では、恵比寿さまのお祭りといえば、「べったら漬け」とセットとなっており、「金がつく、運がつく、縁がつく」という縁起物扱いをうけるまでになっている。

●出雲大社もべったら祭りも俗説のおかげで繁盛

 神さまの会合話は、その昔の出雲大社の関係者が言い始めた話だという。神さま同士の縁を結ぶための会議だといい、縁結びとして名高い出雲大社はこの話でますます箔(はく)をつけた。

 そして、恵比寿さまもこの俗説のおかげで10月は忙しい月となった。今でも日本橋のべったら祭りには、400〜500軒もの露店が並ぶ盛況ぶりである。もちろん、10月19日・20日には、JR恵比寿駅のそばにある恵比寿神社や新宿の稲荷鬼王神社(境内に恵比寿神社がある)などでも、べったら祭りが行われている。

「神無月」の俗説なしでは、「べったら祭り」のこのにぎわいもなかったかもしれない。俗説のおかげといえるだろう。文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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