今年もすでに10月。10月はご存じのように「神無月」と呼ばれている。これは12月を「師走」と呼んだように陰暦の呼称だ。それぞれの月の呼び名には各いわれがあるのだが、あまりに昔すぎて、本来そう呼ばれる由縁がほとんどわからなくなってしまっている。12月の「師走」は「お坊さんが走り回わるほど忙しいから」といわれているが、これもどうやら平安時代に作られた俗説らしく、この平安期にすでに「しはす」とよばれる起源が不明と書物には記されている。
●10月に神さまはいないのか?
陰暦10月の呼称「神無月」が注目を集めるようになったのは、このところの神社仏閣ブームで、「縁結びの相談をするため、全国の神さまが出雲に出かけられ日本中に神さまが不在となるため」という俗説が一気に広がったからだ。さらに出雲では10月を「神在月」と呼んでいる、というところまで広く知られるに至り、「10月にお参りしても神さまいないんでしょ?」などという人もあまたが出る始末。
日本語の難しいところは、漢字が持つ意味がだんだん狭まってきて、後世に誤解を招く表記となってしまっているところだ。「神無月」の「無」というのは、もとは「の」の代わりに使われていた言葉だそうで、たとえば6月を指す「水無月(みなづき)」が「水のない月」だとすると、梅雨にあたるこの時季の日本では、無理がある解釈だということがお分かりいただけるかと思う。
つまり、「神無月」は「神の月」という意味であり、秋の収穫に感謝し、1年の無事をお祝いすべき月という意味である。
●お留守番の神さま
ところで、この「神さまいない」話には続きがあり、「神がいない月があることに困った民衆が神さまにお願いしたところ、お留守番の神さまを作ることにした」のである。この留守番担当が、えびすさまだ。