広川徹先生(撮影/写真部・工藤隆太郎)
広川徹先生(撮影/写真部・工藤隆太郎)
医系小論文の5課題(『医学部がわかる』より)
医系小論文の5課題(『医学部がわかる』より)

 偏差値だけでは測れない「医師にふさわしい資質」を見るため、多くの医学部入試で「面接」と「小論文」が課されている。この最終関門の結果次第で不合格になることも。『医学部がわかる』(AERAムック)では、受験生の弱点を熟知する河合塾の専任講師・広川徹先生に「特効薬」を処方してもらった。本誌から、小論文で大切なことについて抜粋して紹介する。

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 小論文には、極めて知的な能力が求められています。

 課題文や資料を読み解く「読解力」、設問の要求に正しく応える「応答力」、読み手に伝わる「文章力」、なかでも最も重要なのが、具体的かつ論理的に論述できる「説得力」です。文章のうまい下手を見るものではないのです。

 小論文の読解・思考のベースになるのが知識で、インテリジェンスなしには太刀打ちできません。特に国公立大学では高度な医療知識が求められる傾向にあり、2015年度の大阪大学後期入試では、「アミノ酸配列の決定法」や「発がんのメカニズム」について、英語の論文が出題されました。

 主に国公立大ではインテリジェンスに、私立大ではヒューマニティーに関連した出題が多い傾向にあります。大学ごとに特徴があるので、志望校の過去問にあたり、傾向をつかむことが重要です。

 小論文は出題形式も多岐にわたり、課題資料や設問に即して分類すると、次の6パターンに分けられます。

(1)課題文読解型I:日本語の課題文を読解し、指定されたテーマについて意見論述を行う
(2)課題文読解型II:日本語の課題文を読解し、要約や説明、意見論述を行う(設問は複数)
(3)図表分析型:グラフや表の課題資料を読解し、指定されたテーマに即して意見論述を行う
(4)テーマ型:課題文や課題資料がなく、指定されたテーマに即して意見論述を行う
(5)英文問題:英語の課題文を読解し、日本語で要約や説明、意見論述を行う(設問は複数)
(6)理科論述型:理科的リテラシーを測る、理数4教科(物理・化学・生物・数学)の総合問題

 国公立大は(2)、(5)、(6)が多く、私立大は(1)、(4)に集中しています。

 ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNS で情報発信することは、文章力のトレーニングになるという見方もあるようです。確かに、一定のテーマやストーリー性をもって情報発信している場合は知性が感じ取れますし、ロジカルに展開できるなら有効でしょう。しかし、SNS で発信される情報の多くは瞬間的な感覚の切り取りであり、仲間内での感覚の共有に過ぎません。言語表現をベースとする小論文の練習には、向かないのではないでしょうか。

(構成・岡野彩子)

※AERA Premium『医学部がわかる』(AERAムック)より

広川 徹(ひろかわ・とおる)
河合塾小論文科専任講師。医学系小論文の中心講師として、長年にわたり医学部進学指導の最前線に立つ。医・自然科学系小論文のテキストや「全統論文模試」などの作成チーフとして活躍。医療に関する知識を体系化し、効果的に表現する授業は、塾生からの信頼も厚い