入店すると通常の大きさのおちょこと水を飲む用のコップ、料理に使うお皿が渡される。日本酒は冷蔵庫にズラリと並んだ一升瓶から自分でおちょこに注いで飲み放題。同じ銘柄を続けて飲みたい場合は、一合からのちろりもあり、燗(かん)もできる。

 カセットコンロや鉄板、土鍋などがあり、食材持ち込みで料理を作れる。鍋で料理を作りつつ、持ち込んだおでんを温めていた20代の若者グループは、「普通の居酒屋の“日本酒飲み放題”は、たいてい時間制限がありますし、料理を頼んだら結局料金も高くなってしまいますからね。やまちゃんはその心配がないので、これまで4回くらい飲み会で利用しています」と話していた。

 いい肉をたっぷり焼いて食べまくる“日本酒と肉を食べる会”や、日本酒好きが集まる女子会などの予約も多い。会のなかにプロのシェフがいて腕をふるうこともあるという。逆にひとりやふたりで日本酒を楽しんでいく人の予約もあり、いろいろな銘柄を飲み比べしたい人にはもってこいの店といえよう。日本酒は決まった銘柄というわけではなく、10日もすれば100種類の銘柄が違うものに入れ替わるような仕入れ方をしている。

 最近、店主のやまちゃんこと山上さんが頭を痛めているのは、大きな企業が「やまちゃん」をまねたのか、ほぼ同じような業態で店を展開し始めたこと。

「私は日本酒が好きでやっているんですけど、日本酒を金もうけの道具にされているような寂しさがあります。うちのような個人店は太刀打ちできない部分もありますからね」と危機感も感じているやまちゃん。普段はニコニコ顏なのだが、この時ばかりは苦渋の表情だった。

 このスタイルで営業していくため、店内の装飾はまったくなし。会議室のようなところで日本酒を堪能できる。逆にそれがおもしろいと思えたら、ぜひ「やまちゃん」を経験してみてほしいと思う。

 それぞれが独自のスタイルではじめた先駆けの2店は、いずれも個人営業。大手では味わえない雰囲気を楽しめるこんなお店を、ぜひ応援したい。

(文・写真/はるやまひろぶみ)

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