店内にそびえる「一畳プラレール」。同時に6つの車両を走らせることが可能だという
店内にそびえる「一畳プラレール」。同時に6つの車両を走らせることが可能だという
「プラたく」の店主・岡田泰一さん
「プラたく」の店主・岡田泰一さん
天井をぐるりと囲むようにプラレールが走る
天井をぐるりと囲むようにプラレールが走る
どこか懐かしい雰囲気のある「プラたく」の外観
どこか懐かしい雰囲気のある「プラたく」の外観

 子どもの「夢の国」といって真っ先に思い浮かぶのは、遊園地だろう。だが一部の子どもたちが「遊園地よりも楽しい」と評する、新たな夢の国がある。それがあるのは、東京・葛飾区は高砂だ。

 京成線の高砂駅から歩くこと5分。見えてきたのは、どこか懐かしい雰囲気の喫茶店「プラたく」だ。実はここが、子どもたちの「夢の国」であり、休日には行列ができるほどの人気店でもあるのだ。

 中に入るとその理由がすぐにわかる。店内中央には、レールが何段にも積み上げられた、巨大なプラレールのタワーがそびえたっている。これは「一畳プラレール」と呼ばれるもので、一畳ほどのスペースにレールが何段にも積み重ねられて作られている。店にあるものはレールが実に22段も重ねられており、高さは1.5メートル。高さ60センチの土台の上に作られているので、全長2メートル以上。大人でも見上げるほどの高さに、思わず感嘆の声が漏れる。

「プラレールは普段は見下ろすものなので、それを見上げるという視点が新鮮ですよね」

 にこやかにそう話すのは、プラたくの店主である岡田泰一(ひろかず)さん。パート・アルバイトや小学校5年生の息子さん、時には友人などに手伝ってもらいながらこの店を切り盛りしている。

 さらに見上げると、天井付近を壁に沿うようにして、プラレールが走る棚が設置されている。棚は天井を一周しているので、プラレールもその上を延々とまわり続ける。テーブル席には自由にプラレールを走らせることができる「フリースペース」も。まさにプラレール天国。子どもたちは、さぞ喜ぶことだろう。

「いらっしゃるのは未就学のお子さんと、その親御さんが多いんですが、入ったときにまず声をあげてくれるのは大人の方が多いですね。『お~、すごい』と。お子さんも夢中になってくれて、帰るときになると『まだ帰りたくない!』と泣きだすこともあったりして。そこまで言ってくれると、うれしいですよね」(岡田さん)

 現在は都内外を問わず、土休日を中心に多くの来店があるという。最近では、遠くは三重県や鳥取県から足を運んだという人もいたそうだ。子連れの親御さんからは「この間連れて行った遊園地よりも喜んでいる」なんて声をもらうこともあるのだとか。

 そんな遊園地超えの「夢の国」に至るまでには、実は多くの苦労と、親子愛があった。

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