岡田さんが「プラたく」をオープンしたのは、2012年3月だが、その前年の8月に、事情があって会社を退職。まだ次の職は決まっていなかったという。そんな折に、不幸が重なる。9月、10月に立て続けに病気でご両親を亡くしたのだ。

 岡田さんは離婚を経て父子家庭となっていたため、当時小学1年生だった息子さんと、まさに親一人、子一人の状態に。そして、息子とできるだけ一緒に居られる仕事をしたいと、喫茶店を開きたいと思うようになった。実は「プラたく」という店名も、息子の拓優(たくや)くんの名前を入れたものだ。

 サラリーマン時代から喫茶店でWワークをしていたため、喫茶店というプランに思い至った岡田さん。ここにプラレールというアイデアが加わったのは、当時幼い拓優くんとともにプラレールに夢中になっていたからだ。

「プラレールは鉄道模型と違って子どもと一緒に遊べるところがいいですよね。それにプラレールをきっかけに、多くの仲間に出会うこともできました」(岡田さん)

 実はこの店のオープン前から、岡田さんはプラレールのサークルに入っていた。休日を利用して、公民館などで大規模なプラレールコースを制作、親子で遊べるイベントを企画してきた。喫茶店にプラレールというアイデアも、この活動の中から生まれたものだった。店の運営やコースのレイアウトには、このサークル仲間が尽力してくれたという。

「実は店内の一畳プラレールも、プラレール仲間として一緒に活動させてもらっている、『ペタぞう』さんという方に設計してもらったんです」(同)

 「ペタぞう」さんはもちろんハンドルネームで、その名前で「一畳プラレール」のブログを更新している。イベントなども数多く行っており、プラレール好きの間ではかなり知られた存在だ。

 そんなペタぞうさんやプラレール仲間の協力を得ながら、お店を運営してきた岡田さん。でも実は、店が軌道に乗り出したのは去年あたりからだという。きっかけは、動画サイトに店内の様子がアップされたことだった。

「動画サイトの中に、『The Gacchannel』という、小さな男の子がおもちゃやお菓子を紹介する動画チャンネルがあって。それを運営している親子さんが、お店に来てその動画をアップしてくれたんです。ファンの多い動画チャンネルだったので、そこから一気にお客さんが増えました」(岡田さん)

 動画を見たお客さんが来店するようになり、土日になると店内は混みあうまでになったという。実はそれまでは赤字続きの状態だったそうだが、このおかげで「なんとかやっていけるようになりました」と岡田さんは笑む。子どもの夢の国は、親子愛とプラレール仲間の絆で支えられていた。

 しかし、店主自らもプラレール好きということもあって、プラレールのイベントがあると店舗が休みになることも。来店前には、プラたくのブログで事前に休日をチェックしてから行くのがオススメだ。

 ちなみに9月のシルバーウィークは営業するとのこと。「土日に比べてお客さんが分散するかもしれないので、もしかしたら狙い目のタイミングかもしれません」と岡田さんは話す。プラレール好きはぜひ一度、足を運んでみてはいかがだろうか。

(ライター・横田 泉)